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菜園教室で子どもの「数概念」理解と向き合う

先日、菜園教室で親子連れの方とご一緒にジャガイモの植付けや春葉物野菜の種まきをしました。
地面に巻き尺を伸ばしておき、ジャガイモは30cmおきに植えましょうとか、葉物は15cm間隔で種まきしましょうと伝えて始めました。

種イモを畝の右側から植え始め、親御さんが、お子さんに次は20cmのところだよとか、80cmのところだよとかと言うと、お子さんは左にいかず、右に移動…

この時使った巻き尺は、1メートル置きに赤い字で1mとか、2mとかと表示され、中間は黒い字で20とか80とかと書いてありました。

つまり、お子さんは次は80cmと言われて、「80」と言う字は読めるのですが、右に移動するのか左に移動するのか、分からない、とにかく、親御さんに言われた「80」と言う文字のところに移動するようでした。

いろいろ親御さんのお話を聞いていると、数を数える時に30の次が40にならず、20になったりすることがあるとの事、

つまり、「数」と言うものが30、31、32…と増加していって、40になり、50になりと言う観念がまだ形成されていないようでした。

そして、「20」とか「30」と言う言葉と、数が「増える」方向に数を数えていく、と言う考えが結びついていないことが分かりました。

僕は、まぁ、ジャガイモの植付け間隔が多少ずれても芽は出るしと思い、あまり正確に間隔にこだわらず、右から左に移動しながら植えることを考えてもらう事を優先して、
「お箸持つのどっち」と聞きました。

親御さんが「両方(の手)ともお箸持てる」とお返事してきました。

まあ、とにかく、次はこっちね、と左側を指し示し、こっち側に動きながらおイモを植えようねと伝えました。

その後は、既に種イモを植えてある左側に移動することなく、とにかく、右へ右へと動きながら、植えていけるようになりました。

この時、親御さんには「タマシイと言う言葉は、もともと、狩りを一緒にした時の一人分の分前と言う意味があったらしいです。それから、木の切り株などに刻みを入れて数を数え、10になると、刻みをクロスさせた。ローマ数字のXとか漢数字の十とか言うのはその名残らしいです。数概念と言うのは、何千年もかかって人類が獲得したもので、お子さんからすると、全く未知のことなのです」とお話しました。

30cm間隔で種イモを植えると「指導者」から言われた親御さんは、お子さんが、その「指導」の通り動くように、一生懸命に「次は80cmのところ」と言っていたわけです。

そして、右に行ったり、左に行ったりするお子さんを見て、苦笑しながら、いや、こっちに来るんだよとやっていたわけです。

それ自体、「微笑ましい」光景と言えるかもしれませんが、ただ、微笑ましいと言ってみているだけでは、菜園教室の指導者のあり方としては「違う」のだと思います。

「数概念」を「覚えた」大人の感覚からすると、「今、巻き尺の50cmの目盛のところに種イモを植えた、30cm間隔なのだから、次はその右側にある80cmのところに植えるべき」となるわけです。

この際、大人は無意識のうちに「50+30=80」と言う足し算をやっていて、足し算の結果、数は増加する・・・

それと左端から種イモを順に植えてきているから、右に移動する・・・(数直線上でプラスの方向に動く)

最初に目盛10cmのところに種イモを植えたんだとすると、
A(0)=10
A(n+1)=A(n)+30
と言う「数列」的な処理も無意識にやっているかもしれません。

つまり、種イモを左端から順に30cm間隔で植えると言う操作をしている「大人」は、相当に高度で複雑な数の処理をしているわけです。

30,31,32…と数えていく時、数が1づつ増えていくと言うことをまだ理解しきれておらず、30の次、20に戻ってしまったりすることがあるお子さんは、こうした高度で複雑な数の処理は「できなくて当たり前」なのです。

ですから、次は(巻き尺)の80の目盛のところと言われて、右に行ったり、左に行ったりするお子さんに対しては、菜園教室での指導としては、まず、どちら側に移動しながらイモを植えていくかを伝えることが優先のように思います。

正確に、80なら80の目盛のところに種イモを置くのは、その後の事で、多少「間違った」位置に置いたとしても、それは大人が「手直し」すれば良いことだと思います。

このように子どもが参加する菜園教室においては、そのお子さんの「数概念」理解度を把握した上で対応すべきだと思われます。

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