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旧約聖書の天地創造物語で「天」の創造は、かなり独特な内容になっています。

「水の中に大空あれ。水と水を分けよ。」神は大空をつくり、大空の下と大空の上に水を分けらさせられた。そのようになった。神は大空を天と呼ばれた。

この後、神様は「天の下の水は一ヶ所に集まれ。乾いたところが現れよ」と仰られ、乾いたところを「地」、水の集まったところを「海」と呼ばれたと言う形で、天と地と海が成立します。

日本書紀が引用している中国の古典では、「天地未だ剖れざる時」とか「天地初めて判れしとき」と言うように、未分離の状態から天地が分かれてきます。

ヘシオドスの神統記でも、当初は「混沌(カオス)」があり、それから地が生まれ、ついで天が生み出されます。

このように、まだ「天」と「地」が存在しない混沌とした状態から、天地が出来上がると言う展開は、ユーラシア大陸の方々の神話に見られます。

そうした中で、「天の上の水」と「天の下の水」が分離して、中間に「大空=天」が生まれたと言う聖書神話の語り口はかなり独特です。

水が天の上と下に分離すると言うお話は、ギリシャ神話にも中国の古典にも出てこないようです。

それで色々調べてみたのですが、「ユーラシアの創世神話(金光仁三郎 大修館)」に興味深いお話が出ていました。

マルドゥクはティアマトとの一騎打ちで・・・(中略)・・・ティアマトの肉塊を2つに切り裂き、その半分を固定して「天」として張り巡らす。こうして出来たがったのが天の宮殿エ・シャラ大神殿で、エアの住まいアプスー(天上の水)に見合う建造物だった

ティアマトは、塩水の神であり、バビロニア神話のエヌマ・エリシュでは「混沌」とも言われています。

この「混沌」が2つに切り裂かれ、一部が「天」になったと言う発想は、元々は、メソポタミアやバビロニア神話に由来するもののようです。

そして、その天の宮殿と言う思想が、ギリシャ神話に影響を与え、神統記は「天=神々の御座」と述べるようになったのでしょう。

更に混沌が切り裂かれ、天の上の水と天の下の水が分離すると言う発想が聖書神話に影響を与えたものと思われます。

ギリシャ神話と聖書神話は、バビロニア・メソポタミア神話を「元ネタ」としながら、別々なバージョンとして発達したもののようです。

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