人を傷つけた話
先週、知り合いらと計5人で飲みに行った。
そのうち1組は夫婦。
いつもはお互いの近況を話したり、酔っ払って真剣な話をしたり、まあ居酒屋でよく聞く話だ。
だけれど、今回は1組の夫婦を傷つけてしまった。
居酒屋にみんな集合すると、それぞれにビールやら何やらをざっと頼み、夫婦の嫁は車の運転があるからウーロン茶。
揃ったところで、乾杯。
お酒もメシもちょっとずつ進み、他愛もない会話の流れが切れたところで、僕が何の気なしに「あんたの子ども生まれるのが楽しみやわ〜笑」とある夫婦の嫁さんに、僕はワクワクした顔で言った。
すると、
「すぐにはできない人もいるんだって。」と返ってきた。
僕はその場でなにも言えず黙り込み、ふわっとした空気のまま会話は別の方向へ。
まともに顔をあげることができなかった自分の料理と酒が、どんどん減っていく。
不妊治療をしている人と会ったことがあり、その想像もできない不安感や辛さを、頭の中でイメージしたことはある。
そして、何より悪気はなかった — 。
この「悪気はなかった」って言葉が自分の中にスーッと浮かんできた時、自分は本当に自分のことしか考えられない人間なんだなと気づいた。責めた。
少々大袈裟かもしれないけど「殺す気はなかった」と証言する殺人犯と、あまり変わらない。
そして、「悪気はない」と思ってた自分は、彼女に謝れなかった。
当然、妊娠しないことは別に失敗でもなんでもないので、「うちのお母さんは6年間子どもができなかったらしいよ」と比較して励ますこともおかしい。普通に、お母さんにも失礼だし。
言葉が見つからなかった。
飲み会から数日経ち、別件で彼女とラインをした。
その中で「今度の飲み会後の送迎は私がするよ」となり、「タクシーでいいんじゃない?お前も飲めばいいやん?せっかくやし」と僕が言うと、
「まぁでも子供のこと考えてるから、いま控えてるの(笑)だから、この前も飲まなかった。」
自分は他になにも言わず「りょーかいー」とだけ返した。
ただ、「いま控えてるの(笑)」って文字列を見ていて、悲痛だった。
本人にとって、きっと笑えないはずなのに。
少し時間がたったいま、彼女と連絡はとっていない。
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