いいね数が消えてく中で優秀な人達が一足先にやっていること
人類がAIに支配される日は来るのだろうか
という議論がされることがあるが、すでに人はSNSに支配されている。
Instagramが「いいね」数を非表示にするテストを実行中だ。これは、「いいね」のみをひたすら求める群衆心理を抑制する狙いがあるという。
写真共有アプリという本来の使い方はとうに廃れ、いいね数のみを取りに行くツールになってしまった所以である。
Twitter社の、リツイート機能開発者のクリス・ウェザレル氏は「弾丸を込めた銃を4歳児に手渡してしまったのかも知れない」と、リツイート機能の実装を後悔しているという。
なぜならこの機能が「晒し上げ」に使われるようになってしまったからだ。
どこかのバイト店員が変なことしてる写真が回ってきたことはないだろうか。タレントや政治家の失言ツイートが回ってきたこと一度はあるだろう。
リツイート機能こそが炎上の根源であり、誰かを吊し上げて攻撃の標的にする役割を担っている。デマ拡散機能といった側面もある。
もっと前には、公式のこんな発言まであった。
しばらくの間申し上げているように、私たちは健全な会話を刺激するようにサービスのすべてを考え直しています。それにはいいねボタンも含まれます。私たちは取り組みの初期段階にあり、すぐにそれを共有する予定はありません。
Twitter社は、リツイート機能に限らず、いいねボタンの在り方含めて再考中とのこと。
YouTubeは、2019年に入ってからガイドラインを次々と刷新している。過激で卑猥なコンテンツは元から削除対象であったが、チャレンジ系やドッキリ系も禁止された。個人攻撃にあたるような暴言や悪口なども禁止されている。
過激で暴力的で性的なもの、あるいは過剰な修正や加工、歪曲されたものばかりが量産されるプラットフォームに広告を出そうと思う会社は限られてくるため、そういった配慮から、規制を強めていると考えられる。
しかし全ては、デジタル上の数字を、あまりにも人が簡単に信用してしまうことが起因している。
1万いいねされているものはいいものであり、1万リツイートされているものは真実であり、100万再生されているものは人気の証拠である。人は、そう信じて疑わない。
僕は、ここでも書いたように
そもそもこういった数字を根本的に信用していない。
昔、ハイロウズのシングル『青春』がリリースされたとき、これはオリコン一位になると確信した。とんでもなくいい曲だったし、松本人志さんと中居正広さん主演のドラマ『伝説の教師』の主題歌に起用されていたから、プロモーションという意味でも申し分なかった。
でも一位にはならなかった。
そのとき思った。
自分の感性が、世間と全一致しないという当たり前に。
『ハリーポッター』も『スターウォーズ』もおもしろいと思ったことは一度もない。僕にすれば、「つまらなかった。以上」だ。
みんなはこれが好きなんだな、という指針にはしても、自分の好みには影響しない。ピーマンが嫌いな人はいくらみんながピーマン美味しいと言っても食べられないように。
でもなぜかSNSだと、みんながいいと言うものはいいと信用してしまう。
これは、世間の声が一発で掴めるからに他ならない。良いか悪いかいちいち考える必要がないからラク。だから、数値だけ見る。
養老孟司さんは、「AIが人間のようになろうとしているのではなく、人間がAIのようになろうとしている」と言った。
AIというのは高度な演算処理システムに過ぎない。なので数値を見て、反響が大きいものから順に拾い上げていく。僕たちはそれを目にし、それを正しいものと認識する。根拠は反響の数値だけ。
「ニワトリが先か、卵が先か」という言葉は今後、「AIが先か、人間が先か」という言葉に代用されるかもしれない。
飲食店を探すとき、人は食べログを見る。
3.1。微妙だ、やめておこう。
3.9。これはいいぞ行ってみよう。
そこに行ったことがある人を探して聞く必要はない。実際行く必要もない。その数値だけを見ればいい。ラクだ。
しかしこの数字は、お金で買えるようである。
「評価上げたきゃ金払え」的なことを言った言わない問題が現在発覚中だ。
僕は5年前、大宮のとあるバーによく行っていて、そこのマスターがまさにこの件と似たような話をしていたので、食べログ評価は信用できないと思っていた。ちなみにこれはネットニュースや、ググって知った情報ではなく、店長から直接聞いた、リアルな情報である。
そもそも、自分が一番美味しいと思う食べ物「スタカレー」を出す上尾市愛宕の「娘娘」の評価が3.5だからあてにならない。あんなのどれだけ低く見積もっても4.5だろ。
映画だろうと食べ物だろうと、自分と世間の意見が全て一致することなんてないに決まってる。
それなのに、自分で行動して考えることはしない。人の意見で決める。だってみんながそう言ってるから。これを思考停止という。
