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【小説】罪の終着、川の向こうへ




「で。どうしてこうなったかはわかるわよね?」

 フィノは腕を組んで仁王立ちし、地面に座り込んだシオンを上から睨んでいる。
 ウォルホーンを出て隣町のクライオンへ着いたはいいものの、隣町ぐらいであればマフィアたちの手が容易に届くのは想像に難くない。フィノを狙う輩の襲撃を次々と受けて、さすがの一匹狼も疲弊の色を見せていた。
 どうにか追っ手を振り切って裏道に隠れていたところ、フィノはシオンに考えの浅はかさを説く。

「もう少し先へ行こうとか思わなかったの?」
「考えなかったな……」
「あなた、馬鹿でしょ」
「少なくとも、お嬢ちゃんよりはな」

 気障ったらしい言いぐさに慣れない彼女は、赤らんだ顔を背ける。

「とにかくクライオンまで行くことしか頭に無かったんだ。すまない」
「次からは、逃げた先のことも考えてちょうだい」

 シオンは言葉の代わりに手を上げて返事とする。ならばもう少し遠いところへ逃げることを考えなくてはならないと、フィノは先ほど買ったばかりの地図を広げた。
 クライオンは隣町とはいえ、ウォルホーンからも遠い。ここから別の街となるとかなりの距離があった。

「ここから行くとなると、確かベルエンドが一番近いのよね。でもまた隣町じゃあ、奴らが追って来られるだろうから、ベルエンドを通り過ぎてその先、レルベラッタを目指しましょう」
「レルベラッタ? ここからじゃ遠すぎるだろう」
「そう言って近場を選んだ結果がこれなのよ。レルベラッタなら大きい街だし、少しは追っ手の目をくらませられるわ」
「それはそうかもしれないが、俺はあんたの足を心配してるんだ。あんたを無理させるわけにはいかない」
「私が足手まといだって言いたいの?」
「あんたを奴らから逃がそうとしてるんだ。あんたを第一に考えなくてどうする」

 またしても気障なことを言うシオンに、フィノは呆れて言い返す気にもならない。
 結局、シオンが意見を無理やりに通してベルエンドへ向かうこととなったが、表へ出るなりマフィアたちに追われ、そこでも撒くことが出来なかった。



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