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えーえんの補助線 〜 笹井宏之の歌を読む(1)


笹井宏之さんの歌を鑑賞していきます。 
ぼくは詩人なので、短歌の鑑賞というには詩人目線すぎるかもしれません。
序論、本論、結論というていではなく、一首評(のようなもの)を重ねていくかたちで、笹井さんの創作物がなぜ「ああいうふう」に見えるのかを感じとっていきたいとおもいます。
極私的な解釈ですので、ご興味あるかたのみお読みいただけるといいかとおもいます。


1 ヴァーティカルな夢

*

ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす


笹井さんの歌には、ヴァーティカルとホリゾンタル、つまり垂直の線と水平の線で構築されているものがある。
縦と横というと座標みたいに聞こえるけど、どちらかというと体幹に埋められたジャイロスコープのように、歌の身体に組み入れられている。それが、じつは笹井さんの世界観のどこか人工的な手触りをつくり出している、いちばんの根底ではないか。

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