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「愛の世界」 第8詩

「 愛の世界」 第8詩
 詩・益山弘太郎 / 写真・齋藤陽道


ねえねえ いるかさん  

あなたは私の孫にそっくりよ  

いるかさんは何処から来たの?   

僕は海の底から来たのさ  

秘密の扉から  

お婆ちゃんに会いに来たんだ  

お婆ちゃんは何故そこにいるの?   

神様からメールがあったのよ  

「庭に出てみなさい 綺麗なお花といるかさんに会えるよ」 

ってね  

だけどいるかさん  

秘密の扉ってなあに?   

僕はただ游いでただけだよ  

でも神様が言ってたよ  

「人間や動物は不思議なことがあるから生きているんだよ」 

って  

だけどお婆ちゃんは  

どうして車椅子に乗ってるの?  

セーラー服を着ているの?   

お婆ちゃんはね  

若い頃に戻ってみたかった

だけよ  

それにね 

私は病気なの  

もうそんなに長くは生きられないのよ  

神様がいるかさんに会わせてくれたの   

可哀想 可哀想  

でも僕も病気なんだ  

最近 游いでてもつらいんだよ  

それに パパもママももうとっくに  

鯨に食べられて死んじゃったんだ   

いるかさんも苦労してるのねえ   

ごめんね お婆ちゃん  

僕もうそろそろ帰らなくっちゃ  

秘密の扉が閉まる時間だよ  

じゃあ さようなら  

頑張ってね   

待って いるかさん  

私も海の底へ連れて行って  

あなたのパパやママと眠りたいの   

だめだよ 神様が言ってたよ  

「人間は陸の上で死ぬのが本当だ」 

って  

大丈夫だよ  

僕達はきっと天国で会えるよ  

その時はお婆ちゃんも  

若い娘さんの姿になってるよ  

ねえねえ  

僕 天国で恋をしてもいい?   

いいわよ じゃあまたね  

他のいるかさん達にもよろしくね  

あっ いるかさん いるかさん  

神様からまたメールが来たわよ   

なあになあに 読んでみて   

この世界での最期のメッセージよ   

なあになあに教えて   

「すべての者は支え合い 心の愛に生きなさい」   

聴こえた いるかさん?   

うん 聴こえたよ  

他のみんなにも伝えるね   

ありがとう いるかさん   

ありがとう お婆ちゃん  

天国で恋人になろうね    

さようなら




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詩人・益山弘太郎さんのなれそめについて

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