第16回 プロハイカー・齋藤正史さん登場!

おはこんにちばんは。

今回もロングトレイルハイカーの齋藤正史さんへのインタビュー回です。アメリカの3大トレイル※をはじめ、数々のロングトレイルを歩いてこられた齋藤さんが、「富士山ロングトレイルプロジェクト」の最初のスルーハイカー(単年で全行程を一気に歩くこと)として、途中、古民家宿rootfieldに宿泊されました。
※アメリカにある長大なトレイルで、それぞれPacific Crest Trail(PCT)4,260km, Appalachian Trail(AT)3,498km, Continental Divide Trail(CDT)約4,300〜5,100km


齊藤さん装備

はやし(以下、は)「昨日に引き続き、よろしくお願いします。」
齋藤さん(以下、さ「よろしくお願いします。」

「昨日トレイルエンジェルの話を最後に僕が出してしまったんですが、それでいうと四国お遍路とかでよくお接待みたいな話を聞くんですが、あれもある種のトレイルエンジェルですよね。」
「そうですね、どういう風に表現すればいいかあれなんですが・・・。大枠ではトレイルエンジェルなんですけど、お遍路さんのお接待の場合って、実はお接待した人の分も背負ってお参りするっていうところがあるので、そう考えると純粋なトレイルエンジェルとは若干違う部分も出てくるんじゃないかなっていう」

「あーなるほど。それはそれでオリジナルの文化というか。」
「そうですね。宗教的な部分が絡んでくるので、ちょっとそこは特殊なのかなって私は思ってて、そうなるとどう表現するのがいいのかっていうとちょっと難しいんですが・・・」

「なるほどー。でもそれはそれで、その土地ならではの色があっていいですよね。そうすると富士山周辺も何かこう、地域性のあるものが出てくるのもいいのかもしれないですね。」
「そうですね、私なんか信越トレイルっていう長野のトレイルを、当時PCT(Pacific Crest Trail)を歩き終わってすぐ、そこで出会った3人の日本人ハイカーと共にスルーハイクをしたんですけど、山スカートっていうのがあって、アメリカのハイカーでアイリッシュ系の人たちがキルトスカートを履いて歩くんですね。私もそのスタイルで一時期3年ぐらいスカートを履いて山を歩いてたんです。で、その(信越トレイルを歩いていた)ときも、スカートを履いて歩いてたんですけど、そしたらおばちゃんたちにすごくモテて(笑)。色々お菓子もらったりお弁当もらったり。」

「そうなんですね(笑)」
「そういう形でもトレイルマジックっていうのは成り立つので、例えば富士山ロングトレイル歩いてるよっていう話を聞いて、『じゃあ食べ物とか補給大変でしょ?ちょっとこれ持っていってよ』それだけでも十分素敵なトレイルマジックになるんじゃないかなと。」

「いいですねぇ、その土地その土地のオリジナリティみたいなものがあって。なんでもかんでもアメリカを真似するだけではなくて、日本は日本の文化を活かしながら新しい文化ができてくるのはいいですよね。」
「多分日本なんかだと、例えばおばあちゃんとかが縁側にいて『ちょっとお茶でも飲んでいったら?』みたいな感じでも面白いのかなと思いますよね。」

「そうですね。実はさっき収録前にも色々お話を伺っていたんですが、富士山ロングトレイルはまだ完全にはコースが確定していないということで、山の上(のルート)だけではなかなか大変なエリアがあったりして、街の中を歩くルートが入る可能性もあるということで、そうなった場合はそれこそ縁側のおばあちゃんみたいな(笑)、完全に自然の中に入り込むという良さもありつつ、日本の文化にも触れるというか。」
「そうですね。アメリカのアパラチアントレイルっていうトレイルがあるんですけど、ここは街の中がトレイルのルートになってる所があったりして、トンネルの入り口に(アパラチアントレイルの)マークがついてたり、あと街を歩いているとホテルから顔出して『おーい、ここにみんな泊まってるからお前も泊れよ〜』って声かけられたりとかもあるんですよ。
完全に100%山だけかっていうとそういうわけでもなくて、時々集落とか(も歩いたりして)。あと面白いところだと、ニューヨーク州の動物園の中を通るところもあって・・・」

