第6回 樹海を歩きながら森や山の話をします

こんばんは、おはようございます、こんにちは。

今回は樹海の中からVoicyの収録をした時の書き起こしです。

樹海

この時、樹海の中の道路から近いルートを走っていたんですが、正面からお散歩中の地元のおばあちゃん2人が歩いて来まして、僕は歩きに切り替えて挨拶をしたんですね。
こういう場合、山や森のマナーとして、すれ違ったり追い越す時はスピードを緩め、少し遠目から挨拶をしたり声をかけるのですが、トレイルランナーたちはそういったマナーに対する啓蒙活動がしっかり行われているんですね。なので当然この時も僕は走りから歩きに切り替えて挨拶をしたんですが、この時に相手から返ってくる反応って、地域や人によってまちまちなんです。
「すごいね〜」「頑張ってるね〜」と言われることもあれば、日本の伝統的な考えとして、「山や森の中を走るな」っていう考えの人もいるんですね。
それ自体はこれまでの文化や価値観の話なので、良い悪いの話ではないんですが・・・。

で、先述のおばあちゃん二人はどうだったかというと、僕が歩いてすれ違おうとした時に、「頑張れ〜!」って笑顔で応援してくれたんです。
「(歩いて)サボるな!」っていう激励なのかもしれないし、「頑張ってるねー!」っていう純粋な応援かもしれないんですが、とにかく僕としては嬉しかったので、「ありがとうございます!」と言ってすれ違ったんです。
これって誰も嫌な気持ちしないしみんながハッピーだと思いません?
多分あのおばあちゃんたちも、応援してくれたということは、気持ちが良いか悪いかで言えば良かったはずだし、言われた僕は当然嬉しいわけです。

でもこういうことって実は当たり前じゃなくて、日本の山を走ることに嫌悪感や抵抗感を抱く人って少なからずいるんですが、僕が海外の色々な山を歩いていた時は、ハイカー(歩く人)とトレイルランナー(走る人)とバイカー(自転車乗る人)が同じルートを共有していて、いたって普通に挨拶や会話をしていました。
しかし日本ではこういった光景はかなり稀で、ハイカーさんのための山道という認識が強いんですね。
それに関しては我々トレイルランナーも十分承知していて、変化を嫌う日本人が最近になって山を走る人が増えてきたことに拒絶反応を示してしまうのも理解はできるので、トレイルランナーも山のルールをみんなで共有するための啓蒙活動をやったりしています。
また「トレイルランナーは山道を荒らす」という意見もあるので、定期的にトレイル整備(登山道が拡張しないようしたり、希少な植物を保護するように道を整備したり)をしています。
まぁそういう良い面についてはメディアは取り上げませんが(笑)

で、ここからが重要なポイントなんですが、「山や森を荒らす」という言葉の意味を僕はもう少し深く考えなければいけないと思っていて、そういうことを言う人って、走ったりルートを外れることで植物を傷つけてしまったり土壌がゆるくなってしまったりというイメージをされてるかと思うので、だから「あれもダメこれもダメ」で森から人を排除するという考え方が今まであったと思うんです。
ただ、実際は山や森って、人の手が入らない方が荒れていくんですね。
何もしないことが守ることには必ずしも繋がらなくて、しっかり定期的に人の手が入った山や森は、ちゃんと安全な道ができたり、生物多様性が維持できたり、その後にそこを訪れる人を感動させて、また自然保護に対する意識を高めてもらうことができるわけです。


今山や森を整備しているのって、行政の方やボランティアの方が多いと思うんですが(本当に頭が下がります)、結局その人たちも食っていかなきゃならなかったり、守るものがあるわけですよね。
なんでもかんでも排除排除で人が行きにくい自然にしてしまうと、
「人が来ない→お金が落ちない→整備する人の収入がない→整備する人が食っていけずに辞めざるを得ない→放置されて自然が荒れる→より人が来ない」という悪循環にハマっていきます。

よく自然災害などが起きた時にも同様の現象が起きますが、身を削ってボランティアで続けられる活動には時間的な限界があって、それでは本当の意味で誰かを助けることはできないと思うんです。
その時に当然お金が必要になってくるわけですが、どういうわけか日本においては、人助けや自然保護で「収入を得る」ということに対し、「偽善者」「銭ゲバ」などのずれた批判をぶつける人が少なからずいて、結果としてボランティアの方のモチベーションだけに頼る形になっている。
これでは守るべきものも守れないですよね。


このあたりについては僕もこの西湖エリアで、これから少しずつ実行していく予定なので、その奮闘記のようなものもリアルタイムで現場からお届けできればと思います。

というわけで今回は「これからの自然保護を考える」というお話でした。

それではまた!

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