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マエストロ・セイルーロの論文を読む! 「構造化トレーニング」5:〜新しいパラダイム〜

前回は「古典的パラダイム」についてでした。

今回は、21世紀のチームスポーツにおけるダイナミック(動的)・システムの「新しいパラダイム」、「パラダイムシフト」について、マエストロ・セイルーロが2002年に発表した論文の翻訳です。

ペップ・グアルディオラやバルサが、どのようにフットボールを捉え、トレーニングを行っているのか、その根本の構造を知る手助けになればと思います。

※ 尚、この論文の翻訳は、私自身の解釈なので、その辺りはご了承願います。

前回の論文

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新しい視点

私たちが考案した、これらの新しい構想のおかげで「構造化トレーニング」の明確な基準を、開発することができました。

今ここにいるあなた方全員は、先ほど説明した「古典的なパラダイム」である、「線形」の教育を最初に受けてきました。

私たちは、この「線形」を放棄します。

「線形」は、分析し、細分化しなければならない。

そして、ある特定の問題を分析することで、私たちは、その問題を一般化することができると考えられてきました。

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私たちは、教育を通して、常に、この種の情報を受け取ってきました。そして、何より、パラダイムを変えるために、私たちは多くのことを変えなければなりません。考えを変え、人生、自然、そして何よりも人間の概念を変えなければなりません。

これまで、身体教育やスポーツトレーニングの実践を支配してきたのは、「古典的なパラダイム」でした。

ここで、「新しい視点」を発表したいと思います。

今まで見てきたことと比較して、スポーツの「新しい視点」は、アスリートの総合的な発育・発達を通して、発展しなければなりません。

この「新しい視点」を常に維持し、それを実践した瞬間から、分析的(線形)な運動を構築したことは一度もありません。

今まで、私たちは、常に分析的な運動を構築してきました。

例えば、投げることの教育学の進歩… 〜のための運動の適用…など。

この「新しい視点」のもとに、教育とトレーニングは、アスリートを最適化する独自のプロセスを構成します。

パフォーマンスのための最適化の概念に変更します。改善、それは線形性からの進歩の概念です。

例えば、「私には筋力があります。筋力をよりつけるために、筋力トレーニングをします」

「もっと筋力が欲しい、筋力を向上させたい」等

これが「線形」のシークエンスです。

もう1つの「線形」の例として、私は14年間、陸上競技の「幅跳び」と「3段飛び」のコーチをしてきました。これらのトレーニングに必要なのはアスリートの筋力(体力)、反動的筋力、爆発的筋力、などです。

それから私たちがジャンプすると、あまり跳ぶことができませんでした。

どうしてでしょう?

もちろん、ジャンプは改善されましたが、理論的には、起こるべきではない改善です。

何が起こったのでしょうか?

私が使った要素の基礎は、人間の絶え間ない進歩には、役に立たない科学に基づいていました。

それらは、「線形」の要素を持った1950年代のトレーニングと教育の両方の観点から現れます。

現在、全ては「システム理論」と「生態学の理論」などを通して、自然と科学を理解する新しい方法を開発し、そして今、それらをサポートする基本的な2つのラインがあります:

- 20世紀末である(科学技術の進歩)
- その他の科学によってもたらされた、人間とは何か、生物の機能についての新しい知識

その目的は、アスリートの「自己モデリング」です。つまり、自分自身に焦点を合わせ、自分のリソースをトレーニングし、潜在能力を最適化しなければなりません。


このパラダイムシフトの方法論的帰結

一人一人ができること、つまり、一人一人が最適化されていなければなりません。

人間それぞれの遺伝的な違いに応じて、生涯を通じてその機能性が持っている、異なるアンバランスな点があるので、一人一人のステップは異なります。

それが「異なる最適化」です。


どのようにして、自己構造化をするのか?

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「自己構造化」を達成する、5つの比較要素を、「伝統的な昔ながらの考え」と「新しい考え」で、一緒に比較してみましょう。例えば:

まず、ルール(規則)が、どのように進化したかに応じて、常に技術は発展してきました。

突然、一瞬にして個人が現れ、異なる技術を実行するとき、時にそれは、そのスポーツのルール(規則)に受け入れられるのか、どうか。

それは、「やり投げ」で起こりました。一風変わった投てき者が出現したのです。彼は、投げる前にターンをしました。私たちが知っている「線形」の投げ方の代わりに。ルール(規則)はそれを受け入れませんでした。

逆に、「走り高跳び」では、「正面飛び(はさみ飛び)」、もしくは「ベリーロール」が主流でしたが、「背面跳び」をするアスリートが登場しました。結局、世界中の誰もが受け入れ、現在に至っています。

そして、例えば、ルール(規則)に基づいて構築する代わりに:

