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お皿の真ん中にドーバー海峡を見る朝ご飯

ヨーロッパ大陸。主にフランス、イタリア、スペインといったラテン系の国々と、海を挟んだグレイトブリテン。
朝の食事のありようがまるで異なる。
コンチネンタルと呼ばれる朝食は、パンにコーヒー、それにせいぜいハムやチーズといった厨房を動かさなくても作れるパンのお供程度で軽くすませる。
そもそも夜が遅い生活習慣。飲んで食べて気づけば夜中。ベッドに入ったときにはほぼ満腹で、朝のお腹がすいてない。パンもお腹に入らぬこともあったりもして、カフェオレにしてもカフェラテにしてもたっぷりのミルクをお腹に入れて昼までの当座を凌ぐ…、という生活の知恵。

Breakfastとは、Fast(断食)をBreak(やぶる)するというのが語源の英国の人たちの夜は質素です。
肉のローストやスープを飲んで早く寝なくちゃ、朝早起きができないわけで代わりにたっぷり朝食をとる。そして働き、その働きを途切れささぬようにとサンドイッチをつまんで夜まで我慢する。
だから英国の朝食は世界でもっとも贅沢で、ボリュームたっぷりの食事だと言われる。
ちなみにフランス語で朝食はプチデジュネ。デジュネは昼食。だから「小さな昼食」とでも訳しましょうか…、つまり付け足し。あってもなくてもいいものでしょう。

さてこの朝食はコンチネンタルなんだろうか…、それとも英国式になるんだろうかといささか迷う朝食に今日は出会った。
東京駅のステーションホテルの一階ラウンジの朝食で、決してそう企んだわけではないのだろうと思う。ラウンジの小さな厨房で作れるものを揃えてみたら、コンチネンタルに英国的な要素が加わる不思議な朝食が出来上がったんだと思う。

朝のお供にアールグレイを選んだ。
ベルガモットの香りと渋み、熱さで寝ぼけたお腹を目覚ます。
それに続いてオーガニックのニンジンとりんごのジュース、ヨーグルト。
本格的にお腹が動く。そしてメインのプレイト到着。

四角い大きなお皿の左と右で少々様相が違って見える。
左側にはスライスオニオンをベッドにしたスモークサーモン、生ハム、モルタデッラにミラノ風のソーセージ。
ピクルス、グリーンオリーブがあしらわれていて、それはまさにコンチネンタルブレックファストのパンのお供の代表格。
ゆで卵がそのままでなく、細かく刻んでサワークリームやチャイブと一緒にソースになっていたらスモークサーモンのよき相棒になっていたはず。右側の手前にクロワッサンが一個置かれてそれがコンチネンタル色を一層強める。

…、なのだけど。
その奥手にはトーストブレッドで作ったサンドイッチにサラダが控える。
このトーストが薄くてサクサクしていてなんとも英国風。
しかも中にはスクランブルエッグとグリルドハム。
このハムが豚の脂がしっかりついた白ハムで、手に取り口に近づけると肉の香りにクラクラするよう。
英国仕立ての朝食を手づかみできるようにした…、って感じの一品。
つまりお皿の真ん中を境目に右が英国、左がフランス。皿の真ん中がドーバー海峡みたいなひと皿(笑)。
たのしく食べた…、ひさしぶりに英国のメルバトーストを食べてみたくなりました。

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