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【広辞苑でエッセイ】工船

『工船』
漁獲物をただちに擂り身・冷凍魚・魚粉などに加工する設備をそなえた船。(991頁)


小林多喜二の小説『蟹工船』では、従業員たちがこれでもかというほど船に詰められ、過酷な労働を強いられていた。初めて読んだのは中学生の頃であったが、衝撃を受けて内容が頭に入ってこなかった記憶がある。

先日、ポートメッセなごやにてSKE48と欅坂46の握手会が行われた。ポートメッセなごやに行くためには「あおなみ線」という路線を使うのだが、この車両が実に短い。本数もそれほど多くない。こうなると、電車内は満員電車以上に地獄のような光景になるのである。「ヲタク工船」と表現している人がいたが、まさにその通りだ。

その対策として、あおなみ線は臨時電車を走らせ本数を増やしたらしい。わざわざ本数を増やさずとも「ヲタク工船」を走らせれば利益も出そうに思えるが、あおなみ線はそうしなかった。あおなみ線の気遣いが見える話だ。

『蟹工船』では、労働者たちがストライキを起こした。約90年経った現在「ヲタク工船」にするまいと自ら動いてくれる人がいる優しい世界が、垣間見えている。

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2019年9月24日(火)

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