同人誌違法アップロードで同人作家に具体的に何が起こるか

2月に書いたエントリー「売れてない同人誌が4万超えダウンロードされてた弱小サークルの話」の続報です。

今回はどうして私が同人誌制作においてここまでストレスを感じるかについてお話しようかと思います。購入するのが専門の方にはあまり馴染みのない話かも知れませんが、同人誌だけでなく、DVDや書籍等、実物を販売する上でのリスクの話でもあります。ご興味がございましたら最後までお付き合いいただけますと幸いです。

まず私のストレスの一番の原因についでです。具体的に言うと箱です。ようは在庫ですね。なんだそんなものかと思われるかも知れませんが侮れません。どれくらい侮れないかと言うと、私がよく出す28P/B5の本は200〜250冊で段ボール一箱分です。本が詰まっているので見た目よりかなり重いです。今計ったら1箱20kgほどありました。軽く幼女レベルの重さですね。

毎回のイベントごとで全て売り切ってくれればいいのですがそうもいかず大半の方と同じように私も同人誌の専門書店にて委託販売を行っております。印刷の総部数はこの書店委託の事前発注+イベントで捌けるであろう部数の合算にて算出しています。

この書店の事前発注は買い切りではございません。つまり売れ残った分は全て自宅に返送されるか破棄という扱いになります。仮にイベント毎に新刊を出して200部の返本がその都度あった場合毎回20kgの段ボールが家に追加されるという訳です。段ボールは1箱30cmくらいの高さがあるので3箱も積まれれば相当な圧迫感があります。

話を戻して事前発注の件です。私は以前から同人誌制作を行っていたこともあり、書店様とは何度となくやりとりをしておりました。再開当初は無名からのスタートですので当然再開前の最盛期よりは部数を減らしているのですが初参加の方に比べると比較的多めの事前発注があったと思います。書店からの発注ですから私も納品のためにその部数を用意し配送します。ここが大きな落とし穴でした。

実は以前作った本、売れなかったらしく段ボール2箱分程返本され自宅に届いております。ここで表題の件に戻るのですが、この返本されてきた本が売れなくなってきた時期と違法アップロードがされたであろう時期が合致しているのです。それまで好調だった売れ行きが突如1割以下に落ち込みました。基本的に既刊はあまり売れないので違法アップロードとの相関性に確証は持てないのですが、過去2冊の発行誌にて同様の傾向が見られています。

こうなってしまうと何を信用して総部数を決めたらいいのかわかりません。毎回段ボール数箱なんて在庫が返送されては部屋がすぐにいっぱいになってしまいます。

よくサークルさんに対して「どうしてそんなに少部数しか刷らないのか」という意見を目にします。こういったサークルさんは私のように在庫を抱えないようにうまく部数を決定しているのだと思います。それだけ本というのはかさばってしまい厄介です。

「多めに刷れば印刷費が安上がりだ」という意見も目にします。印刷は安く済んでも残れば維持にコストがかかります。在庫の預かりを専門に行う会社等もありますが当然有料です。その維持費を出さず自宅に搬送した場合私のように部屋が段ボールで圧迫されてしまいます。段ボールが部屋に増えていく圧迫感というのは本来落ち着けるはずの家が落ち着けなくなるような、なんとも言い難い苦痛だったりします。

私のようなサークルが他にもあれば事前発注の部数の全てを刷らず大幅に部数を減らすサークルが出てくると思いますし、既にそういったサークルさんがいるかもしれません。「確実に捌けるであろう数」を用意するということは予測されたニーズから大幅に減らした方が安全だからです。

同人誌に限らず何かものを購入される方へ。本やDVD等、現物を取り扱うということは在庫を抱えるリスクがあります。そのリスクを避けるために生産数を減らしてしまう生産者をあまり責めないであげてください。もし欲しいものがあったら一期一会の出会いを大切にしてください。小ロットの再生産はコストが高くなるので再生産される可能性はあまりなかったりするかもしれません。

特に同人誌を購入する機会が多い方へ。同人誌を制作しているのはあくまで個人です。在庫のために倉庫を持っているわけではなく大半の方が自宅に在庫を保管しているのではないかと思います。そういった状況の中部数を決めるのが難しく少部数に抑えてしまう作家さんがいることをご理解ください。また、そういった作家さんの本が再生産されにくいこともご理解ください。

もし、どうしても見たい本がある場合は作家さん本人に伝えてあげてください。DL版での公開等、作家さんなりのご対応をしてもらえる可能性があります。読みたいと言ってくださる方の声というのは皆さんが思っているよりきっとずっと大きい原動力です。


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余談です。

前回の記事に金銭でのサポートをくださった方がおりました。1,000円に満たないと受け取ることができないため受け取ってはいないのですが、この場を借りてお礼申し上げます。


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