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とあるネームチェック

ある一本のネームチェックしていて、惜しいなぁって思ったこと

【文章の順番】
物語の冒頭にナレーションやモノローグで入るのはいいけれど、その文章の組み立てをちゃんと考えているか?どの順番で文章を見せてゆくか?で物語開幕の盛り上がりは大きく変わる。絵だけでなく言葉でもインパクトを!

【物語の視点となる者のリアクション】
誰の視点で物語を見せるのかは徹底すべき!誰から見た世界であるかをしっかり見せることで読者は物語に深く入れる。
そしてその世界を見ている者の出来事に対するリアクションこそが出来事の価値を决める…読者がそのリアクションで判断してくれるんだ。
視点となるキャラクターのリアクションこそが作品世界の価値基準となるのだ。
漫画作品によって同じ物、同じ出来事でも価値は変わる。作品世界によって価値基準は変わってしまうから読者にはその世界における基準が必要なんだ。
せっかく恋するシーンで出会った相手を美しく描けたとしても、そのリアクションの表情がなければ、物語上での価値は読者には伝わらないもんだ。
逆に絵がそんなに上手くなくて可愛く綺麗なキャラの絵が十分に描けなかったとしても、リアクション表現が上手ければ美しい人と一瞬で恋に落ちるシーンは読者に伝えることができるのだ。
リアクションで読者に作品世界で起こっていることの面白さを伝えよう!

【恋は錠前】
定番、定型の作品が要求されていたとしても、なぜそうした決まった形になっているのかという本質を考えずに定番の骨格を当て嵌めては大事な部分を描き落とすことになる。
出会い、愛し合う物語ならいきなり両側の気持ちを描きすぎないこと。
一方から見た世界で描くから、まだよく知らぬ恋しい人の神秘性が生まれ、フェロモンが感じさせる過剰な興奮の世界が表現できる。
もう片方の気持ちはそこが描けた後に謎解きのように描けばいい。
恋愛描写はあらかじめ用意する錠前だ。錠と鍵をいかに設定するかで面白さが決まってくる。
まず主人公という鍵に不似合いなくらいに立派な錠を用意して難易度を上げることで恋は燃え上がる。それでも他の人ではダメな鍵を自分は持っていると主人公が気づくのが基本的な恋に落ちる物語の仕組みとなるんだ。

【取材は披露すればいいというもんじゃない】
苦労して調べたり、取材したことはしっかり作中に取り込みたくなるもんだ。その気持ちは痛いくらいよく分かる。でもそれが読者に届くようにするには取材した何かを最高の絵で描くだけでは不十分で、キャラクターがその最高の絵にしっかりリアクションし、見たものを理解し、読者に咀嚼して伝えることが大事だ。調べてきたことの価値もキャラのリアクションを通して価値を伝えきらなければ、作者の自己満足になる。取材そのものには価値がない。取材して掴んだことを伝えられてこそ意味を持つんだ。

【全シーンはキャラの魅力を見せるためのシーン】
物語を展開させるために描く全てのシーンで、そのエピソードはキャラの魅力を引き上げるか?落とすか?問い直してシーンを吟味しよう。
それは大事なキャラクターが読者に愛されなくなるシーンになってはいないか?
例えばファーストシーンで主人公が憧れ始めたヒロインが次のシーンでは元彼と痴話喧嘩していたとしたら、主人公と読者の憧れはいっぺんに崩れるだろう。男に絡まれているところを主人公が助けるシーンを描きたいのだとしても…ヒロインは救うべき価値がある者として常に毅然としているべきだ。同次元で元彼と言い争っているヒロインには百年の恋も冷めるってもんだ。
そもそも…そんなことにならないように全てのシーンはキャラの魅力を引き出すためのシーンと考えて描くべきなのだ!
魅力とは個性そのものの描写ではない。個性の方向性に沿ってキャラを動かす時に読者に愛される行動を選択してこそ魅力となるんだ。

【ストーリー漫画における記号表現】
ストーリー漫画において…描写力があるのに焦るシーンで突然汗とばす記号表現を使ってしまうのは勿体無い。漫画の新しい読者にとってそれは違和感ある表現だ。人間一瞬で汗が飛ぶほど出たりしないしね。そんな記号表現はコメディシーンにとどめるのがいいだろう。描写力があるなら表情で勝負しよう!顔、ポーズ、指先…そして風景や気候や光を描くことでの比喩表現という手もある。
過去に見たやり方で、ただ描くというのは思考停止だ。
なぜそうするのかから考えてこそベストの表現に行き着くってもんだ。

どれもみんな読者ファーストという考え方が徹底されれば解消される問題ですね。
読者が見たいのは?読みたいのはなんなのか?全てのシーンでそれを考えるだけで面白さは倍増するはずです!構図にも確信が生まれるでしょう。

表現とは伝えること!描けないことが一番最悪だから、最初は叩き台として多少いい加減に描いてもいいけれど、そこから一つ一つ最大限に伝わるようにとことん考えて仕上げてゆきましょう!

(あくまで一本の作品の目指すべき方向性に沿った修正案で全ての作品に当てはまるものではありませんので、そこはご注意ください!)


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