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「自分の魅力に自覚的な小悪魔キャラに価値観を揺さぶられて、狂わされてしまう真面目キャラ」が好き。

「自分の魅力を理解している小悪魔キャラが、真面目キャラを揺さぶっておかしくする話」が好きだ。
「月曜日のたわわ」の最初のほうのアイちゃんは良かった。

(引用元:「月曜日のたわわ」1巻 比村奇石 講談社)

「たわわ」は男向けで魅力を性的な側面(特に胸)に極フリしているため、女性から見ると「ありえない」と思うのはわかる。
 ただ「心理的物理的安全が絶対に確保されている状況で、女性キャラの魅力に男が揺さぶられる」のは女性向けでも……というより女性向けのほうがよく見るシチュエーションだ。
 女性向けだとヒロインは自らの魅力に気付いておらず、相手役の男が勝手に揺さぶられる状況が多い。
 それはそれでいいのだが、女性向けでも「自分の魅力を自覚的に振るうパターン」がもう少し描かれてもいいと思う。

 先日読んだ懐かしラノベ「変化草子」は、自分のことを好き好き追いかけ回してくる男キャラに対する自分の魅力に自覚的、しかも最終的にはその相手を振って自分が気になる男を追いかけることを選択するところが良かった。

*ほんと面白かった。

というように「小悪魔キャラが真面目キャラを揺さぶる展開」、とりわけ「自分の魅力に自覚的な小悪魔キャラに今までの価値観を揺さぶられて、おかしくなってしまう真面目キャラ」が大好きだ。
 そんな真面目キャラの中で一番好きなのが「ブラッドボーン」のローゲリウスだ。

「ブラッドボーン」未プレイのかたのためにざっくり説明すると、ローゲリウスは「処刑隊」と呼ばれる「穢れた血族を狩るための部隊」を指揮する司祭(?)だった。
「穢れた血族」の本拠地であるカインハーストまで攻め込んだものの、血族の長アンナリーゼを狩ることは出来ず、他の人間たちに「穢れた秘密」を幻視させないために自ら「幻視の王冠」を被り、アンナリーゼの玉座に続く入口を守っている。

 ローゲリウスがアンナリーゼをどう思っていたが、なぜあの場所で幻視の王冠を被っていたかは諸説あるが、

どうだ、売女めが!
如何にお前が不死だとて、このままずっと生きるのなら、何ものも誑かせないだろう!

見てください!あなたのお蔭で、遂に私はやりましたよ!
どうです!素晴らしいでしょう!これで師を、列聖の殉教者として祀れます!

弟子であるアルフレートのセリフを見ると、ローゲリウスはアンナリーゼの魅力に囚われてしまった線が濃厚だと思う。

 故にローゲリウスは自らこれを被った。
 もはや誰一人、穢れた秘密に触れぬように。

(幻視の王冠)

「幻視の王冠」を被った過程を見ても、他の人間が秘密に触れないようにするために、幻視の王冠を被る必要はない。壊すか隠すか、手放さず持っていればいい。
 クソ真面目に信仰一筋で生きてきたローゲリウスは、狩る対象であるはずのアンナリーゼに恋をしてしまい、その葛藤と矛盾の果てに「幻視の王冠」を自分で被るという結果に至った。
と考えるのが妥当かなと思う。

 自分がローゲリウスが好きなのは、聞いた人間の十人中十人が即座にツッコミを入れそうな、バレバレの建前を守ろうとしたところだ。
「幻視の王冠」のテキストに書かれていた経緯が、「アンナリーゼの魅力に負けて被りました」だったらほとんど興味はわかなかったと思う。

 今までずっと持っていた、人生そのものみたいな信仰を心が裏切ってもなお「自分は他の人間がこれを被らないために被ったのだ」と言い、これまでの人生の全てを裏切りかねないほど強烈に惹かれるものを「穢れている」と言い張る。
「自分は穢れた秘密を封じるために王冠をかぶったのだ」
「アンネリーゼを、自分だけが見るためにかぶったのだ」
 どちらがローゲリウスの本音でどちらが建前なのか、一体どちらの理由で殉教したのか。

 殉教者ローゲリウスは言った。
「善悪と賢愚は、何の関係もありません。だから我々だけは、ただ善くあるべきなのです」

 幻視の王冠を被りアンナリーゼのそばにずっといたところを見ても、ローゲリウスは本来は情熱家なのだと思う。
 ローゲリウス自身は自分がそんなに情熱を持っているとは思っていなかった。理性的な「善くあるべき」という言葉を信じて心を抑え、その言葉の下に眠っている自分を、見ないように感じないようにして生きてきた。
 それがアンナリーゼに会ったとたん、初めて自分の中にすさまじい情熱(肉欲を含めて)を思い知らされた。その衝動と自分の人生そのものである信仰の整合性を取るためには、幻視の王冠を被るしかなかった。

 他に選択しようのないギリギリの地点で自分を何とか成り立たせて、それでも自分の存在を根底から揺らがされても「揺らがされた」とは認めず、「自分は自分の信仰のために、自ら選んで王冠を被ったのだ」と言う。   
 それがさほど強がりに見えないところがローゲリウスの大きな魅力だ。
「縛られている女が一番エロい」を体現したような人物だ。(ダウンした時に見える足も妙に色っぽい←考えすぎ)

「ダークソウル3」のサリヴァーンとエルドリッチの関係も、ローゲリウスとアンナリーゼの関係に近いのではと思っている。
 サリヴァーンがエルドリッチを閉じ込めて人喰らい神喰らいをさせていたと思うと、倒錯しすぎていてゾクゾクする。
 エルドリッチのカリスマが、サリヴァーンを狂わせたと思うのだ。

 神父が娼婦(悪魔)を救済する話は好きではない(穏当な表現)が、救済しようとした神父が逆に弄ばれるシチュは大好きだ。
 何かそういう話があったような気がするが……思い出せない。

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