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フットボールのダイヤモンド・オフェンス

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スペインサッカーコーチングコース・レベル3(S級相当)の卒業論文として書いたものを日本語に訳し、加筆したものである。ダイヤモンド・オフェンスはファイナルゾーンを攻略する攻撃方法論… もっと読む
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フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 33  〜フットサル1〜基本的な動きと戦術的な動き

フットサルの攻撃には基本的な動きと戦術的な動きがある。

※基本的な動き:相手を崩すためにはチーム全体で共有した動きを持っておくこと

※戦術的な動き:フィールドプレーヤーの4人全員が連動しながら相手を崩していく戦術を覚えていく。

2.3.9 相手のプレーを読むミゲル・ロドリゴ(2011)戦術的な動きについて:

相手のボールへの寄せ方や、ポジショニング、スペースをしっかりと見極めることが重要に

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フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 32  ~ハンドボール2〜

フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 32  ~ハンドボール2〜

2.3.8 ファイナルゾーンの状況におけるプレー・オプション フットボールは、オフェンスプレーヤーがボールを受ける際に、相手ディフェンスプレーヤーに対して、ポジション優位の状況であることが望ましいと考える。
通常、相手ディフェンスプレーヤーは自身のマークとボールの両方が見える位置にポジションを取るので、ボールを受けるプレーヤーは、ボール保持者がパスをする瞬間、相手ディフェンスの視野外にポジションを

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フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 31  ~ハンドボール1〜

フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 31  ~ハンドボール1〜

ハンドボール編:バスケットボールの次は、スペイン、ヨーロッパで人気のあるハンドボールの攻撃戦術をフットボールに応用することを考えた。ハンドボールの様々な文献や動画、実際にFCバルセロナのハンドボールチームの試合をカンプ・ノウスタジアムの敷地内に併設されているパラウ・ブラウグラナ(8,250人収容)で観戦し、フットボールに応用することができそうな新たな攻撃戦術がないか、もしくは類似なものはないかを探

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フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 30 ゾーン・ディフェンス攻略理論4 〜バスケットボール10〜

フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 30 ゾーン・ディフェンス攻略理論4 〜バスケットボール10〜

パスアウトゾーン・ディフェンス攻略法の最後はパスアウトである。パスアウトという攻撃方法は、もともとラグビーから発生したようであるが、バスケットボールにも同様の攻撃方法論があるので、どちらから発生したかはここでは言及しない。

※パスアウト:ラグビーで、選手が密集している所から密集していない所へパスを行うこと。インサイドに位置するボールマン(ボール保持者)がアウトサイドに位置するオフボールマンにパス

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フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 29 ゾーン・ディフェンス攻略理論3 〜バスケットボール9〜

フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化 29 ゾーン・ディフェンス攻略理論3 〜バスケットボール9〜

ゾーン・ディフェンスを攻略する3つの戦略ここではさらにゾーン・ディフェンスを攻略するための3つの戦略を詳細に説明する:

1. 5スポット:ライン間でボールを受ける(ボールを入れる場所)
2. 数的優位をつくるためのダイヤモンド+1(ポジショニング)
3. ローテーション(ダイヤモンド+1の再構築)

1. 5スポット:ライン間でボールを受ける(ボールを入れる場所)ドナルド・ベック(2012)は、

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フットボールのダイヤモンド・オフェンス における攻撃サポートの構造化 28  ゾーン・ディフェンス攻略理論2 〜バスケットボール8〜

前回は、テックス・ウインターの4つのゾーン・ディフェンス攻撃メソッドの2つ「原則的な攻め方」と「フリーランス・アタック」について書いた。今回は「ディフェンスと同じアライメントを使ったオフェンス」と「ディフェンスと逆のアライメントを使ったオフェンス」について書く。

3. ディフェンスと同じアライメントを使ったオフェンス「ディフェンスと同じアライメントを使ったオフェンス」とは、例えば、相手ディフェン

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フットボールのダイヤモンド・オフェンス における攻撃サポートの構造化 27  ゾーン・ディフェンス攻略理論 〜バスケットボール7〜

ゾーン・ディフェンス攻略理論現代のフットボールにおいて、ゾーン3(攻撃側から見て)「ファイナルゾーンの守備」のほとんどがゾーン・ディフェンスであると推測する。そうであれば、まず最初にゾーン・ディフェンスをどのように攻撃するかを理解することが大切だ。
テックス・ウインター(1962)は、ゾーン・ディフェンスの特徴に基づいてゾーン・ディフェンスの原則を説明している:

ゾーン・ディフェンスの原則を知る

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フットボールのダイヤモンド・オフェンス における攻撃サポートの構造化 26  エントリーパス 〜バスケットボール6〜

