日本はこれ以上ガンバって働かなくていい - 経済指標『金利』から読み解く

『成長戦略』という言葉をニュースでよく聞くと思います。

少なくとも日本の場合では『成長戦略』というと、今日より明日、今年よりも来年、我々よりも子供、孫の世代は『経済』を成長させるという文脈で使われますね。日本政府でも成長戦略会議なるものが開催されていて、内閣官房のウェブサイトでも成長戦略会議が2週間に一度行われていて、日本政府は経済成長に大きな関心があることがわかります。

世界各国も毎年『GDP成長率』なるものを発表して、自分たちの頑張り具合を経済成長率として発表しています。要するに、私たちの社会では経済成長が重要な位置を占めていて、そのために日夜ガンバって働けというわけでする。


まぁ、理解できなくもないです。経済規模は国の富を表し、経済規模が大きくなれば、安全・便利・快適な生活が送れる。そのために私達やご先祖様達は頑張って働いてきました。


ただ、今の日本では既に安全・便利・快適な生活を送れている気がします。少なくとも私は十分な生活水準に達していて、既に必要なものはすべて持っています。そのうえでさらにガンバって働く必要があるのだろうか?

結論を先に言うと、これ以上成長をする必要はありません。しかも、一番重要な経済指標の一つである『金利』が日本は成長が必要ないことを表しているので、そのことについて説明をします。


日本の金利は『0%』、その意味は『これ以上成長しなくてもいい』

金利とは、銀行の利子と考えても差し支えない。現在(2021年)の日本の長期金利はほぼ0%。銀行利子はほぼ0%ないし0.1%程度。銀行に100万円を預けておくと、半年に一回、数円の利子が明細に記載される程度です。嬉しくない。

経済学的に言えば、金利とはその国で行う経済活動の利潤率を表しています。

例えば、あなたの友達が事業を行うので100万円を貸して欲しいと言ってきたとします。もし、あなたが友達に100万円を貸すと、自分でビジネスを行って資金を増やす機会を失うので、利子を受け取らなければ友達に貸したくないと思うでしょう。友達も事業の利潤から利子を返済したい。このため、利子率は事業の利潤率に依存します。

また、ある国で利潤率の高い事業を行う余地があれば、資金需要が多くなります。その場合、限られた資金を借りるため、そのリターンである利子率は高く設定されます。反対に、資金需要が少なければ、資金の借り手が少ない(事業者が少ない=利潤率の高い事業がない)ので、高い利子率を設定しなくても資金を借りられるため、利子率が下がります。


さて、日本の金利はほぼ0%です。これは日本が既に平均的な事業の利潤率が0%に近づき、資金需要もほぼないということになります。日本は既に全国津々浦々開発されつくしていて、通信網、高速道路、新幹線網が発達している。私の住んでいる読谷村でも高速インターネットが使えて、対戦格闘ゲームを内地とラグなしで対戦できるほどです。


既に開発され尽くしていて成長の余地がない日本は、これ以上成長する必要がない。最重要経済指標の一つである『金利』がそのように教えてくれている。


貨幣は利子により石から種子へと変わり、利子により再び種子から石へ戻る

金利の歴史を見ると、資本主義の発達に密接に関係しています。資本主義の特徴として『資本を増殖させること』があるので、金利の概念がなければ資本主義は成り立ちません。

13世紀のヨーロッパにおいて、利子を正当化する理論を組み立てたと言われています。もともとキリスト教では、利子を取ることが禁止されていました。貸出金に対する利子とは時間が生み出すものなので、利子とは時間である。時間は神のものであるから、人間が神のものである利息を取ることを禁じていました。さらには、イスラム教でも利子を取ることを禁じています。

しかし、13世紀にオリーヴィにより下記のように利子が正当化されました。

“貨幣がひとたび資本と貸せば、それを用いて実際に事業を行うのが貸手『出資者』であろうが、借手『事業者』であろうが対して違いはなく、(略)資本の所有者は、それを貸そうが貸すまいが、常に資本の生む利益を手に入れる“(嘘と貪欲、大黒俊二)

これは『カネはカネなので、それが増えればカネの持ち主にも還元されるべきである。それが誰のカネでも問題にならない』というように解釈できます。

金利の推移を見てみましょう。13世紀から20世紀半ばまで主要国の金利は2%から8%の間で推移したが、第二次大戦後に大きく変動します。アメリカでは長期金利が1950年代から1970年代末にかけて増加し、1981年の金利15%をピークに2021年現在は1%前後を推移しています。日本では戦後の高度経済成長期に20%を超えたあたりをピークに、2021年現在はほぼ0%になっています。

先ほどの『資本の所有者は、それを貸そうが貸すまいが、常に資本の生む利益を手に入れる』という言葉に従えば、資本が利益を生めば利子を手に入れる、逆に言えば資本が利益を生まなければ利子を手に入れられないというとことになります。

現在の日本の金利0%ということは、資本は利益を生まないということになります。要するに、日本では利益を生む投資先がない(開発されつくした)ということが言えますね。


成長よりも分配が必要

金利0%というのは、『もう十分成長しましたよ~』という合図なので、これ以上、経済成長のためにガンバって働く必要がないということになります。

ということで、これから日本は経済成長以外のことに各人の時間が使えるということになりますね。芸術活動でもよし。スポーツでもよし。もちろん、やりたいことがある人は自己実現のために仕事をしても良いでしょう。重要なのは、選択の自由があるということです。

さて、ここまで読むと、『私は働かないと食べていけないから、夜遅くまでガンバって働いているんだ!』という反論が聞こえてきそうです。

もちろん、日本にはワーキングプアに見られるように、給料が著しく低いので、働かなければならない人がいるのが事実です。ただ、日本は十分開発されていて豊かなことも事実です。


何が問題なのでしょうか?


問題は富が偏在しているということです。格差があるということですね。このため、喫緊の課題として、日本がガンバって集めた富をどのように配分するかが課題になります。

この課題については、別の機会に議論をしていきます。今回は『もう、日本は成長する必要がないんだ』ということを持ち帰って戴ければ幸いでございます。

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