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24.4月チェロレッスン②:自宅レッスン再開?

レッスン室に入ってレッスンの準備をする前に、先生に私の所属するアマオケの定期演奏会チラシを渡した。

「チラシ、やっとできたんだね。それにしても浮かない顔して。どうした?」

と先生が私の顔をを覗き込む。

「定期演奏会の楽譜をもらったときには、本番が5月だってちゃんと分かってたんです。
3月から6月って私、仕事がめちゃめちゃ忙しくってマトモに練習できないのも分かってました。
でも、今回降りる(出ない)という選択もできなかった。
とても後悔しています。」

私はそう吐露した。

先生、チラシを机に置いて、椅子にもたれて腕を組む。
「つまり、個人練習ができないのに、オケで完璧を求められて辛いと。そういうこと?」

私、頷く。
「だから早めに練習はしたんです。でも間に合わなかった。私には難しいんです。いくら練習してもモノになりません。」

私、ちょっと泣きそうである。
先生、「うーん。」と唸る。

「お前んとこのオケ、そんな厳しい団体じゃなかったんだけどな。お前が入った頃から変わったよね。
夜は仕事が忙しいんだから、練習時間が確保しやすい人が頑張るべきなんだよ。夜が必死になることなんてない。」

「…そうなんでしょうか。」
鼻を啜って、私は呟いた。
「そうだよ。」
と先生。

「そもそも。夜が仕事の息抜きの趣味として始めたのに、その趣味で辛くなってるなんておかしいよ。」

…確かに。
先生が続ける。

「仕事は大事だよ。それで食べていくんだから。
ボクだって、どこに重きを置くか、常に考えてるよ。まず、オケの仕事が一番。それに生徒のレッスン。好きでやってる仲間とのアンサンブルや伝手で頼まれるエキストラは余裕がなければ断るよ。
夜にとってアマオケは重きを置くところではないだろう?」

「…そうですね。」
「仕事はしっかりおやりなさい。チェロは楽しみなさい。」
「…はい。」

先生にそう言われて、私の暗い気持ちが少し楽になった。

           ★

レッスンは、バッハ無伴奏5番プレリュードを全通しで弾く練習。

「ごめん。無伴奏の楽譜忘れてきた。」
「またですか。」

先生、悪びれず笑う。
先生の生徒の中で現在無伴奏をやっているのは、私だけなのだろう。

「覚えているから、大丈夫。」

ということなので、私は弾き始めた。

何とか最後まで弾いたという感じ。
途中、ずいぶん引っかかった。
前回のレッスンで弾いたときの方がマシだった。
弾き終わって、思わずため息が出る。

レッスン時、いつも先生は私の向かい側に座るが、指導する部分の小節番号はさすがに楽譜を見ないとわからない。私の隣に椅子を寄せてきた。

一緒に私の楽譜を覗き込む。

「序奏だけど。八分音符と十六分音符の繋がりは良くなったよ。
出だしのCのドッペル。恐る恐る弾かないで。弓圧かけて思いっきり音出して。」

はい、わかりました。

「序奏はこれ単独で一つの壮大なテーマになってるから、しっかり仕上げてほしいんだよ。
特に3小節と4小節の四分音符から十六部音符の三連符につながるところ。三連符が忙しすぎなんだ。
もっとゆったり、聴かせるように弾いてほしい。そうできない理由は、弓が足りなくなるからなんだろう?」

意識できていなかったが、その通りだ。

「そこはね。弓を戻すといい。四分音符のCを弾いたら、弓を弓元に戻して、それからドレミを弾くと4小節目のH Dのドッペルが余裕をもって弾けるようになるよ。」

先生、私の楽譜に遠慮なく鉛筆で書き込みをする。

実際弾いてみると、なるほど。
ドッペルが余裕で弾ける。
序奏が壮大に弾けない原因は、やはり右手の弓使いにあるようだ。

「2ページ目からの本編、今日はとてもメタメタな演奏でした。」
と私は反省を述べた。

先生、ふふふと笑む。
「いや。夜は弾けないわけじゃない。
原因について言うと、休むべきところでしっかり休んでないんだよ。」

「前のレッスンのときにも言われたので、今回は意識して休んだつもりなのですが。」
「うん。でももっと休んで。深呼吸するくらいに。仕切り直すつもりで。
長距離走だって思ってもらうといい。
序奏だけだって大曲なんだから、休めるところで休まないとゴールに辿り着けないよ。」

そうか。息切れで弾けないのか。

ちゃんと休めるよう、意識してみよう。

           ★

「夜はやっぱりボクの家でのレッスンのほうがいい?」

レッスン後、先生にそう聞かれた。

「はい。家から近いですし、職場から行くにしても通り道ですから寄りやすいです。」

今レッスンを行っている音楽教室は、家からも職場からも遠い。

「自宅レッスン、再開してくれるんですか?」
私が学生の頃は、自宅レッスンだったのだ。
先生が音楽教室に講師登録した都合で、直弟子も音楽教室でレッスンを受けることになった。もう、ずいぶん昔のことになる。

「うん。ココの教室のレッスン室割り当て時間の都合で、一度にレッスンできる人数が少なくなりそうなんだ。だから、直弟子だけは自宅レッスンにしようかと思って。と言っても、3人だけなんだけど。」

「センセの家で、そして一番遅い時間にしていただけると、私はとても助かります。
でも、レッスン室は片付いたんですか?」

先日訪問した際は、まだ荷物がいっぱいだった。

先生、苦笑する。
「週末に1/3は片付けたよ。ほかの弟子にも聞いてみてボクの家で良いというなら、本格的に片付けるよ。実は自宅レッスンのほうが、ボクも楽なんだ。弟子のほうから来てくれるからね、ボクは出かけずに家で待っていればいい。」

やった♪
順番最後レッスンであれば、先生の夕飯が食べられるかもしれない(←そこが目的?)。
自宅に帰るのが面倒くさくなる可能性もあるが…。

「ところでセンセ、GWは?忙しいですか?」

先生、うーんとしばし考える。

「今年はあんまり忙しくない、というか、ちょっと休みたい。昨年末からあまり休んだ気がしないから。」

先生、内にも外にも大変だったから。

「じゃあ、その中の1日、どこかでセンセの家に遊びに行ってもいいですか?」
「お前は休めるの?」
「私もGWの1日くらい、休みたいです。」
「いいよ。でもまだ具体な予定は立ててないから、後で連絡するよ。」
「はーい。よろしくお願いします。」

先生の自宅レッスン、実現するといいなぁ。

音楽教室から外に出たら、公園の桜が満開だった。
私が今年初めて見た桜だった。





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