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【小説】その感情をまだ誰も知らない
真っ白な陽気が、彼の黒いスーツを熱していた。キャンパスへ続く道の両脇には木々が整然と立ち並ぶ。その影に入ればいいものを、彼はわざわざ日差しが照り付けるベンチに座っていた。
暑さに悶え苦しんででも、木に近付くのは避けたかった。この大学に来る“連中”は、学生たちに似て口やかましい。人の気配が無くなった途端、近付いてきてちょっかいを出してくる。
バサバサと大袈裟な羽音が聞こえると、彼はその方向に対
真っ白な陽気が、彼の黒いスーツを熱していた。キャンパスへ続く道の両脇には木々が整然と立ち並ぶ。その影に入ればいいものを、彼はわざわざ日差しが照り付けるベンチに座っていた。
暑さに悶え苦しんででも、木に近付くのは避けたかった。この大学に来る“連中”は、学生たちに似て口やかましい。人の気配が無くなった途端、近付いてきてちょっかいを出してくる。
バサバサと大袈裟な羽音が聞こえると、彼はその方向に対