その裏にいるのが小学生だとも思わない。日本人かどうかさえもわからない。人間かどうかさえもわからない。裏でお金が動いているとも思わない。
NHKの「クローズアップ現代」で、amazonのサクラレビューが話題になったことも記憶に新しい。
僕はTwitterを昨年から始めたが、埼玉ポーズがテレビに出ると、必ず変な輩が来て
「埼玉ポーズの仕掛け人ってこれしかフォロワーいねーのな。そらこんなポーズ流行らんわーw」
と言ってくる。
フォロワー数が多い=すごい人
フォロワー数が少ない=すごくない人
という尺度だけで人を判別する。
フォロワーを集めるのが得意
(集めようとしている)な人
フォロワーを集めるのが苦手
(集めようとしていない)な人
とは思わない。
その数値だけで「人間的にたいしたことない奴」と総合判断する。まさに現代を象徴するような価値観である。
もちろん、どんなツールでも〝その数字を集める能力‘’に長けていることは評価されることであるが、それだけで、俺はすごい、全部すごい、モテるんだなんて思っていたら、コンビニでナンパしてフラれてエレベーターまで追いかけかねない。
人は、ネットにバカにされている。お前ら数字さえありゃ信じるんだろ。ほらどうだ、この数。すごいだろ。わあすごい。神。
でも世の中、バカばかりではない。
各ツールが規制を強め、数値を非表示などにしているが、この数値の薄っぺらさに気付き始めてる人は、少なからずいる。
Twitterを自分の告知ツールとしてのみ扱うビジネスパーソンが増えてきた。炎上のフィールドとなったTwitterでなにを言っても不毛な議論しか生まないからだ。誰だって、連日バカを相手にしてれば疲れる。
そうして優秀な人たちがTwitterから離れていく。だからTwitter社が頭を抱える。
モノやサービスが飽和した現代では、お金よりも信用が価値を生む。だからみんなお金持ちより、信用持ちになりたがる。この信用度こそがSNSの数値だ。
今後この数値の非表示化が進み、あるいは、信用できないとされていくと、次はどこに価値が見出されるか。
それはおそらく、数ではなく「深度」だ。関係性の深さ。そして、これを可視化させるのは課金制ではないか。
Twitterには鍵(ロック)機能があるが、これをお金で開けるようにする。金額は個々に設定できてもいい。月額100円でも、500円でも、1,000円でも。
有料制にすることで、安易な冷やかしはかなりの確率で排除できる。
そう、これは、ここで書いたように、
オンラインサロンに近い。
鎖国であり、村社会である。
実際、ビジネスキーパーソン達はこぞって開設している。彼らは門戸を空けて全てを見せたあとで、一気に戸を閉める。
これはすごくいいやり方で、人がたくさん入ってくれば当然バカも混ざってくるから、頃合いを見て戸を閉めるのだ。
しかし、このフィルターにお金を用いることは本末転倒ともいえる。だから僕は、このお金がトークン(エコノミー)だといいと思う。
Twitterがトークンを発行するのか。または自分が発行するのか。
お金とは、共同幻想だ。
一万円札に一万円の価値があるとみんなが信じているから、あんなただの紙切れで食べ物も宝石も買える。
であれば、1,000人、いや100人でもいい。その100人が、同じ価値を見出すものなら、それは独自通貨になりうるかもしれない。そうすることで、小さな共同幻想社会を作る。
日本中、世界中から、自分と合うような人たちと、1つの国を作るようなイメージだ。
本来、人は誰しも、1,000人の薄い知人より、100人の濃い繋がりを求めるもの。
DaiGo氏推薦の鈴木拓氏著の『最高の体調』によれば、原始時代から人は、100人前後の部族(コミュニティ)で生き延びてきたというデータがあるという。そもそも人間に、1,000人の顔を覚え、全員と向き合うキャパシティーはない。
以前こんなツイートをした。
少しずつ世の中はこの流れに進んでいる。
人が人と接して笑顔になるのと、人が動物園で檻の外から猿を見て笑顔になるのは、はたから見れば全く違う光景だが、この笑顔の総量をネットで数値化すると同じになる。
この違いを分けずに一緒に語っているのが現代のネット社会だ。
だからネット上の数値をリアルに持ち込もうとすると齟齬が生じるのは当然のこと。
それに気づき始めた人達が、新たな価値を構築すべく動き始めているが、ほとんどの人はまだ何も気づいていない。
おそらく東京五輪が終わったあとくらいから気づく人が増え始め、その翌年あたりに流れは一気にそちらに傾くだろう。
そのタイミングから動き始めても遅いことくらい、ここまで読んだあなたならもう分かっているはず。
サポートしてくれたら今日は「麦とホップ」から「エビスビール」に変えます。本当にありがとうございます。