試合分析について

現在、スペインサッカーコーチングコース・レベル3(最高レベル、日本のS級相当)の最後の科目である卒業論文を作成をしている。そのこともあり、今シーズンはバルセロナでチームを指導していない。

その代わり、週末に必ず様々なカテゴリーの試合を観戦し試合を分析している。多くはFCバルセロナ(Juvenil A,19歳以下)か、FCバルセロナBの試合を紙一枚とボールペンで分析している。

そこで私がやることは、例えば、自分がFCバルセロナ(Juvenil A, 19歳以下)の監督だと仮定して試合を分析している。

分析する内容

1. 試合を開始して5分までに相手チームの守備の方法を分析して、この試合の攻撃システムを相手ディフェンスにどのようにうまく適応させているのかを分析している、また、自分だったらどのように調整するかを考える。

2. ハーフタイムに的確な指示を出せるように、DAFO分析(日本ではSWOT分析)をする。


DAFO分析:

Debilidad (弱み): 内的要因(自チームの弱いところ。:例 コーナーキックの守備が弱い)
Amenaza(脅威、リスク):外的要因(相手チームの強みと関係している:例 ゾーン2で(ミドルゾーン)ボールを中盤の選手が失った場合に、自チームのDFラインの背後を狙われる。カウンターアタックをされるリスクがある。
Fortaleza(強み):内的要因 (自チームの強いところ:例 コンビネーションプレーによるサイド攻撃やカウンターアタック等)
Oportunidad(好機、チャンス):外的要因(相手チームの弱みと関係している:例 相手の右ウイングが守備の時にディフェンスに下がってこないことがあるので、左サイドバックは、左ウイングにボールが入ったらオーバーラップをする)



4つのモーメント:「組織的攻撃、組織的守備、守備から攻撃への切り替え、攻撃から守備への切り替え」を分析する

今回は、主に組織的攻撃について書いているが、サッカーにおける4つのモーメント全てを分析することが大事である。


組織的攻撃4つの行動:

1. Salida de balón(ボールの出口):ゾーン1

2. プレーの前進:ゾーン2

3. ダイレクトプレー:例えば、ゾーン1から中盤を経由しないでDFラインやGKから直接ロングボールで相手ディフェンスラインの裏へボールを入れるか、味方FWへ直接パスをするプレー。

4. ファイナルゾーン(セットオフェンス):ゾーン3でのプレー。セットオフェンスとは、遅行のことであり、ポジションをセットしてから行う攻撃方法である。カウンターアタックは含まない。

守備から攻撃への切り替え2つの行動

5.カウンターアタック

6. 攻撃の再構築

組織的守備4つの行動

7. Salida de balónに対しての守備 :ゾーン3(守備側から見て)

8. プレーの前進に対しての守備:ゾーン2

9. ダイレクトプレーに対しての守備

10. ファイナルゾーンでの守備:ゾーン1(守備側から見て)

攻撃から守備への切り替え3つの行動

11. プレッシング

12. 後退

13. プレッシングと後退 (例:前の5人がプレッシング、後ろの5人が後退して、相手にロングボールを蹴らせる)

上記の13行動を分析する。また、それに加えて、セットプレー(コーナー、フリーキック、スローイン等)も分析する必要があります。

調整するシステムは、最初にゾーン1からのSalida de balónである。自陣ゴールラインからハーフライン手前10−15m(ゾーン2)まで、どのようにボールをつないでボールをゾーン2(ミドルゾーン)まで運ぶのか。また、相手がどのようにプレッシングしてくるのか、プレッシングが激しければ、味方FWへのダイレクトプレー(中盤を経由しないロングボール)を選択する必要もあるかもしれない。もし、相手がマンツーマンマークのようにしてくるなら、GKからダイレクトにFWへボールを入れる方法を確立する必要があるかもしれない。マンツーマンマークだということは、相手ディフェンスはこちらの動きに忠実なので、どこかにスペースを作ることができる。

