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働く人がシアワセになる飲食店って…。

銀座、数寄屋橋交差点の角地にある銀座プラザという商業施設。
インバウンド向けに大型免税店をメインテナントにして、鳴り物入りではあったけど結果はいささか残念なよう。
テナントの数軒を除いてみんな苦労をしているようです。
少ない勝ち組の中の一軒にシティベーカリーというお店があって、合理的だけど手間を省かぬ料理をたのしむことができるのがオキニイリの場所。

ところで、ニューヨークから来た人たちが、東京のシティベイカリーは安いと言ってビックリしてた。
日本の基準では決して安くはない値段。
それでも安いと感じるということは、いかに日本の飲食店の価格競争が熾烈かということ。
かつて海外から日本にやってくる飲食店は現地の値段より格段に高い価格をつけるもの…、だったものです。現地に行くと、やっぱり日本でふんだくられてたのかなんて思って、それが海外旅行に行く楽しみの1つにもなっていた。

でも今や日本は世界有数の外食コストの低い国になった。
例えばラーメン一杯が5ドル以下なんて国がそのラーメンを生み出した食の先進国を自認する国って、すごく滑稽。
東南アジアの、明らかに国力、経済力が日本に比べて劣る国からやってきて、日本のラーメンって安くて旨いなんて言われて喜ぶ日本ってもっと滑稽。本当の商売は「旨くてたのしくて、だから安く感じた」コトを目指すべきで、安く旨いと言われることは完全に負け。なんでこんなコトが起きたんだろう。

はじまりはライバルを潰してしまえと、消耗戦に必要な資金をたっぷり調達した人たちが安く売りはじめたこと。
「売られた喧嘩を買うコト」をビジネスルールと勘違いした人たちがそれを上回る安売りをしてあれよあれよと言う間に価格が下がる。
会社同士の戦いの武器「安売り」があからさまになるのを恐れた彼らが「消費者のための価格破壊」と呼びかえて大きな声でいうものだから、正直者の中小飲食店までが安くしなくちゃお客様のご機嫌損なうことになる…、と転がるように業界全体が安売り合戦の渦の中に飲み込まれてく。それが今から10年近くも前のこと。
果たして誰がこれで幸せになるんだろう…、って冷静に考えると、塵も積もれば薄利も山となる規模を持ったチェーンストアだけだってすっかり気づきはしたけれど、値上げするのが怖くてみんな値段を下げたまま。正直者が損をするかなり深刻な状態で、最低賃金が法律で決められているように最低販売価格を商品別に法制化するとか、飲食店一斉に値上げをなさい的な法律を作るかしないと多分、日本の飲食業は早晩、疲弊してしまう。

そんな法律を作ったところで、手を変え品変え法の隙間をついて安売りをしかける輩は出てくるだろうし、もし飲食業無くなってもコンビニがあればいいじゃん…、って人もいるかもしれない。そんな日本が今の日本。

もし飲食店をやるとしたらどういう飲食店をしたいですか?と聞かれるコトがままあるけれど、大抵お茶を濁して答えない。
売るものはなんでもいい。
場所もどこでもよくて、ただただ原価率が10%代で40%を人件費として払え、宣伝する必要もなくお客様が永続的にやってきて、お店の人が彼らと必要と思われながらも家族のように親しくなれて、また来るねとニコニコしながらお客様が帰ってく。

1日働き、家に帰って風呂に入ればすっかり疲れがとれてビールがうまくって、ベッドに入ったら明日のことを心配せずに熟睡できて、翌朝パチっと目がさめる。そんな店をしたいんです…、ってそれが本当の答えだから。
どうやったらそういうお店ができるんだろう…、と色々ずっと考えている。ちょっとづつ。手がかりのようなものが見えてきて、でもまだ決定的な確信がない。がんばらなくちゃ…、と今日は思った。そう思ったのもこの店のとあるところがちょっとだけ、ボクが思い描く理想のお店に近いところがあったりしてだからボクが考えることも夢物語で終わるワケではないかもネ…、って思ったりするワケであります。

パンが並んだ小売コーナー、パンを使った料理を作ってくれるカフェがあり、カフェはセルフサービスとテーブルサービスがほどよく混じり合っている先払いシステム。お客様に「従来的な良いサービス」を期待させない合理性がある。
かと言ってそれが冷たく感じるか…、というと働いている人がいい意味で素人臭くていいかと思う。しかも料理はしっかりしている。なによりスタッフの笑顔がステキで、これでいいんだと思ったりもする。飲食店の未来がここにあるのかも…。

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