冒険の扉

アロマクエスト|(16)|旅立-8

「準備ができたら、出発しよう。いい?」

カオルは身寄りがなく、村長の家に引き取られて育った。

そう多くはない荷物をまとめ、村長たちに挨拶をして家を出る。

旅立つのに、そう日数はかからないだろう。

「2日もあれば、行けるよ。」


「わかった。」メンタは、そう言いながら何かを取り出した。

「まず、これをキミに預けるよ。」

手渡されたのは、ブレスレットのようなものだった。

小さく、水晶のような球体が連なってできている。


「これは?」

「アロマル使いに必要なものさ。使い方は…実際にやってみたほうがわかりやすいね。」

「それを手首につけて、こっちに差し出して。」

「こう?」言いながら、カオルはブレスレットを突きだす。


「えっ。」

すると目の前にいたメンタが、急にこちらに向かってくる。

というより、ブレスレットに引き寄せられていた。

そして、あっという間に球体の一つに入ってしまった。

透明だった球体は、緑色の光を帯びている。


「キミの準備ができるまで、ボクはここで休んでいるよ。」

声だけが、その球体から聞こえてくる。

「ボクたちアロマルは、この世界では、どんどんエネルギーを消費しているんだ。」

「香りが、空気中で揮発していくみたいに?」カオルはたずねる。

「そう、その通り。」メンタは答える。

「このブレスレットの中にいる間は、エネルギーを補充できるんだ。」

(つづく)

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