ゾーン2(ミドルゾーン)では、どのようにボールをつないでハーフラインを超えて、ゾーン3(ファイナルゾーン)までボールを運ぶことができるのかを観察し調整することを考える。そのためには、相手ディフェンスの守備の方法を観察する必要がある。

相手ディフェンスがゾーンディフェンスの4−4ー2であった場合:

例えば、相手ディフェンスが2トップで、こちらのシステムが4−3−3だとしたら、ボランチをディフェンスラインに入れて3バックを形成しディフェンスラインで数的優位を確保した状態にし、両サイドバックを高い位置において、両ウイングを内側に配置し、3−2−5システムにする等である。

次に、ゾーン3(ファイナルゾーン)にボールを運んだとき、相手FWの一人が下がり4−4−1−1のゾーンディフェンスで守備をする場合は、ボランチを上げて、例えば、こちらは2ー3ー5システムにする等である。このように数的優位とポジション優位の状況を作ることを試みることを考えている。

ファイナルゾーンでは、ここからどのように選手が動いて、相手ディフェンスを排除して、攻撃するのかを観察することが大事だし、相手の守備のやり方から、どこにスペースができるかを見る必要がある。

これらを試合開始5分までに分析し、選手に修正するのか、しないのかを伝えることができるようにと考えている。(もしくは10分以内に)ただ、最近は開始10分経ってから、相手チームがやり方を変えてくることもあるので、絶えず、試合を分析し続けることが大事だ。

ハーフタイムまでにDAFO分析した内容で、相手チームの弱点がこちらのOportunidad(好機、チャンス)になる。例えば相手MFラインの守備のライン間が開いた場合は、相手MFラインのライン間でボールを受けることを指示をすることや、どこにボールを運んだら、チャンスができるかを伝える。守備においても、ゾーン2でボールを失った時に相手FWのあの選手がディフェンスラインの背後でボールを受けようとするから(Amenaza:リスク)、リスクマネージメントとして、ボールを失った瞬間にその選手をしっかりマークするように伝えること等をまとめて、シンプルな形で選手が理解できる言葉で伝えられるようにと考えて分析している。

当然、セットプレー(スローイン、フリーキックなど)の確認も場合によっては必要であろう。ただ、全てはDAFO分析が最も重要であると考える。試合中に分析し、選手に伝え、修正できることはそんなに多くはないので。その他の詳細な内容は自チームの試合をビデオ撮影し、ビデオ分析し、その修正内容をトレーニングする方が良いだろうと考える。

後半は相手も変化してくる可能性があるので、こちらも、絶えず、試合を分析し続ける必要がある。先日、私が観戦したFCバルセロナ(Juvenil A, 19歳以下)対コルネージャ (Juvenil A)の試合は、後半、残り30分過ぎにコルネージャが守備の弱点ではあったが、攻撃ではスピードのあるドリブルを見せていた右ウイングとセットプレーで力を発揮していた背の高いFW選手二人を交代した。コルネージャはゾーン3でシステムを4−4−1−1から6−2−2にして、バルサの2−3−5システムを3−2−5システムに変えさせ、FCバルセロナ(Juvenil A)の攻撃をしのいで、引き分けた。(多分、コルネージャはバルサ対策をしていて、6−2−2で守備をするトレーニングをしていたと考える)。監督は絶えず、試合状況の変化、システムの変化を注視し、素早く対応することができる分析能力を身に付けることが必要だ。

そのためには、指導者は分析の方法を学ぶ必要があり、その後は分析の実践を繰り返すことで、ある程度は誰でも試合を分析することが可能であると思うし、試合分析を続けることで、分析する箇所が予測できるようになってくると思う。そうすると、サッカーの試合を観るのが楽しくなってくる。







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坂本 圭 EVOLUCIÓN DEL FÚTBOL ...

スペインサッカーコーチングライセンス・レベル3(S級相当)取得。2016-2017シーズン CF Badalona (2部B)で試合分析を担当。FC バルセロナアカデミー品川大井町校でコーディネーター兼コーチ。フットボリスタ・ラボ。浜辺健太フットボールラボ。

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