わたしはブタです。

わたしはブタと呼ばれています。

わたしは泥を浴びます。
わたしが泥を浴びると、一部の人が笑います。
わたしは泥を美しいと思います。
泥の中には地熱を帯びたぬくもりがあります。

わたしは子をたくさん産みます。
わたしの子は富の象徴であるとされます。

わたしは権力者の象徴とされます。
ぶくぶくと肥えて太った権力者は
しばしばブタと呼ばれます。

わたしは卑しいものとされます。
わたしはガツガツ喰らうそうです。

わたしの住居は
散らかった部屋や狭い部屋の例えになります。

「ブタ」そのものが悪口になります。
そのときはわたしの特徴ではなく、
わたしの存在そのものが、
否定的に肯(が)えんずられます。

わたしのからだには、毛が生えています。
ブラシにされる毛もあれば、
筆にされる毛もあります。
わたしの身体にさわったことがあるでしょうか?

わたしの肉はお好きですか。
わたしを食べことはありますか。
まだ、食べたことがないならば、
どうぞ食べてみてください。

わたしの匂いをかいでください。
わたしの身体からは
どんな匂いがいたしますか。
土ですか、
藁ですか、
泥ですか、
それとも、
獣(けだもの)の匂いがいたしますか。

最後にお願いがあります。
大切なお願いです。
わたしの名前を呼んでください。
ただ一度、わたしの名前を呼んでください。

わたしはブタと呼ばれています。

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