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啼き声は闇に溶ける ④ 斎藤緋七

「そうだ。延々とその繰り返しさ。十四歳まで生き残った幸運な仔兎は臓器売買のために殺される。死ぬしかないか、殺されるしかないか。道は二つ用意されているがどっ ちに進むかは運しだいだ」
「どうがんばっても、十四、五歳が寿命っていうわけか」
「小児性愛者の欲の餌食、あと、快楽殺人のために飼われる可能性もあるな。金を持っていたら不可能が可能になる」
「秘密結社みたいに重んじられるのは血筋ではなく、分かりやすい、現金って言うことだよな? 」
「そうです」
「江口くんの親父さんは相当、金か強力なコネを持っているというわけか。十五歳を過ぎても生き延びて組織に属して仕事をしている」
江口くんは腕を組んで、
「身分は無いけど土地持ちだったらしいから、金はあったらしい。うちの親父が持っている金は残らず、じいさんが作った金だ。親父は本人も分からないくらいの遺産を十歳で相続したって言ってた。家庭 をもった後も、元土地もちの長男なのが分からないようにして、金も8割手放して地味に暮らしている。狙われたらやばいからな。うちの親父は十三、四歳のときに命を狙われて早くから悟ったようだ。相続した金は組織に入ったときに納めて生き延びて、日本人の皮を被ってオプスキュリテの一員として働いている」
「長い物には巻かれたということか」
「ああ」
「江口くんは、日本人じゃないのか? 」
「4分の1だけどな」
返事が返って来た。純日本人にしか見えない。
「そうだ、佐々木兄弟も明日から巻かれる人生を送って行くしかない」
死んでも巻かれるか。馬鹿野郎。長いものに巻かれるのが、俺は何よりも嫌いなんだ。
「特権階級のサング・ブルーと言うわけか。ルネも」
「ははは」
江口くんは笑った。
「佐々木兄。お前も弟も、青い血を持つ、特権階級の人間だ。選ばれし人間だ」
「サング・ブルーか、さっきも、そんなことを言っていたな」
「仔兎島は無法地帯だ。無法地帯には正義や良心なんて邪魔なだけだ。これが仔兎島の常識だ」
そう言って江口くんはノートを一冊とボールペンをくれた。
「これから、仔兎の名前を言うから書け。まず、男からだ。ちなみに全員日本人だ。まずは男からだ」
「分かった」
江口くんに、
「確か、今、オスは三人だったな」
と、聞いた。
「仕事をするのオスは三羽。また、狩りに出ないと三羽では少ないと客から苦情が来そうだ。それに、回転が速いから名前を憶えても、正確な年齢まで全部把握する 必要はない。キリがないからな」
「ああ」
「だから、これから言うことは暗記しなくていい。把握程度で」
竜馬はこの船の中のどこかにはいるはずだ。
「牡を纏めるリーダーがガブリエルで十四歳。ジュールが十二歳、マルタンが今年、八歳。これで全部だ。さっきもいったけど覚えたと思ったらいなくなっているから適応 に頭の隅にでも入れておけ」
「サング・ブルーが分からない」
「英語で、ブルーブラッド。日本語に直訳したら、青き血だ」
「アオキ、チ? 」
訳が分からない。でも、一応、江口くんには返事をした。
「わかった、三人だな」
「次にメス。纏めているレミ、十四歳、ステイシー、十三歳、アポリンヌ十が三歳、エミリーが十一歳、アンナが十一歳、ステ イシーが九歳、カミーユ、六歳。以上だ。こんなにいたら、当分仕入れなくても大丈夫だろう」
「ああ」
「覚えても、無意味だ。回転率が早いから」
回転率か。 カミーユ、六歳? そんなに、幼い子どもが本当にいるのか。
「嘘だろう」
「何が」
「六歳って。まだ、ちっこい子どもだ。卒園前の幼稚園児じゃないか」
「本当だよ。早く慣れろ」
本当に、大人の性の相手をさせているのか。信じられない。