「えー!そんなところがあるんですね!(笑)」
「私が行ったときは9時〜17時までが開園時間で、その時間に間に合わないと入れなくなっちゃうので、(動物園の)外側を回っていかないといけなくて余計に歩くことになるっていう(笑)
なので必ず開園時間内に通り抜けられるようにスケジュールを組んでいくっていう(笑)」

「それは動物園が先にできたのか、(トレイルが先なのか)どっちなんですかね(笑)」
「どうなんですかね、面白いですよね。で(動物園の)一番最後にあるのがブラックベアの檻なんですけど、アパラチアントレイルを歩いているときに一番注意しなきゃいけない動物がそのブラックベアで、最後にみんなで『皮肉っぽいよね(笑)』って言って(動物園を)出て行くっていう(笑)」

「なるほど(笑)」
「あと、富士山のある山梨と静岡って、比較的東京に近いじゃないですか。今はコロナの影響で海外の方はなかなか来れない状況ですけど、僕も海外によく行ってたのでわかるんですが、富士山のインパクトって外国の人にとってはかなり強いですよね。だからそういった方々にもこの富士山ロングトレイルを歩いてほしいですよね。」
「そうですね。特に北米の人は、山の頂上を目指すっていうよりは(山の中を)歩く文化の方があるので、もしかしたら逆に富士山ロングトレイルっていうのがあることによって(海外の人にしたら)『おーすげぇじゃん、富士山見ながら歩けるなんて最高じゃん!』て言って歩く方が案外多いんじゃないかなって思うんですよね。
どうしても富士山に登るってなると、外国人の方にはちょっと敷居が高い感じがあると思うので、逆にハイキングで(富士山の)周りを歩けるっていうのも面白いのかなと思います。」
「ハイキングって、日本だとすごく軽い感じのイメージがありますよね。でもアメリカだと、〈マウンテン〉と〈ハイキング〉ていう2つのジャンルがあるんですよ。〈マウンテン〉ていうのはいわゆるアルパインクライミングっていうちょっと特殊なクライミングのものをそう呼ぶんですけど、それ以外は全部〈ハイキング〉なんですよ。ジャンルとしては。
なので、私みたいに5,000km歩くのもハイキングですし、2時間とか10分とか歩くのもハイキングなんです。ですので、場所が変わると『ハイキング』という言葉もすごく幅が広くなる。そういう意味で外国人の方は『ハイキング』という言葉を使うことが多いと思うので、おそらく富士山周りをハイキングしたいっていう人はかなり多いんじゃないかなと思います。」

「確かに日本で『山に登る』っていうと、なんとなく『山頂を目指す』っていうイメージが強いですけど、北米とかに行くと国立公園の中をずーっと(水平方向に)歩く人が多かったりとか。そういう意味では先ほど外国人の方を例にとったお話がありましたけど、日本人ですでに富士山に登ったことがある人とか、違った富士山の楽しみ方をしたいっていう人にも良いコースですよね。」
「実際富士山に登っちゃうと(富士山の)形は見えないですからね(笑)
登らずに周りから見ればいくらでも綺麗な姿が見えるんですよね。それもまた一つの楽しみ方なんじゃないかなと。」


はいというわけで今回もバチくそに面白いお話を伺うことができました。
5,000kmのハイキングって控えめに言ってやばいですよね。
富士山ロングトレイルが正式に開通したら、僕も会社におやすみをもらってスルーハイクしたいと思います!
もちろんその時はVoicyとnoteでもレポートします!
次回は齋藤さんが最近歩かれた、2,100kmに及ぶ九州自然歩道のお話と、そこから繋がって地域とトレイルの関わり方みたいなお話になります。
乞うご期待!

それではまた!

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