フットボールのダイヤモンド・オフェンス における攻撃サポートの構造化 26  エントリーパス 〜バスケットボール6〜

エントリーパスファイナルゾーン(ゾーン3)で「セットオフェンス」を開始するにあたり、「セットオフェンス」を始めますという合図となるパスが必要であり、それがエントリーパスである。

チームで「セットオフェンス」を開始するには、このポジションのプレーヤーにボールが入ったら「セットオフェンス」を開始するという、プレーヤーなり、ポジションを決め、そのプレーヤーにボールが入ったら、ボール保持者の近くのプレー

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フットボールのダイヤモンド・オフェンス における攻撃サポートの構造化 25  4つのパス・オプション 〜バスケットボール5〜

フットボールのダイヤモンド・オフェンス における攻撃サポートの構造化 25  4つのパス・オプション 〜バスケットボール5〜

どのようにして、ファイナルゾーンにおいて、継続してボール保持者の周りにダイヤモンドを形成するのか?トライアングル・オフェンスの「4つのパス・オプション」は、フットボールのダイヤモンド・オフェンスのプレーのベースを形成すると考える。

4つのパス・オプション:基本の動き図32で、ガードからボールを受ける右WG(フォワード)は右外側に位置して、相手ディフェンスの配置によって4つのパスパターンから選択す

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フットボールのダイヤモンド・オフェンス における攻撃サポートの構造化24  パスの7原則 〜バスケットボール4〜

フットボールのダイヤモンド・オフェンス における攻撃サポートの構造化24  パスの7原則 〜バスケットボール4〜

テックス・ウインター(1962)は、トライアングル・オフェンスのためのパスの基本的な原則を提唱している:

パスの7原則:1. パサーとそのディフェンスの距離はできるだけ狭いほうがよい。1m 以内が望ましい。ディフェンスの距離が近ければ近いほど、ディフェンスはこちらの動作に対して早く反応することが難しくなる。

2. ボールハンドリングやパスにおいて不必要な動作はおこなわない。ゆっくりとした予備動

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フットボールのダイヤモンド・オフェンス における攻撃サポートの構造化23  2.3.5 ファイナルゾーンにおけるプレー・オプション 〜バスケットボール3〜

2.3.5 ファイナルゾーンの状況におけるプレー・オプション 〜バスケットボール3〜フットボールのダイヤモンド・オフェンス は、テックス・ウインターが考案したバスケットボールの攻撃メソッドであるトライアングル・オフェンス をベースにしたものである。テックス・ウインター(1962)が提唱したトライアングル・オフェンス には、フォワード(ウイング)がボール保持者になった場合に「4つのパスのオプション」

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フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化22 2.3 他のチームスポーツにおけるダイヤモンド・オフェンス ~バスケットボール2〜

2.3.4 ダイヤモンド・オフェンスはフリーランスオフェンスマイケル・S. ガザニガ(2014)は、責任感と自由は、社会的相互作用から生まれると説明している:

責任感は人間が発揮する特質のひとつだが、それは社会的なやりとりから生まれる。脳がひとつだけでは社会的なやりとりはできない。最低でも二つ以上の脳が関わると、そこに予測のつかないことが起こりはじめ、それまで存在しなかった新しい規則が定まってい

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フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化21 2.3 他のチームスポーツにおけるダイヤモンド・オフェンス ~バスケットボール~

フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化21 2.3 他のチームスポーツにおけるダイヤモンド・オフェンス ~バスケットボール~

2.3.1 トライアングル・オフェンスをダイヤモンド・オフェンスに適応させる テックス・ウインターによって考案された「トライアングル・オフェンス」をフットボールの攻撃戦術のメソッドとして適応させることが、私の論文のテーマである。

トライアングル・オフェンスの目的:

テックス・ウインター(1962)は、バスケットボールのセットオフェンスのメソッドとしてトライアングル・オフェンス考案した。テックス

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フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化20 2.2.8 即興プレーは創発の結果である

フットボールのダイヤモンド・オフェンスにおける攻撃サポートの構造化20 2.2.8 即興プレーは創発の結果である

即興プレーは創発の結果である:創発について、マイケル S. ガザニガの著書(〈わたし〉はどこにあるのか:ガザニガ脳科学講義:2011)には、このように書かれている:

創発とはミクロレベルの複雑系において、平衡からほど遠い状態(無作為の事象が増幅される)で、自己組織化(創造的かつ自然発生的な順応志向のふるまい)が行われた結果、それまで存在しなかった新しい性質を持つ構造が出現し、マクロレベルで新しい

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