「テレビドラマでもこんな設定はない」
でも、この仔兎島ではそう珍しいことでもなんでもないのだろう。
「今の女の仔兎のリーダーは、その、レミっていう女の子? 」
「そうだ。揉めやすい女どもを纏めているのは、レミだ。レミは今年十五歳で最年長だ」
日本では中学二年の年齢か。
中学二年生で最年長になるのか。平安時代の元服や裳着みたいだ。
「レミはあと二ヶ月で十五歳になる。だから別の部署に配属されるか、佐々木兄のお兄ちゃんみたいに何かの材料になるために殺 されるかも知れない」
「人間が材料にされるのか、まるで、ナテスみたいだ」
「佐々木兄は読書家なんだな。いつも、教室では楽しそうに喋ってばかりだったのに」
「単なる本好きだ、スポーツも好きだけど」
江口くんこそ、いつも本を読んでいた。
「運が良かったらハラミコウジョウにまわされて終わる。余程の強運の持ち主じゃないと二十歳過ぎまで生き残れない」
「ハラミコウジョウって何だ? 」
「孕みって、そうか。分からないのか。妊娠して、子どもを生んで、その子をパーッパやアメリカ本土に売って組織に貢献する仕事だ。運が良ければ経済的に裕 福な家庭に買われて行って、養子縁組をするケースもある。でも、十九歳くらいにはたいてい死ぬ。二十歳まで生きることが出来たら幸運だと言われる」
二十歳。
二十歳前後がこの島の平均寿命なのか。信じられない数字だと思った。
「仔兎島にはハラミとは、まったく別の部署もあるのか? 」
孕みのことだったのか。
「金に換えるのか」
「そうだ、それ以外に使い方があるか? 運が良くて金もちに現金で買われる、本人の意思や希望は完全に無視をされる養子縁組。 男で体格がよくて健康で体力の強いやつなら労働力として生きることが出来る場合もありえるな。過酷な労働に耐えきれなくて死んだら、次は臓器売買業者に直に売り渡 す  」
「体力があるうちは泳いで逃げることも出来るんじゃないのか? 」
笑っている、江口くんに聞いた。
「それはない」
「どうして? 」
「労働力コースに行くことが決まったら、まず、仔兎から、思考能力を奪う」
「どうやって」
「それは、簡単さ」
「簡単?」
「薬漬けにするんだ」
短く江口くんがこたえた。
「薬で廃人にするのか」
「まあ、そんなところだ。佐々木兄は小学六年生にしては博識だな」
「本が好きなだけだ」
恐ろしい。
「怖い世界だな」
「お前には関係ないから、安心しろ」
思考能力を奪われ、ただ、死ぬまで生きるのか。
「やばい、薬は違法だ」
江口くんは、
「確かに禁止されている。日本国内ではな」
笑顔で言った。
「だって、まだ、日本の海の上だろ」
「法律が意味をもたない世界で佐々木兄弟は生きていくんだ。違法も合法も関係はない、世界だ」
怖い、と思った。
「びびる必要はない」
「そうなのか」
「ああ」
江口くんの、冷静な感じが俺をぞっとさせた。江口くんが、にっこりと笑ったから、俺はますます、ぞくぞくとしてしまった。
「あの島では人の命には一フランの価値もない、入れ物の身体にはいい値が 「換金か」
「ああ。今、むかっているのは、そんな島だ」
「何が一番価値を持っているんだ? 」
 俺が聞くと、江口くんは、
「守秘義務違反をするかしないか、だ」
「なるほどな」
俺はとんでもない世界に連れて行かれようとしている。
「薬漬けにした人間から、思考能力と気力を奪って飯を与えないで、過酷な労働をさせていると、逃げたい感情なんか真っ先に失うんだよ」
背筋が凍ってしまう気がした。
「こいつ、怖いな」
これは、しばらくおとなしくて従順なふりをして、様子を見る時間がいる。
「とりあえず、俺の当面の仕事はなんだ」
 今度は誰に何をされるのだろう。これから、この仔兎島で俺と竜馬の身にいつ、何が起こるのか。まったく、見当もつかない。
