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「生命の樹」 第7詩

「 生命の樹」 第7詩
 詩・益山弘太郎 / 写真・齋藤陽道


俺は観た  

母の胎内で破水した時  

フラッシュが撮かれるのを  

その映像は  

俺の脳髄に残った  

今でも時折  

記憶の海馬から姿を現す  

それは巨大な生命の樹  

様々な果実を  

たわわに実らしている      

ところで お前  

そんな所で  

何をしてるかだって  

そうさ 

こんな暑い日は  

堤防の土手で  

上半身 

裸で  

風に吹かれているのさ  

ちょうど土手の向こうに  

果樹園が見える  

人間の造った  

ちっぽけな果樹園が      

何  

そんな格好で  

道彷く人達に  

馬鹿にされてるぞだって  

なあに気にする事は無い  

どいつもこいつも  

同じ事さ  

嘲笑も賞賛も崇拝も  

お互い様さ  

たわわに実った  

巨大な生命の樹の果実を  

つつき合ってるだけさ      

俺達は  

時間と光のシャワーを浴びる  

俺達は赤ん坊だった  

母に抱かれていた  

味覚を刺激する  

料理の香りがする  

父と母の会話が聴こえる  

愛が喜びと共に  

悲しみを携えて  

姿を現した  

巨大な生命の樹の  

フラッシュの後に  

手に入れた  

小さな果樹園  

この世界に溢れている      

その後  

俺は成長して成人し  

哲学者に為った  

だから  

こんな堤防の土手の上で  

上半身 裸で  

馬鹿げた事をしているのさ      

果樹園が見える  

人間の造った  

ちっぽけな果樹園が  

あちらこちらに見える  

大きな大きな  

生命の樹の向こうに



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詩人・益山弘太郎さんのなれそめについて


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