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『まんぷく』福ちゃんは「古い女性像」か?

NHK朝ドラ『まんぷく』が今日で最終回を迎えてしまいました。毎日の楽しみのひとつであったので、もう萬平さんにも福ちゃんにも世良さんにも名木さんにも会えないのかぁ~と思うと、寂しさほろり。(個人的に世良さんと名木さんめっちゃ好きでした笑)
制作陣の皆さん、楽しませていただきありがとうございました('ω')ノ

先日参加した国際女性デーでのシンポジウムで、登壇者が最近の朝ドラについてお話をされていて、少し気になったことがありました。それは、前回の朝ドラ『半分、青い』と『まんぷく』における、女性像の描き方の比較のお話。正直、エンタメ作品は、自分が観て単純に「面白い」か「面白くない」かだけで十分だと思ってしまうタイプなので、女性像がなんちゃらとか結構どうでもいいのですが、その話の内容が、いまいち腑に落ちなくて・・・

朝ドラ『半分、青い』では、片耳難聴の主人公・鈴愛が、漫画家を目指して単身上京。その後漫画家としてデビューするも挫折し、100円ショップでアルバイトを始める。そこで出会った、映画監督を目指す男性と結婚・出産するも、旦那の都合で離婚し、シングルマザーに。岐阜の実家に戻り、飲食店を始める。その後はまたひょんなことがきっかけで東京に戻り、今度は発明家に。最終的には、「そよ風の扇風機」を開発し、幼馴染の律くんと結ばれて物語はおしまい。

これは、何が起きるかわからない人生の荒波に揉まれながらも自分の力で精いっぱい生きていく女性を描いたものだった。と、思います。戦争も描かなかったし、いわゆる一般的な「幸せな家庭」を築くということも描かれていませんでした。しかも、実話ではなく完全なオリジナル脚本。これらは、朝ドラとしてはとても異例なことだったらしい。

一方で『まんぷく』は、後に発明家となる萬平さんと結婚した福子が、萬平さんを支えながらも二人三脚で歩んでいく物語。チキンラーメン、そして、カップヌードル。それまで世の中に存在していなかったものを発明し日本の食文化を変えた、実話をもとにした脚本でした。戦争もしっかり描いていて、福子は萬平さんと、いわゆる一般的な「幸せな家庭」を築いていました。『半分、青い』からのふり幅が大きかったこともあり、視聴者の中心である中高年以上の世代からは特に支持されている、とかなんとかかんとか。

こうやって比較すると、「女性像」という面では、違うのかもしれない。けれど、本質的なところって、そんなに違うのか???と、疑問に思いました。

たしかに、福子は専業主婦として家事をこなして、萬平さんのやりたいことを全力で支えて。帰宅した萬平さんを玄関で出迎えて鞄と上着を預かり、「お風呂にしますか?ごはんにしますか?」と聞く。それだけ見ると、たしかに昭和だなぁと思う。でも、そういった「形式」「生活スタイル」だけを捉えて、「古い女性像だ」と言ってしまうのは、なんか違うなぁと思います。形式は、そんなに重要なことなのでしょうか?家事を分担し、外に働きに出て、食事は各々がとり、帰宅する時間も様々で、各々のタイミングで寝る。それだけが単に「現代の理想の家族像」だったり、「女性の社会進出」「女性の解放」「女性活躍推進」の成果なのでしょうか?

福子は、萬平さんのアイデアに対して全く物怖じをせずに発言をし、萬平さんが開発したものに対して率直に批判をし、アイデアを出して。萬平さんが進駐軍に捕まって刑務所に入っているときも、弁護士や周囲の人に声をかけて解決方法を考えだし、家が一文無しになったときは自ら働きに出て一家の生活費を稼いでいました。それの何がすごいかって、全部「福子自身の意思でやっていた」ということだと思います。萬平さんに対して、萎縮することも、怖がることも、一切なかった。ときには萬平さんよりも広い視野で助言をし、自分の頭で考え抜き、新しいアイデアを言い放ち、腹を括り、危機管理すらしていた。形式的には、主人を立てて、主人の一歩も二歩も下がって歩き、献身的に支えている、というふうに見えるかもしれないけれど、福子自身は、めちゃくちゃ「自分の足で、自分の人生を歩んでいる」という実感があったんじゃないかなぁと、思いました。なんというか、形式的なものではなく、「精神的な解放」があった。

社会が向かっている方向は、そういう「形式的」な女性活躍、なのかもしれません。女性が自分の職を持つこと。お金を稼ぐこと。女性の管理職割合をあげること。それはそれで、めちゃくちゃ重要なことはわかる。
でも、それに女性が違和感を感じたり、なかなか結果が伴わないのは、そこに「精神的な解放」が伴ってないからなんじゃないかなぁ、と、思います。働いている女性が本当に望んでいることって、「管理職になること」か?と。たぶん、もっと自由に意見が言えたり、それに対して抑圧される空気感がなかったり、評価を気にせずに過ごせる環境だったり。そういう中で初めて、本当にやりたいこと、なりたい自分を見出せるようになるんじゃないかなぁ、と。その結果、管理職になりたいとか、新しい仕事にチャレンジしたいと思う女性が増えるのはとても良いことだと思います。でも、その過程を「責任ある職務を与える」「給料を上げる」とかで無理やりレールを敷いても、誰もついてこないのでは、、、と。

私にとっては、『半分、青い』の鈴愛も、『まんぷく』の福子も、めちゃくちゃ自立していて、主体的で、充実した楽しい人生を歩んだ2人の女性に見えました。見るべきところは、形式や家族の形ではない、と思います。

・・・そんな気付きを与えてくれた『半分、青い』『まんぷく』に感謝しつつ、次の『なつぞら』も楽しみだなぁ。顔面偏差値がめちゃくちゃ高いですよね、『なつぞら』のキャストの方々。吉沢亮さんのお顔、めちゃくちゃタイプです。笑 朝から眼福、頼みます('ω')ノ

Sae

「誰しもが生きやすい社会」をテーマに、論文を書きたいと思っています。いただいたサポートは、論文を書くための書籍購入費及び学費に使います:)必ず社会に還元します。