人間が人間扱いされない。
そんな、世 界に俺たちは連れて行かれるんだ。当たり前が通じない世界。
「何度も言うが仔兎と特権階級の佐々木兄弟では住む世界がまるで違う。仔兎島についたら立場が違う。アクセルさまとジルさまだ」
ますます、分からない。
「俺たちはお前よりも、偉いのか」
「ああ、偉いね。ただし」
ただし? ただし、なんだ?言葉の意味がよく、分からない。
「組織内限定だ」
「なるほどな。仔兎島から出ることが出来ないって言う点は俺たち佐々木兄弟と仔兎たちは同じって言うことだよな。それに偉いのはこの、仔兎島限定で、この島から 一歩出れば、アクセルさまとジルさまではない。小学六年生の佐々木陽馬と竜馬だ」
「さすが、佐々木兄だな。そのとおりだ」
意地でも、ここから逃げ出してやる。この、仔兎島から竜馬を連れて。そして、出来れば仔兎たちを全員連れてこの島から生きて逃げ切ってやる。 俺は、自分と死んだお兄ちゃんに誓いを立てた。
「とにかく、これから行く仔兎島は海に囲まれた無法地帯なんだな」
今はとにかく江口くんから、情報を集めている最中だ。俺に出来るベストを尽くす。
「佐々木弟と違って、佐々木兄の方は、随分と察しがいいんだな。多少のもめ事はあるから無法地帯ではない。歩く法律の御方が、一人いらっしゃる。日本の法制度などは じゃんけん以下だ」
「まとめ役がいるってことか」
「そうだ。まとめるのも俺たちの仕事だ。でも、俺たちはその、高貴な方のお気に召すようにまとめる必要がある」
「なるほどな」
仔兎島に足を踏み入れたら、俺はアクセルさまと呼ばれるのか。そして、脱出は困難だろう。
「俺の見る限りでは今は陸きなもめ事はない」
「そうなのか」
「仔兎の男どもは人数が少ない分、とても平和だ。でも、女はややこしい。今はレミがうまくやっているが、レミが引退したら、ステ イシーが次のリーダーになる。そうなると、少し、やっかいになるかも知れないな。ステイシーはレミとは違って自分が中心にいるためなら手段を 択ばない。ステイシーはそういう類の女だ」
「ややこしいな」
「でも、ステイシーも他の仔兎も、いつ死ぬか分からない。だから、陸した問題ではないだろう」
どんな、明日が竜馬と俺を待っているのか?
「仔兎たちは身体が資本だから栄養のバランスを考えた旨い飯が日に三回出る。汚い環境は病気の元だから毎日二時間かけて隅から隅まで徹底的に掃除機と雑巾を使って掃 除を行う」
「ふーん。当番制なのか。宿舎か学校の寮みたいだ」
「ここでは食事を作る以外、なんでもかんでも当番制だ。覚えていろ。サング・ブルーに当番は回ってこない、そこは安心していていい」
「分かった」
俺は唾を飲みこんだ。徹底的に管理されるようだ。でも、なぜか、俺と竜馬は比較的、楽に暮らせるようだ。
「洗濯もだ。大型洗濯機があるから洗濯機で洗濯をして終わったら、乾燥室に干す。乾燥機は二十四時間いつでも使える。だから、洗濯は苦にはならないだろう。それに、 自由な時間もある。洗濯も仔兎の当番がやる。アクセルとジルは洗濯して欲しい衣類をその日の当番の仔兎に渡すだけでいい。仔兎はお前たちから 見て、下っ端と思え」
「仔兎に自由な時間はあるのか? 」 
「ある、一日に一時間だけだが。入浴は毎日。風呂場の掃除も当番制だ。例えば下着とか必要な物は言えば揃えてもらえる。仔兎には贅沢品は手に入らないがお前と佐々木 兄弟は何でも手に入る。仔兎には勉強する時間はないが自由な時間に本が読みたいときは読書も出来る」
「仔兎島には図書館まであるのか」
「ない。食堂の隅に幾つか本棚があるだけだ。後は金持ちたちのセックスのお相手をするだけだ」
「竜馬とはいつ会える? 」
