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55話 - 感想『囀る鳥は羽ばたかない』

「あーっ」「クソくらえだな」
「パパキライ!」「ウルセー」
どんな会話ですか。ほんとこの親子好き。

1) 天秤

裁判のモチーフにも使われる天秤。天秤の役目を果たす物、法律のない世界での均衡は興味深いです。法律がないという事は抜け道もない。両者それなりの重さで、取りすぎても、取られすぎてもいけない。極道の上の者として、天秤の扱いは一つの見せ場ではないでしょうか。

・静かなる奥山
奥山の強かさは、怖いけど魅力的。(でも奥山って◯◯◯るのかな…独り言)
あのタイミングでタバコを吸う行為は、パワーバランスを揺さぶる様に見えた。極道ではタバコも一つの演出でしょうか。
綱川が取りすぎたものを「言わないでやってるだけだ」とでもいう物言い。この牽制のし合い、ヒリつきますね。えっと、ボーイズラブ…(忘れろ)

・甲斐
奥山も怖いけど、天秤とか見えてなさそうな甲斐はもっと怖い。
まるで矢代さんの仕草の様に、手で左眼を覆う。小指はない。今のところ全く感情移入できる気はしないので、是非そのままでいてほしい。

・玲司
"七光"と揶揄されながら、強引や無理をして周囲を認めさせてきただろうし、その中に清算が必要なままの事があるんだろう。自覚のある様な顔を何度かしてきた。皮肉にも、愛娘に「天秤。知らないの?」と言われてしまう。
三角さんにナシつける場面(あると疑わない(願望))もまた、物語が動くだろうか。

脱線ですが、綱川と天羽の境遇は一見真逆にも見えます。豪邸で坊ちゃんとして育った綱川。身体を壊すまで働きつめた母の元に育った天羽。肉親の道連れの如く、選択肢なく極道に入った綱川。肉親もなく、周囲に反対されつつ極道を選んだ天羽。この2人もまた、磁石のよう。

・綱川仁姫
嫌いなもの:ウソつき、パパ (新規)
好きなもの:百目鬼 力(リキ)
女性の顔になってきたね。リキにクラウド教えてあげてね。

2) 井波

ねぇ…。すごい手札渡すじゃん。"誰としてもたたない" は最高の手札だよ…いやなんでその札持ってるの。53話感想で「一言で十分、井波終了」と書いたのですが、とんでもない。表情一つ(静止画)で井波終了。諦めて下さい。大好きな百目鬼とは同類でもなければ、肩が並ぶ事もない。

SD渡したのね…罪な男(そうだよ褒めてるよ)。百目鬼もそれ破棄しないのね…。SDを睨む顔が随分苦しい。もしかして…(独り言)

“これを言うと相手は傷つく“そう予測はするけど共感はしないので平気で言う(サイコパス)。でもそれだけで、悪意は特にない(サイコパス)。他者の感情に容赦もないし嘘もつけるので、仕事で成果を出す(サイコパス)。
でも井波は「サイコパス。おわり」と言えない面白い人。井波のnoteまで書いてますが全然書き足りません(ニーズなし)。
割とあっさり矢代から手を引くと思っていましたが、今回薄ら不安も感じたり…

3) 矢代さん

寝癖ついてます?「手を引け」は、わざわざ夜中に伝える伝言ではない。「こんな夜中に」だけで、百目鬼の”一刻も早く”が伝わる。
同時に「それだけです」のはずがない…サインは出てるのに、矢代さんのキレは百目鬼に全く機能しない。

諦念ていねん

感情を伝える眉毛。私は眉毛をすごく見ます(主に百目鬼のですが)。タバコを咥えようとする横顔は、今までで一番繊細なものにも見えました。
波を立てないよう感情と距離を取り、穏やかで、愁いて、綺麗で、消えてしまいそう。
矢代さん、その横顔、まるで天女のようです。

もう百目鬼なしにどう生きていくんですか?こんな時にすら手を伸ばす事なく、そんな顔をする。何も無かった様にベッドになんて戻れず、タバコを口にするのに。

・タバコ

肺を埋め尽くす、慣れ親しんだ圧迫感。気軽に手を伸ばしてきた、誤魔化しの充足感。もはや焦燥感で身体が要求してくる。強い理由がなければ、明日も明後日も何年先もその関係は絶えない。

「あの人にとって男とヤるのは、タバコみたいなものかもな」4年前の七原の言葉を、百目鬼は忘れないはず。(私にとって七原は百目鬼のメンターです。再)

