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(農業界における)情報のオープン化、プラットフォーム、コミュニティに関する覚書

初noteです。自己紹介させてください。FARMSIDE works代表、阿部梨園マネージャーの佐川(@neo16tea)と申します。阿部梨園という栃木県宇都宮市にある個人経営の農園で、経営改善しまくった経験から、農業の現場はまだまだ改善の余地あり!ポテンシャルあるよ!というメッセージを業界に向けて発信しています。『東大卒、畑に出ない農家の右腕』みたいな呼ばれ方もします。

阿部梨園で実施した小さな業務改善のノウハウを無料で公開する『阿部梨園の知恵袋|農家の小さい改善ノウハウ300』というサイトを運営しており、農業界でも生産技術以外のレベルアップ、そのためのオープンな情報共有が必要だと説いて回っています。同サイトはクラウドファンディングで支援者を募り、450万円(330人!)ものご支援をいただいて世に送り出されました。

色んなメディアさんに取り上げていただいたので、よろしければ詳しくは以下の記事をご覧ください。最近は、ホリエモンこと堀江貴文さんに取り上げていただいて盛り上がりました!

【阿部英生×佐川友彦×堀江貴文】阿部梨園編〜ホリエモンチャンネル〜 - YouTube
https://www.youtube.com/playlist?list=PLPG9JWQYcjUu2P_-rBv8vAX6i3fcky-O9

(2018.09)【公開】東大卒「畑に入らない農家」のカイゼン500 - NewsPicks
https://newspicks.com/news/3300812
※有料会員限定記事ですが、一番詳しいです。けっこう話題になりました。

(2017.12)直売率99%、東大卒マネージャー擁する梨園 個人農家初の「企み」とは - マイナビ農業
https://agri.mynavi.jp/2017_12_07_12959/

農業界における情報のオープン化について

さて本題です。農業界の情報オープン化活動、随所で立ち上がっていて、各所からお問い合わせをいただきます。

農業の暗黙知を集積・体系化するコミュニティサービス 「アグリパッド」|Yuzuki Kunitaka@地球業|note
https://note.mu/zooks/n/n0575c8eba447

農業情報プラットフォームを作る|はらだいっせい|note
https://note.mu/agri/n/n7936a6186fe7

農業JAPAN
https://nougyojapan.tokyo/

※知り合いでもないのに勝手に紹介してしまってすみません

先に話題を作って座を温めておけたのであれば、自分のやってきたことに意味もあったということで、嬉しく思います。私も農業界における情報のオープン化を掲げていますが、それを提唱する権利はもちろん独占しませんので、各位が勝手に思うようにアクションに移すことが、業界の進歩につながるのだと思います。応援します。

ビジネス目線では、情報プラットフォームだけではマネタイズしにくいので、だいたいコミュニティっぽい動きがセットになります。ユーザーが集まるコミュニティは企業から見れば魅力的な漁場ですから、売り込んで互恵的な関係を築くことも可能です。いずれにせよ、既存の生産者団体ではケアしきれない需要が顕在化して、それがカバーされるのは素晴らしいことです。やはり応援します。

さて、我に返って阿部梨園の知恵袋をご覧になっていただくと、それほどオープンではないことに皆さんそろそろ気づかれたのではないかなと思います。実例全公開という意味ではチャック全開ですが、オープンに情報が集積される場では今のところないので、いち農園の事例のみという点ではむしろクローズドだと言って差し支えないです。たまり場を期待されつつも、とりあえずは無人の置き物として機能してもらっています。openだけどisolated(つながってない)なんです。なぜそうしているか、少し説明します。まぁリソース足りてないからなんですけどw、他にも理由があります。

情報プラットフォームにおける、質の担保問題

※ 他業界では既に一周以上回った話だとわかった上で、農業界向けに書きますので、幼稚な内容を許して下さい。

情報プラットフォームとコミュニティ形成に共通する最重要のファクターがあります。それは質の担保です。情報が何でも集まるワンストップのメディアがあれば最高ですが、それは有用な情報が集まっている前提です。玉石混交の情報をかき集めて収集コストを下げても、読者の選別コストのほうが高くなってしまうんじゃないの?と思うのです。昔の2ちゃんねる的というと大げさですが、迷いや悩みを深めてしまったり、期待したとおりにならなかったり、リスクを負ってしまうこともありえます。

UGC(User Generated Contents: 利用者の投稿によるコンテンツ集積)じゃないと、真にオープンとは言えないと思いつつも、平均的にみれば情報に強くない方が多い農業界には、時期尚早かもしれないなーと思っています。だって有機農業や農薬に関する宗教戦争が未だに何度も蒸し返され続けている業界ですよ。そこは性善説で信じきることができていないと言うか、よほどの管理力が必要です。管理しないプラットフォームの筆頭、Yahoo!知恵袋だってカオスじゃないですか。