そう言った途端、俺は、かっくんと寝てしまった。 さっきのミネラルウォーターに睡眠薬が入っていたのかも知れない。
「やっと、効いたのか。おせーんだよ。ばーか」
 江口くんの声が聞こえてきた。それから、思い切り、俺は、江口くんに背中を蹴り飛ばされた。
痛いよ、ばーか。

「アクセルさま。起きて下さい」
江口くんにゆり起されて目が覚めた。朝だ。
「着いたのか」
「アクセルさま。おはようございます。この島が仔兎島です」
俺は、江口くん、今日からルネの指示透りに船から小島に降りた。
「ここが仔兎島なのか」
朝日が眩しくて眩みそうだな。結局、竜馬とはまだ会っていない。
「江口くん、おはよう」
「アクセルさま。江口勇気は今朝死にました。今日からは私のことは、ルネと呼んで下さい」
「わかった」
俺は周りを見渡して言った。
「本当になんもねえや」
何もないから、あの、白い神殿みたいな建物だけが目立っている。後は異国情緒溢れた建築物が四棟か五棟ある。
普通、当然あるはずのものが何もない島。そして、日本にはなかなかない、デザインの建築物が、幾つも立っている不思議な島だ。狭い面積の平地に作られ た、真っ白いピカピカの神殿。安っぽい結婚式場みたいだ。
不思議な建物が転々としている。どこを見わたしても、何の為の建物かまったく想像もつかない、ロココ調の建築物 ばかりだ。
白亜の神殿みたいなデザインではないのはヘリポートと車庫だけだ。
「この島にはヘリポートがあるのか」
「ございます」
島の外と繋がっているのは、船着き場とヘリポートだけのようだ。
車庫には、古い軽トラックが二台と、原動機付自転車が三台とまっている。
「アクセルさま、中心の建物の中には仔兎の泉があります。この島の建物は全て異国風のデザインの建築物です」
島の中心にある、明らかに浮いている建物。あれが、仔兎の泉と呼ばれるプールらしい。
「ふーん。変な感じだな」
「隣の平屋、あれが仔兎たちが寝起きする宿舎です。その右隣の建物が我々、組織の人間が使用する専用のエリアです」
建物はほとんどが異国情緒溢れた建物だった。
「この、ロココ調は、誰の趣味?」
「ドニさまのご趣味です」
「その、ドニさまはフランス人なのか。その人は男性なのか? 」
「男性です」
「何語で話せばいいのだろう」
「ドニさまは国籍はフランスですが、血統は日本人とのミックスですね。確か、日本人男性と結婚したひいおばあさまがフランス王家の末裔の 姫です」
「フランスは分からない」
「まあ、いいとしましょう。だから、日本贔屓で日本に短期留学に来る子どもが一族にはとても多いらしいです。確か、日本に幾つか別荘もあったはずですね。ドニさまも、ま だ、子どものころに日本で暮らしていた時期があってフランス語よりも日本語の方がお得意です」
「おばあちゃんがフランス王族の末裔の姫君って、まじかよ? 初めて聞く話と始めて見るものばかりだな」
「世が世なら、王子さまですよ」
本当は建物のデザインなんてどうでも良かった。
「ドニさまの日本名は、前田鉄平さまといいます」
「あははは。まえだてっぺいさまってか」
日本名があまりにも普通の名前過ぎてびっくりして笑った。
フランスに帰ると、古いお城に住んでいるって、江口くんは教えてくれた。
新しく辿り着いたこの環境に興味があるような印象を江口くんに与えつつ、どこかに逃げ道はないかと、俺は注意深く島全体を見渡していた。
同時に竜馬の影も探してい た。
「じゃあ、俺はアクセルで、竜馬はジルか。慣れるまで時間がかかりそうだ」
「すぐに、普通の日常になりますよ」
「慣れるまでに時間がいるかもな。特に竜馬は。俺たち、佐々木陽馬と竜馬で生きて来たから」
「すぐに、なれますよ。環境にも名前にもね」
ルネが笑顔で俺に言った。
ルネの言葉遣いが急に丁寧に変わっている。
