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フェーズによって必要な発想、スキル、行動は違う

組織・チームの中で話をしている時に話が噛み合わないとか、こちらが言っていることが相手に伝わらないし、相手が言っていることがいまいち理解できない、みたいなことってあるじゃないですか。議論が一向に収束しない、みたいな。

細谷功さんの「無理の構造」に書かれたたことがとってもしっくり来たので紹介します。


その前に「成長のS字曲線」ってあるじゃないですか。

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これを何らかの事業に当てはめるなら

黎明期: 創業メンバーがアイディア出しながらあれこれ試行錯誤する。

成長期: アイディアがマーケットフィットし「当たった」状態。

成熟期: 市場が拡大しなくなる。事業としては「成長期ほどがむしゃらに頑張らなくても収益を上げる仕組み」が出来上がる(はず)

衰退期: 市場が縮小していく。事業としては人・組織は大きくなったがそれに見合う収益が上がらないので困る。

...というのが私の解釈。もっとちがう切り口もいっぱいあると思います。

「成長のS字曲線」を頭に置いてもらった上で、無理の構造の「第10章 上流と下流の法則」の話をします。


川の流れに例える

この章では、社会や組織の成長の過程を川の流れに例えています。

上流の岩: 大きく、尖っていて、形がみんな違う
下流の砂: 小粒で、丸くて、同じ形をしている

うん、なるほど。

水源から海に到達するまでを人生?と例えたときに、自分が今どこにいるのかによって環境・状況は変わる、みたいなイメージはしやすいと思います。そして、先に挙げた成長のS字曲線において、「左が上流、右が下流」にあたります。(ここでの上流下流は「上流がレベルが高くて、下流がレベルが低い」という意味ではありません)

世界の違い

この「上流」と「下流」という世界の違いについて本書では

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という表現がされています。

このあたりはイメージしやすいのではないでしょうか。スタートアップ企業で過ごす毎日と、伝統的大企業で過ごす毎日は世界が違いますよね、きっと。「何を大事にするのか」も違うと思います。

特徴の違い

続いて、上流と下流の特徴について。

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上流(黎明期)では「何が正しいのか」もわかっていません。一見突拍子もないような意見が大事かもしれません。本書では「大物でアクが強く、個性的な方がいい」という表現がされています。このところのトレンドである「不確実性が高いので小さく始めて小さく失敗して改善して次のトライをする」というような動きは「少人数で、非分業で、フラットな関係で」行うほうが適しているでしょう。

下流ではこれが変わっていきます。事業でいえばある程度の数の顧客がいて、それを効率よく対応してくこと、なるべく無駄をなくしていくことが良しとされます。顧客ごとの個別対応よりも、どの顧客にも同じように対応できるような仕組みにしておいたほうが対応コストは抑えられます。平均化、多量、分業とかがこれにあたります。

このようにフェーズによって何が大事なのかが変わってきます。そうすると当然そこにいる人に求められるスキルや人材像も変わってきます。

必要なことの違い

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上流は「問題の発見・定義」が求められます。これを「変数を決めること」と表現しています。「顕在化していない課題を見つけ、その解決を価値につなげる」みたいなことでしょうか。一方下流は「定まった変数を最適化する=問題解決」が大事になります。

私としては「挑戦↔安定」とか「理想の追求↔現実への妥協」というのが「なるほどそうだよな」って思いました。上流と下流では要求される価値観もスキルも正反対。特性が異なる。ってことですね。

(上流 ↔ 下流)
個人の個性 ↔ 組織の規律
個人技 ↔ 仕組み化
理想 ↔ 現実
フラットな関係 ↔ 階層関係

これらの特性って正反対じゃないですか。

例えばあなたが属する組織が成熟期にいるとして、おそらくそこには「黎明期」を経てきた創業メンバーがいて、一方で成長期~成熟期に入社したメンバーもいるとします。きっと人数比率で言えば後者のほうが圧倒的に多い。だけど権力は前者の方が大きい。そして当然この両者は特性が違います。大事にしているものが違うのです。

(話をわかりやすくするためのデフォルメ話ですが) 創業メンバーは成熟期のメンバーをみて「個性がない」とか「守りに入ってる」とか思うかもしれないし、成熟期のメンバーは「会社の上の人は現実に合ってない変なことばっかり言ってる」みたいな対立があるかもしれません。

冒頭の「議論が噛み合わない」ことの原因として、「対象の議論が上流と下流のどちらの話をしているのか」と「自分が、相手が、どこにいるのか」をお互い把握していないことが、不毛な議論に繋がっているのでは?という話でした。

実際にありそうな事案

成熟期の会社が「新規事業を立ち上げよう」という話はいくらでもあると思います。現時点で「安定して収益をあげられる事業が存在する」状態だけどその事業をずっと続けても衰退期に入っていくから「新たな事業を黎明期から始める」ことをしないと存続できない、って。

ここで編成される「新規事業を立ち上げようチーム」のメンバーについて、当然のように「優秀な人」がアサインされるわけです。でも、ここまでの話を元に考えると、成熟期の会社では「個人技よりも仕組み化が得意」な人が「優秀な人」とされるわけです。その人たちを集めて「新たな事業を黎明期から立ち上げよう」としてもダメですよね。(黎明期では仕組み化より個人技のほうが重要だから)

仮にそうなった場合「これまで自分が得意だったこと、大事にしていたこととは反対のことを優先しなければならない」という事態になるわけで、この折り合いを自分の中で付けられることが大事ね。(大げさにいうと、自分の正義が正義じゃなくなったときに、他にも正義があるんだなって思えるかどうか...難しいですよね)


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