なので、阿部梨園の知恵袋は、100%実例、100%私の責任編集というところに、意味があると思っています。ここで個人的な結論を言うと、

情報のオープン化で大切なのは、プラットフォームのハコや機能ではなく、情報を選別して交通整理する編集者(キュレーター)だということです。

情報プラットフォームにおける、編集者の必要性

ハコ、機能はすぐ作れるんですよ。ウェブの技術が発達して低負担になりましたし(遠い目)、各種グループウェアもWikiツールもありますし。情報自体も無限にあります。農業ウェブメディアも乱立しているくらいですから。

情報の集積所や情報そのものの価値は希薄化していて、誰がどういう視点で質を約束してまとめたかに価値が問われるようになってきています。大切なのは、それらの情報を選別して交通整理する管理人/水先案内人/編集者/キュレーター…です。IT業界はオープンソース化が進んでいますが、それだって膨大な善意のマネジメントがあってこそ成立しています。コミッターこそ管理人といってもいいかもしれません。

情報があふれている現代、誰かが選んでツボを突いてくれるからこそ、読む姿勢を促し共感度が増感します。これはショッピングと同じで、商品価値が均質したからこそ、誰が勧めたかが重要になっています。インフルエンサーマーケティングしかり。情報も一緒です。

なので、情報のプラットフォーム整備を進めるのであれば、誰がどう責任編集するか次第だと思っています。責任編集体制を確保できれば、いろいろ可能性あって面白いので、上記の他所様のプロジェクトに関してはその辺に期待してウォッチします。ちなみにコミュニティも一緒で、核になるリーダー次第なのかなと思っています。

むしろ、林立した各種農業メディアの記事を1箇所にまとめてくれるキュレーションメディアは需要がありそうで、席も空いているので、誰かやってくれないかな〜と思っています。

情報プラットフォームにおける、コミュニティ管理コスト

プラットフォームにコミュニティ機能をもたせようとして、ディスカッションをできる掲示板的なものを設置した場合、管理コストが馬鹿になりません。不毛な議論にタイムラインを埋め尽くされたり、ユーザー同士で揉めたり、まぁとにかく大変だと思います。放置できれば楽なのですが、顔が見える管理人の場合、なかなか看過させてもらえないんです。その管理コストと、自前でコンテンツを作るリソースと、どちらが大切ですか?ということです。

阿部梨園の知恵袋では、管理コストをかけるよりコンテンツを増やすことにリソースを割きたいので、コメント欄も開放していません。いずれディスカッションの場もあったほうがいいなと思いますが、別な場所に用意します。

一般的には、コミュニティをつくる場合にはまず境界線を引きます。オンラインサロンでも、FBやLINEのグループでも、メンバーのリストができあがり、それがコミュニティの輪郭になります。大なり小なり、何かしらのメンバー⇔非メンバーの差別化があります。でも、その境界線、グループの管理コストって本当に必要でしょうか?

阿部梨園の知恵袋PJは、ハッシュタグ的に概念でつながり合うバーチャルなコミュニティを志向します

阿部梨園の知恵袋PJでは、経営に課題感をもつ農業者と、それを支援する企業など周辺プレイヤーのコミュニティを作ると約束しました。賛同してくださる方のFBグループを作ったり、リアルイベントを実施したり、メンバーシップ制度を導入したりしようと考えていました。

その思いは今も変わりませんし、そういうこともおいおい進めるつもりですが、最近は別にグループの境界線は引かなくてもいいなと考えるようになりました。グループの管理コストを支払わない代わりに、賛同者をとにかく増やす活動と、横のつながりが自然発生するきっかけづくりに奔走する。結果的に、#阿部梨園の知恵袋 というハッシュタグ的な概念が、「農家の経営改善」と同値になり、業界の共通認識になれば、それをバーチャルなコミュニティと呼んでもいいのかなと思っています。そのほうが広がって、面白いことも起こりそうだなと。なので今年は認知形成に振り切って、全国を講演して回っています。

誰が入ってて誰が入っていないとかじゃなくて。他のメンバーと全くつながっていなかったとしても、理念に共感していれば誰でも一員みたいな。。農業界で言えばGOBOなんかまさにそう機能してて、素晴らしいなと思います。

とはいえ現時点でグループっぽく管理しないのはリソースの問題だけなので、色々追いつきましたら、生産者さんのネットワークづくりにコミットしたいと思います。

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話が長くなりました。4000字/(^o^)\結論としては、以下の2点です。

①情報のオープン化で大切なのは、プラットフォームのハコや機能ではなく、情報を選別して交通整理する編集者(キュレーター)だよ

②阿部梨園の知恵袋PJは、グループとして管理するコミュニティにしない代わりに、ハッシュタグ的に概念でつながり合うバーチャルなコミュニティを志向します

以上、よろしくお願いいたします!阿部梨園の知恵袋はどこに向かってるのってよく訊かれますので、現時点での所感をまとめてみました。答えになっていませんがw 初noteでした\(^o^)/

東大農→修士→DuPont→阿部梨園の中の人→ファームサイド(株)代表。コンサル、講演、執筆。阿部梨園の知恵袋(https://tips.abe-nashien.com)で、農家の経営改善を旗振り中。著書『東大卒、農家の右腕になる。』https://amzn.to/3fdp9C9