昨日まで俺はこいつに蹴飛ばされていたのに。
今日から江口くんは ルネ。
俺たちは、俺がアクセルさまで竜馬がジルさまだ。
そして、立場は俺たち兄弟の方がルネよりもずっと 上の立場ということになるらしい。
「眩しいくらいに綺麗な建築物だな。それに、本でしか見たことがない。とても、日本の海域だとは思えない」
世紀を逆上って何処かの国にスリップしたようだ。
「アクセルさまは、鹿の園を知っていますか? 」
「シカノソノ? 何だ、それは? 」
ウサギだの、シカだの、色々と小動物が出てくるな。
「フランスの太陽王と呼ばれた王が、年若い少女だけを集めて作ったハーレムが鹿の園です。ここでは、さらってきた子どもは鹿ではなく、仔兎と呼んでいます。ここは知る人ぞ知る、小 児性愛者たちの究極の理想郷なんです」
ルネが説明してくれた。
「し、しょー?」
「小児性愛者。ペドフィルと言うやつです」
「ああ、ペドフィルの人口が多いと何かで読んだことがある」
「多いと思います」
ルネが頷いた。
「ただの、変態の集まる島としか、思えないけどな」
「この組織は組織ぐるみで幼い子どもを拉致している」
誰かが話しているのを聞いたが、ルネは組織の幹部候補生らしい。
「手っ取り早く金になる。我が子を売る親も存在する。子どもたちを飼育して、好き勝手に拷問を加える」
子どもが親の勝手な欲望の犠牲になるのか。
「世界中の要人、あるいはその手下どもが子どもの啼き声以外を金に変えてとことんしゃぶり尽くす」
「ここは変態の温床って訳か。腐っているな」
俺は呟いた。ルネは聞こえているはずだけど、聞き流しているようだ。
「一番は、環境に慣れることです」
ルネが笑った。
「環境に慣れる、か、一理あるな」
「順応性は高いように見えますが、違いますか」
「当たっていると思う」
「ペドフィルは、以前からご存じでしたか」
ルネに聞かれたので、
「たまに、テレビの特集番組やニュース番組で見る程度かな。その手の事件が最近の日本でも増えているから」
俺は答えた。
「そのようですね」
「あの白い建物の中に、仔兎たちがいると言う訳か。あれ?  」
「どうかしましたか? 」
「そういえば、竜馬は? 」
「ジルさまとはじきに会えますよ。ちなみに、亡くなったお兄さまは、貴重な資源になるために、先程、別の専用の島に船で移動しました」
「資源か」
「そうです、資源です」
ルネに簡単に返事をされて、悲しい気持ちよりも俺はポカーンと口を開けてしまった。
「おーい。ルネ。戻ってきたのか」
四十歳前後の体格のいい男性がこっちにやって来た。
「お父さん」
この人が、ルネの親父さんなのか。
「初めまして、アクセルさまですね、私がルネの父親のジャンと申します」  
そうだ、お父さんの名前は確か、ジャンさんだ。
「ルネくんのクラスメイトだった佐々木陽馬です。今日からはアクセルと言う名前になるみたいです。この島のどこかに双子の弟がいて 弟はジルと呼ばれるようです」
俺はオドオドとしながら、ジャンさんに挨拶をした。
「息子ともども、以後、宜しくお願いいたします。アクセルさま」
ルネのお父さんにも、さまをつけて呼ばれている。
この、仔兎島での俺と竜馬の立場はいったいどうなっているのか。
これが、いわゆる、サング・ブルーに対する接し方なの か。
俺も、竜馬も日本の一般的な家庭に育った、平均的な小学生だ。
サング・ブルーという言葉は聞いたことはあるような気がするが、俺と竜馬のどこがサング・ブルーになる のか見当もつかない。
サング・ブルーとは何を意味しているのだろうと不思議だったけど、王族の血が関係しているのも知れない。④終

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