4) 百目鬼

輪郭の見えてきた危険な抗争から、言っても聞かない人を遠ざけられる。安心もしたかな。(読者は全く安心してませんが)

口数の少ない通常運転ながらも、台詞は粒揃い。

「アンタが下手なんだろ」 
アンタが、ね。井波に転嫁。原因は自分でなく井波にある、そう思いたいよね。しかし ”俺じゃない” と反論され、静止画。漏れなく井波にも "たたない原因は百目鬼" だとバレる。

「気持ち悪いな」 気持ち悪い、だって。良かったね。「気味が悪い」とか「食えない奴」とか、手加減なし。”得体が知れない” という事かな。私は、情報よこしてくるの、井波っぽいなぁと感じたけどな…
他の意味にも取れますが。

「嫌です」 
なんなら「嫌だ」(タメ語)も良…(略
「やめてほしいとは言えません。それがあなたのしたい事なら。仕方ありません」が、逆立ちした様な態度。譲歩なしで拒否。
矢代さん、もう諦めて下さい。※後記

・謝らない

すいません製造機と言われてましたが、私は1巻の頃から百目鬼ってなかなか謝らないなと思ってます。謝って済む事などには惜しみなく謝りますが…。今回これ以上掘り下げないのですが(文字数)、謝るのかは、私が56話で気になってる事の1つです(マイナーですね)。

私は、無言でハグ、がお腹いっぱいです…でも口元のタバコを奪ったのは、その唇に何か用があるからですか?会話しますか?えっ、キ(落ち着こう)

百目鬼が車内で自問自答する姿は、16話「抵抗されたのに押さえ付けた」と自責した(でも謝らない)姿を思い出します。
そしてあの横顔には、22話「こんなに誰かを求めることがこの先あるのだろうか」の顔を思い出しました。あの時も「なぜ抑えることができないのだろう」と自責した(もちろん謝らない)。
ただ「俺は何ひとつあの人に望まれてないのに」は、今はどうだろう。

車内に戻り、
閉めていた蛇口を開いた如く、感情が流れ出て、溢れていく。4年前のあの日、4年間、この数日間…全てが百目鬼の中で激しくうごめいて、繋がる。この激しい自問自答にもモノローグはない。(無い方が私は心地いいです)

4年前の行為が、矢代にとって何でもない事ではなかった。
自分1人にだけ身体を反応させる。そんな、自分にどうしようもなく堕ちてしまった、可愛くて、可哀想で、一途な人。
強かに見えて、「壊すな」と怯えた大切な人。
出会った頃と変わらず「こんなに綺麗で、こんなに一途で」、“欲しい“と言わない人。
「ぜんぶ綺麗に見える」はずだった。深く求めるあまり突き放し、強く想うあまり言葉や行為で責め立てた。

・部屋を出る

あのまま去ったら、矢代さん壊れてしまう。今までなら井波の所に行ったかもしれない。でもそれももうしたくない。肺に"ぶち込んできた" 煙のような男達が、もうなんの誤魔化しにもならない。

百目鬼もその人が素直じゃないと知ってるのに出て行く…と胃が痛くなるかと思いました。しかし、素直じゃないからこそ、または一つのけじめなのかなとも感じました。
今まで仕事として入室してきたこの部屋を、一度出る。それで仕事は終わり。次この部屋に入る時、それはもう仕事ではない。矢代もまた、次に百目鬼を入れる時、そこに言い訳(逃げ場)はない。
律儀な百目鬼が「お邪魔します」なしにずかずかと入ってほしい(願望)。


「…返せよ」
「なんで、お前が、取るんだよ。俺からそれを取り上げるな」「お前に関係ねぇだろ」そんな風に聴こえた(幻聴)のですが、たった3文字「返せよ」

「嫌です」
「こうやって、なぜいつもこんなモノに手を伸ばすのですか。なぜ俺がほしいと言わないのですか」「もう見逃せません」そんな風に聴こえた(幻聴)のですが、たった3文字「嫌です」

説明的な台詞でない、こういう引き算に私は落ちたんだなと改めて思いました。最後一頁は、囀るの魅力が詰まった一頁に感じます。(幻聴に基きます)
そして55話で2人それぞれに割いた贅沢なコマ使いが、本作の中でもいかに大切な場面であるか伝えている様でした。

おわり

56話予測:井波の名前が明らかに…

旨味がない

【 あとがき 】
最近、読書後に感想(長文)を殴り書き・保存し、終わらせようとしてる自分がいます。何かを作り続け、仕上げ、発信し続ける方は、本当にすごいです。

幻聴に悩まされてます

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