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ベトナム上場会社における取締役会(Hội đồng Quản trị)の運営等


1 取締役会の権限等
 取締役会は,株主総会の権限に属さない事項について,意思決定をする 機関です(企業法153条1項)。
 取締役会の決議事項は,企業法153条2項に列挙されているほか同法にて規定する事項や,定款で規定した事項になります。

2 取締役の員数及び任期
 取締役会を構成する取締役(Thành viên Hội đồng quản trị)は3人以上11人以下で,具体的には定款で決められます(企業法154条1項)。
各取締役の任期は5年以内です。ただし,際限なく再任することが可能です(企業法154条2項)。

3 取締役会の主席(Chủ tịch Hội đồng quản trị)
 取締役会は,取締役の中から「主席」を選任(解任)します(企業法156条1項)。
 取締役会の主席が,その会社の総社長又は社長を兼任することについては,非上場会社では規制はありませんが,上場会社では,ガバナンス強化の観点から,この兼任が禁止されています(企業法156条2項)。
取締役会の「主席」の任務は,主に取締役会の議事の運営です(企業法156条3項)。

4 開催時期
 取締役会については,少なくとも四半期に1回開催することが義務付けられており(企業法157条2項),この最低開催数については,上場会社でも同様で加重されてはおりません(2017年コーポレートガバナンスコードに関する政令16条1項)。

5 招集通知
 取締役会の主席は,定款に異なる定めがない限り,会日の3営業日前までに各取締役に招集通知を送付しなければなりません(企業法157条6項)。

6 監査役について
 監査役については,日本と異なり,取締役へ出席する義務を負ってはおらず,必要があると認めた場合に出席できる権限を有することになっています(企業法157条7項)。出席した場合であっても議決権を有しないことは日本と同様です(企業法157条7項)。

7 定足数
 取締役会が開催されるためには,原則として取締役総数の4分の3の出席が必要です(企業法157条8項)。そのため,取締役の員数がミニマムの3人の会社においては,全員出席が必須になります。逆に誰か一人でも欠けると,取締役会は開催できず,会社としての意思決定等に支障が生じる可能性もあります。

8 決議要件
 定款に別段の定めがある場合を除き,出席した取締役の多数決により決議されます(企業法157条12項)。
 なお,可否同数の場合には,取締役会の主席の票が取締役会の決議となります(企業法157条12項)。


東京で弁護士をしています。ホーチミン市で日越関係強化のための会社を経営しています。日本のことベトナムのこと郷土福島県のこと,法律や歴史のこと,そしてそれらが関連し合うことを書いています。どうぞよろしくお願いいたします。