子育て世代の家事問題 (家事代行は二万円で可能なのか?)

以前このような記事があがって、様々な議論が巻き起こった。

「家事は2万で外注しろ」議論白熱(web R25) - Yahoo!ニュース http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150205-00000005-rnijugo-sci

家事を行っている主婦の方や家事と仕事を両立させて働く女性、子どもを持つ家庭の人たちからたくさんの反発があったようで、私も読みながら「なんだかなあ・・・」と思ってすっきりしない思いを抱いていた人間の一人だ。

以前Twitterでも、奥さんが外出して休日初めて一人で家にいた男性のつぶやきを見た。その主旨は「食器片付けて掃除して、洗濯物を干したのでもう家事終わり、こんなの暇すぎる、俺には主婦なんて退屈すぎてできない」というもの。そのときも「それ、家事のほんのほんの一部じゃん!」「一日単発でやったくらいで、家事を分かった気になられても(白目)」と、いらっとしたものだ。

今回この記事を読んで、何が心にひっかかったのか。

それは、この記事の筆者が言う、「“2万も”はらえば“全部”やってくれるのに」という部分。

ここでは、2万というのがこの人にとっては比較的「はした金」であることとが示唆されると同時に、その2万で家事問題の(ほとんど)すべてが解決すると断言している。おそらくこの筆者の実体験に基いて想定されている「家事」に関しては、2万円で代行可能なのだ。

家事代行は2万円で可能なのか。この問いに関しては、端的に「可能だが、以下の条件下において」という答えに尽きると思う。

その条件とは以下の3つ。

①子どもがいない
②夫婦二人とも、家での滞在時間が少なく、長時間労働の中高所得者
③生活環境における居心地よさのハードルが低い=細かいことは気にしない (または「気にするほど家にいない」)

しかし一方で、最も家事代行を必要としているであろう「共働き」&「子育て」という条件を持つ多くの家庭で「2万円で家事代行」は非現実的だ、と反論したい。

①2万円で出来ることの範囲

「家事代行やれば!」と簡単に言う人のなかには、他人の生活に想像力がないか、家事自体をものすごく軽く簡単なものに見ているとおもわざるを得ない人がいる。生活のなかに染み付いているものであるからこそ家事であって、実際には家事代行の方が週に1、2回来て数時間で終わる家事なんて限られている。今回の記事のなかでは、掃除はキッチンだけ毎週、ほかは隔週と書かれていたが、ほとんど家にいない共働き夫婦だけならまだしも、子どもがいたらゴミ屋敷になると思うのだけど・・・?

また、とても安く家事を行ってくれる会社として、この記事で紹介している会社は、確かに安いけれど、時給1500円でお願いできる人は限られているし、すべての人がこのプランで家事代行をお願いできるわけではない。

参考記事: 家事全部アウトソース、いくらだったらできるのか?検証してみた。http://sachiko.taskaji.jp/20150289

ためしに、私の居住地区で代行可能な人を検索したら、一人若いフィリピン男性が1500円、他4人は時給2000円以上、全員外国の方で英語でしか対応できない人も。私は大丈夫だが、「日本語でのコミュニケーションができないと困る」、「家でよく知らない男性と二人きりはなるべく避けたい」、と言う人も多いのではないか、と考えると、すべての人に利用可能な廉価のサービスとは言えなさそうだ。

②「家事全部」が指すもの

そもそも、家事を軽く見がちな人の発言を聞いていると、「家事全部」の見積もり範囲がひどく狭いと感じることが多い。

お風呂の掃除が週一回ということは、湯船のお湯を変えるのは週一回なのだろうか?毎日大人が二人入っていたら、臭いもするよね(冬でも毎日シャワーなのかしら?)。家事代行が週一回なら、毎日の食事はどうするんだろう。毎日3食外食(もしくは買ってきたもの)をするのは健康的にも、おそらく金額的にも、無理だろう。食事(作る、食べる+食べさせる、片付ける)は、毎日必ず行わなければならないことで、子どもを抱えていれば食事にかかる時間は大人の何倍もかかるし、その食材の調達だってしなきゃいけない。

