マイナ保険証について その3 オンライン資格確認の現在

以前書いた、

マイナ保険証について その1 健康保険のしくみ、知ってますか?
マイナ保険証について その2 マイナ保険証でコスト削減?

に続いて、2023年4月にオンライン資格確認が原則義務化され、1年が経過しようとしているので、現状について書いてみます。

詳しくはその1、2を読んでいただくとして、ざっとおさらいをすると。

健康保険の仕組み

健康保険の仕組み


国民医療費とは

令和4年度の国民医療費の概要は?

○ 令和4年度の概算医療費は46.0兆円、対前年同期比で4.0%の増加、対令和元年度比で5.5%の増加。 なお、対令和元年度比の5.5%の増加は3年分の伸び率であり、1年当たりに換算すると1.8%の増加。

国民医療費に含まれるものは何ですか?

「国民医療費」は、当該年度内の医療機関等における保険診療の対象となり得る傷病の治療に要した費用を推計したものである。 この費用には、医科診療や歯科診療にかかる診療費、薬局調剤医療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費等が含まれる。
国民一人当たり、毎日約1,000円も掛かっているのです。すごいですよね。

ちなみにしばしば話題にあがる、防衛費ですが、年間6兆円程度です。それに比べるとものすごい金額ということがわかりますね。

国民医療費の負担構造

オンライン資格確認とは? 保険資格をオンラインで確認するシステム

資格確認とは保険資格の有効/無効を確認すること
有効→定められた負担割合で受診できる
無効→転職、転居等で次の保険資格が登録されていない場合、暫定的に10割負担し後日7割を医療機関から返金される

従来のシステムの問題点
顔写真もない保険証では本人であるという前提で保険医療が進んでいた→無駄なコスト

レセプトの電子化以前のコストは年間1,000億円もかかっていた

マイナ保険証になると何が変わる? 

受付ではその場で顔認証もしくは暗証番号により本人確認が完了し、薬剤情報、特定健診情報(メタボ検診)の同意/非同意選択 高額療養費制度での限度額申請などの同意が出来る(以前は書面にて申請、場合によっては一旦立替払をして後日返金されていた)

返戻の減少=コスト削減

返戻とは? 資格喪失後の受診、保険情報の転記ミスにより審査支払機関からレセプト(診療報酬明細書)が医療機関に差し戻されるもの 要は請求書が突っ返される→無駄な事務コストが発生。
上記以外に、保険診療のルールに則らない処置をした場合や、算定要件を満たしていない処置に関して訂正、取下げ等を求められるケースもあります。

マイナ保険証によるコスト削減の試算

これはマイナ保険証を使った場合であくまで発行コストだけの試算。保険証発行に関わる人件費削減については加味されていないと思われるので実際はもっと大きくなると思われる。

マイナ保険証利用率

厚労省は毎月マイナ保険証の利用率を発表しています。

この利用率とは、マイナ受付=医療機関のカードリーダーでマイナ保険証で受付処理をした割合です。

マイナ受付数/オンライン資格確認総件数で表されています。

現在、オンライン資格確認はマイナ保険証と従来の保険証両方で行われています。それ以外は従来通り、保険証の券面の目視確認のみとなります。

現在、全国の医療機関の9割が義務化によりオンライン資格確認の導入が完了していますが、カードリーダーを日常的に使っている施設はまだ少ない結果、この5.47%(R6/3)の利用率となっています。
しかし、保険証でオンライン資格確認は75%(R5/6のレセプト件数、2.46億件としてR6/3のオン資1.84億件から算出)も行われているのです。医療機関が切望していた「受付時に資格確認ができる」わけですから当たり前と言えば、当たり前です。

マイナ受付がなぜ進まないか?の考察

保険証廃止 

R6/12に保険証の新規発行(社保、国保)更新(国保)が廃止になります。それ以降も有効な保険証ならばR7/12まで利用出来ます。

R6/12以降に転職、転居した場合、マイナ保険証にしていない人には資格確認書が発行され、それで保険診療を受けることができます。有効期限は5年とされていますが、転職、転居のたびに従来の保険証同様、再発行の手続きが必要になります。

今現在、マイナ受付率が低い中、本当に12月に廃止して大丈夫か?あるいは現在マイナ受付が低いのは国民に支持されていないからではないか?という意見があります。

現在うち(無床診療所)ではオンライン資格確認導入後1年経過しまし、マイナ受付率は昨年の10月で6割、11月も5割を超えています。なぜ平均で5%台なのにこんなに多いのかというと、それは啓蒙とサポートによるものだと思います。声がけは勿論、必要ならば自分のマイナンバーカードでデモをすると大抵「次回から使います」となります。

当院のマイナ受付率

参考までに当院でのマイナ受付オペレーションはこんな感じです。

今、町の中を見渡すとスーパーやコンビニで無人レジが、ファーストフード店ではタッチパネルやタブレット注文、ファミリーレストランでは配膳ロボットが
なぜ高価なこれらの機器を導入するのか?は言わずもがな「人手不足」だからですよね。医療に限らず全てのDXは「人手不足解消」の側面が大きいでしょう。でもあなたは初めて使うこれらの機器、すぐに使えましたか?だからカードリーダーをどんと置いたまま、何もサポートしなければ「出せば終わり」の保険証が使われるでしょう。

医療機関側もオンライン資格確認のありがたみはわかるけど、何十年も続いていた
保険証の券面確認に加え、新たにカードリーダー操作もやらなくては大変と思う気持ちもわかりますが、マイナ受付による省力化はやってみればわかると思います。

うちはこの様にやっています。

2024/04/23 06:20



今後の展望

保険証廃止
資格確認書
医療扶助(生活保護)、医療券





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