WCAG 2.0をWCAG 2.0に適合させよう

◯ WCAG 2.0は素晴らしい資料
◯ だけど… 読みにくい
◯ だから… 簡単な文章で書き直そう

WCAG 2.0は素晴らしい資料

ウェブページのアクセシビリティ対策といえば、なにはともあれ「ウェブ・コンテンツ・アクセシビリティ・ガイドライン」(WCAG 2.0)を読んで趣旨を理解することからはじまる。

WCAG 2.0はW3Cチームの長年の知見が詰まった資料集であり、関連資料の「WCAG 2.0 達成方法集」、「WCAG 2.0 クイックリファレンス」の豊富な事例と合わせれば、大抵のウェブコンテンツをさまざまな障がい者にとってアクセシブルにする方法を知ることができる。

WCAG 2.0は、普段は気づくことが難しい障がい者の状況に対応するための事例をも紹介されている。ユーザーインターフェース、ユニバーサルデザイン、バリアフリーやアクセシビリティの勉強をする人は必読の資料だ。事例や対処方法は豊富で、ほとんどのウェブ制作現場で十二分に役立つだろう。

WCAG 2.0は読みにくい

2つの例をとる。

ガイドライン 2.1.1 キーボード: コンテンツのすべての機能は、個々のキーストロークに特定のタイミングを要することなく、キーボードインタフェースを通じて操作可能である。ただし、その根本的な機能が利用者の動作による始点から終点まで続く一連の軌跡に依存して実現されている場合は除く。 (レベル A)

落ち着いて読めば意味はわかる。しかしこの面倒な日本語文を読んで理解が捗るとは言い難い。

簡単にすると次のようなことだ。

・全ての機能をキーボードで操作できるようにしなさい
・キーを押すタイミングで操作結果が変わるのはダメ
・そもそもマウスの動きやタブレット上の指の動き方での操作が必須なら例外でいいよ

題名がキーボードなので、キーボードのことだと思って読んでいると、突然、「軌跡」という単語に出くわす。つまりマウスやタブレットの話が出て来る。キーボードのことだと思って読んでいるのに、突然「軌跡」が出てくると「はてな?」となる。

トラックボールやポインティング・スティックも含めて「軌跡を描く操作方法」という別項目をつくればわかり易くなるのではないだろうか。

適合 適合要件 
1. 適合レベル 
注記 1: ウェブページは、記載したレベルでのみ WCAG 2.0 に適合できるが、コンテンツ制作者は、その適合レベルよりも高いレベルの達成基準の達成状況を (表明の中で) 示すことを推奨される。
注記 2: コンテンツの中には、レベル AAA 達成基準のすべてを満たすことのできないものもあるため、サイト全体の一般的な方針としてレベル AAA での適合を要件とすることは推奨されない。
4. 技術のアクセシビリティ サポーテッドな使用方法だけ: 達成基準を満たすために、用いる技術のアクセシビリティ サポーテッドな使用方法だけに依存している。アクセシビリティ サポーテッドではない方法で提供されている情報又は機能は、アクセシビリティ サポーテッドな方法でも利用できる。

「1. 適合レベル」は、簡単にすると次のようなことだ。

・適合したいレベル(A、AA、AAA)に則した対処をすれば、適合したいレベルに適合しますよ(それは当たり前だ)
・できるなら、もっと上のレベルに対応するようガンバろうぜ!
・サイトの全部のコンテンツがレベルAAAを達成するとレベルAAAに適合できる。しかし、レベルAAAにできないコンテンツがあるので、そもそもレベルAAAは狙わない方がいいよ

「達成状況を(表明の中で)示す」に(表明の中で)を含める意味はないだろう。達成しなくとも表明すれば良いというのなら話は別だが…(そんなわけはない)。

「4. 技術のアクセシビリティサポーテッドな使用方法だけ」は斜め読み、黙読、音読、どうやっても理解が難しい。(私は最初読んだとき即座に読み飛ばした)

・標準的なアクセシビリティ機能が対応している技術だけを使いなさい
・独自のアクセシビリティ技術を使うときは、標準的なアクセシビリティ機能が解釈できるようにしなさい

簡単に言えばこういうことだ。難しいことではないのだが、原文、訳文は難解だ。(英文を読むとこの翻訳になった理由を察するが…)

このように、WCAG 2.0はとても読みにくい文章で構成されている。

WCAG 2.0には次の項目がある。

3.1.5 読解レベル: 固有名詞や題名を取り除いた状態で、テキストが前期中等教育レベルを超えた読解力を必要とする場合は、補足コンテンツ又は前期中等教育レベルを超えた読解力を必要としない版が利用できる。 (レベル AAA)

「前期中等教育レベルを超える」とは中学卒のこと。もしも本文が難しい場合は平易な文で書かれた代替コンテンツがあるべき。そして代替コンテンツは義務教育を修了したレベルの読解力で読めるようにしなさいといっている。

ところが残念なことにWCAG 2.0はWCAG 2.0 ガイドライン3.5.1に適合していない。

WCAG 2.0を簡単な文章で書き直そう

最近はインクルーシブデザインといって、障がい者本人がコンテンツの制作に参加して、その意見を取り入れようという動きがでてきた。しかし文章を音声で聴いて理解する視覚障がい者が参加したとき、WCAG 2.0の文の理解・把握に時間を取られては本末転倒ではないだろうか?

小学校でプログラミングが必修となる。
障がい者への配慮を道徳で学ぶのと同じように、幼い頃から障がい者への配慮を知ったエンジニアが育つことに期待したい。そのためにも教本となる資料は日本語で読みやすく、理解しやすいものであるべきだ。

21世紀になった。
Google翻訳などで変換される程度のことは「直訳」の類といっていい。現代の「翻訳」とは、外国語を日本語の語調で美しく、ストンと腑に落ちる文へと編集することだ。

WCAG 2.0を日本語に書き直す作業をはじめた。
どの程度の文になるか分からないが、できるだけ初見で理解できる内容を目指している。翻訳の途中の様子などもnoteに掲載してゆこうと考えている。




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S.H.SAJI

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