洗濯だって、色分け、ネットに入れるなど整理して(5分)、回して(35−45分)、干して(量にもよるが、20分前後)、乾かして(天候による、時にはひっくりかえしたりして)、取り込んで畳んでしまい(量にもよるが、10分前後)、必要なものにはアイロンをかける(量にもよるが、20分前後)という作業がともなう。共働き夫婦の三種の神器の一つに、「全自動洗濯機」というのがよくあげられているけど、毎回からっからに乾くまで乾燥機まで使って耐えられるような服、アイロンをかけなくても着れる服しか着ないで働く人間がどれだけいるんだ、と疑問に思う。私はスーツやオフィスカジュアルなんてほぼ着ないけど、それでも乾燥機かけたら服はしわくちゃになるのでアイロンが必要だし、実際毎回乾燥機かけたら傷んでしまって使い物にならない服は少なくないので、毎回すべてを乾燥機というのは非現実的だと思うのだけど。

家事を軽く見積もる人がよくいうのは、「必要と感じたときに動けばいい」、もしくは「やりたいときにやればいい」というものなのだが、そもそも家事に必要なのは、計画性とマルチタスク能力なのだ。天気や子どもの状況やさまざまな条件「〜を見込んで」ものを用意しておく。三段階先くらいまでを想定して動き、不測の事態が起きたときのことまで考えて何かを準備する(そして容易に想像できるのは、おそらく子育ては不測の事態だらけだ)。

生活必需品は最寄りのコンビニでもかえるけど、ものによっては100円ショップで買う。なくなりそうなタイミングで生活必需品を買う、注文する(できれば安価のときに)。洗濯ものを洗う日を考える。生地によって乾燥機を避けたりしなきゃいけないし、干すスペースと時間も考えなきゃいけないから、天候とも相談する。赤ちゃんの小さくて軽いものはかならずネットにいれ、乾燥機をかけるときは洗濯機のなかに引き込まれて以前乾燥機能が使えなくなり困ったことを考えれば、乾燥機を使わなくても乾くタイミングで洗うしかない。

思いついたときに〜すればいい、という刹那的な家事ではなく、ちゃんと計画性を持って動いているからこそ、家庭生活を問題なく過ごすことができるし、その何気なく過ごしている当たり前のようにある居心地のよさが、作られたものだということを理解できない「非家事請負人」は決して少なくないと思う。

③・・・この程度の家事代行に2万円を払えるのか?

以上のことから考えると、週1回2時間程度の家事でできることなんてとても限られているということ。家全体に掃除機をかけて最低限の拭き掃除をして、洗濯機を回してお風呂と台所とトイレの掃除。これでマックスじゃないだろうか。そしてそれだけのことに、月2万円をかけられるか?という話(実際はもっとかかる家事代行がほとんどだと思うのだが)。

2万円あれば、核家族で庶民的な外食が6、7回できる。夫婦二人で近場の安い温泉旅館にだって泊まれる値段だ。この辺の金銭感覚が一般的な庶民の感覚じゃないかと思うのだ。

そして何よりも、家事に2万円を高いと感じる理由として忘れてはいけないのは、常に家事をやっている人間は、自分の家事労働で一銭も貰っていないんだということ。

自分はやっても一銭にもならない。そしてその膨大な家事の一部を外注するだけで2万円かかるとしたら、代行に金銭的な面のみならず、精神的な面でも抵抗感を覚える人がいるのも不思議ではない。

生活の「持続可能性」に対する意識の大切さ

まとめると、「2万もあれば家事代行してもらえる」という言説は、いろんな意味で家事というものに対する想像力が貧困と言わざるを得ないと私は感じる。おしなべて、「非家事請負人」は家事というものを低く見積もっている。それを生業にしてある程度の期間やってみないと分からない事がある。

家事は、終わりなき「見えない労働」であり、必要とされるのは「段取り」と「気配り」だ。専業で家事を行う女性であれば、そこにセンス(キャラ弁やインテリアなど)や良い意味での能天気さ(「終わりなき労働などと思わずに楽しんでやる精神性)なども求められるというのが現実なんじゃないだろうか。

家事は、各家庭が持つ限られた経済的資源や環境のなかで、生活を持続可能にするという非常にハイコンテクストで高度な取り組みなのだ。自分ができているから他人もできるだろうというたぐいのものではないし、必要な家事の量も家庭によってかなり違う。家事代行で家事のほとんどがどうにかなるなんていうのは、限られた条件での一例に過ぎないし、そもそも家事労働全体への適切な把握とそれを継続することの大変さに対する想像力を、みんなもっと鍛えるべきだと思う。

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saereal

ライフとワークに関する徒然ノート

働く女性研究者が妊娠・出産・子育てと仕事について考えていることを書いています。
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