誰かがもっと自分を分かりやすい形で迫害してくれればよかった

 大学生のだらだらした日常を描く、みたいなアニメにイライラしてテレビを消したくなる。消したくなるだけで本当に消すわけではないなぜならリモコンが見当たらないからだ。こんなのばっかり馬鹿じゃないのかと言いかける。母親のつくるグズグズの煮物のにおいが鼻に残っている気がして思わずティッシュを手に取る。孤独、という言葉は全然ほんとうの孤独を言い表してくれない。

 誰にだって辛い時期はある。ていうかもっと辛い人はいっぱいいる。自分は生きていて、少なくとも今後5年は飢え死にしないだろう。頭もおかしくないし体も丈夫。精神科医は自分の異常を見つけてくれないだろう。過敏性腸症候群は薬では治せない。誰だってストレスに耐えてる、もっと鈍感になりなさい。

 もっと鈍感になりなさい。これ以上どうやって?

 10歳より前、10歳、20歳、30歳、40歳、50歳、60歳。多分70歳にはなれないしその頃になったら自分みたいな人間を合法的に殺すための法律ができているに違いない。だから大丈夫。

 とにかくその場をやり過ごして次の1時間を待つ。何度も何度も1秒を繰り返すとそのうち1日が終わる。多分こうやって一生が終わっていくんだろうけど、そうじゃなくてどこかのタイミングで恋人が見つかったりするんじゃないかとも思う。いや多分そんなことは絶対にない。でも、分からないけどそういう分かりやすい救いがもしもないまま、

 あああ。あああああああああああ。

 恋人をつくるなら恋人をつくるなら、恋人をつくるなら、髪の毛を染めていない人がいい。この孤独を本当に正しく理解してくれる人がいい。友達は親友と呼べる人が3人くらいいる人。その人たちもみんなマトモであってほしい。二人で働いていけば貧乏でも生活は今よりマシになるに違いない。結婚して子供をつくる。分からないけど医療関係者がいい。風俗に通っている既婚者の友人に同窓会で会って「これが自分の伴侶」と言う。

 誰かがもっと自分を分かりやすい形で迫害してくれればよかった。基本的にはとても幸福な育ちだった。不幸だと自らを呼ぶことのできる要素がなかった。誰も自分を殴らなかったし、もしも殴られれば怒ることができただろう(でも、誰も自分を殴らなかったので、分からない)。何も間違えがないのがいい、と思っていたのに気づいてみればやはり間違えていたのだろうか。

 大学に行ければ何か変わっていたのかと思うけど、17のときに「奨学金を借りてでも勉強したいことなんてない」と思ったのは自分。今17に戻ったとしたらどうするだろう。分からない。多分何もしないでいまと同じ選択をするだろうな。

 社会のせい、誰かのせい、政治のせい、親のせい、と怒る人のことが嫌いだ。怒る理由がある人のことが嫌いだ。言葉にしようのない怒りが胃のあたりに溜まってそれが過敏性腸症候群を引き起こす。本当に生きている価値のある人を見分けるAIが早く作られればいい。生まれた瞬間に殺されればよかった。

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生きづらさの2000文字小説

生きづらい人たちの生活を書いてる2000文字小説です。介護とか、仕事のこととか、結婚しないの? って親から言われるとか、お金が稼げないとか、そういう感じです。
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