1. 「個人に現れる潜在能力もしくは可能性についての、技術的-戦術的スキルを確立」しなければなりません。

模範例や見本からではなく、自分自身で、個人の進歩を観察します。

伝統的な昔ながらのコーチは、通常、「これが私のゲームモデルだ。」「十人十色(それぞれに自分のやり方がある)」「私は、このようにトレーニングし、このように構築する」

そして、現実的には、それは反対でなければなりません。

私たちは、標準的なやり方において現れるスキルで選手に力を与えなければならないのです。

例えば、私たちは、今まで被験者を試合に適応させるために、伝統的な教授法を試みてきました。

私たちが本当にしなければならないのは、「パラダイムシフト」であり、私たちを選手側に置き:

2. 「試合が選手に与える影響」を観察することです。

選手が試合に適応するわけではありませんが、それを解決するために、選手にどのような影響が生じるかを確認してください。それぞれの解決すべき問題を見る場所、パラダイムを変更しなくてはなりません。

そして、通常、ゲームモデルやトレーニングモデルは、コーチによって開発され、その正当性はコーチが良いゲームモデルと、ある特定のトレーニング方法を持っていることであり… そして、実際には、そうではありません。コーチは学ばなければなりません。進化しなければならないのは選手であり、コーチではないのです。

コーチ!、特定の方法に関して知っていること、そして個人の進化について知っていただきありがとうございます。

特に、トレーニングで起こる、コーチと選手の「やり取り(交流)」を通して、コーチと選手の両方、特に選手を進歩させるのです。

3. 選手は、プレー、トレーニング、自分自身について、新しい知識をコンスタントに習得します。

もし、コーチがそれらを手に入れても、なんの価値もありません。

コーチは自分がしなければならないことを、すでに知っています。しかし、実行しません。選手は、それを実行するために、知っていなければなりません。そして、明らかなことは、大半のことは忘れてしまいます。

4. 社会的相互作用が存在する現在の状況では、自分の社会的イメージの形成。個人をサポートすることが非常に重要です。

通常、私たちは、選手を模範例となるモデル、大多数のモデルに適応させるために、大多数は何をしているのか、私の選手は何をしているのかを比較する、テクノロジーと研究方法を使用します。

このような方法で、私たちがすでに知っている特定のモデルに達して、個人の進歩の可能性を制限するのです。

例えば、「フットボール選手は、3〜5kmを80%のスピードや20%のスピード等々で走ります。」

これらの前提の下にトレーニングをしても、これらの選手たちが試合に勝つことはなく、もしくは、せいぜい良くても引き分けでしょう。

この基準によって、本当にスポーツが、このように機能するのであれば、私もあなたと同じことをするでしょう。つまり、モデルに従います。

それで、私たちは何をしなければなりませんか?全く逆です。

重要なことは、試合のモデルを観察するために、適切なテクノロジーや研究を割り当てるのではなく、

5. 個人を観察するために、選手が実践中に知識を得ることをサポートしなければなりません。つまり、「新しいパラダイム」の提案は、個人を観察することを優先します。そしてその提案は、アスリートのニーズから生まれるのです。

コーチがニーズを構築するのではなく、非常に要求の多いものを構築するのでもなく、コーチが提案するモデルは、アスリートが特定の準備に直面した時、アスリート自身のニーズから始めなければなりません。

この「パラダイムシフト」から、トレーニングのダイナミクス、対人関係と概念を完全に修正する提案をするので、今から発表することを理解するために、考慮しなければならない最も重要なことは、個人が自分のスポーツの実践が何であるのかを知っていることです。

通常、私たちの習慣では、合理化する、分析する、大きな問題を削減する、線形の練習をする、etc。

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論文のポイント:新しいパラダイム

スポーツの「新しい視点」は、アスリートの総合的な発育・発達を通して、発展する。
・「新しい視点」のもとに、教育とトレーニングは、アスリートを最適化する独自のプロセスを構成する。
・「最適化の概念」を「パフォーマンスの向上」に変更。
・アスリートは「自己モデリング」する。つまり、自分自身に焦点を合わせ、自分のリソースをトレーニングし、潜在能力を最適化する。
・自己構造化とは選手一人一人が「異なる最適化」をすることである。
「異なる最適化」:一人一人が最適化されていなければならない。人間それぞれの遺伝的な違いに応じて、生涯を通じてその機能性が持っている、異なるアンバランスな点があるので、一人一人のステップは異なる。
「自己構造化」を達成する、5つの比較要素
1. 個人に現れる潜在能力もしくは可能性についての、技術的-戦術的スキルを確立する。
2. 「試合が選手に与える影響」を観察する。トレーニングで起こる、コーチと選手の「やり取り(交流)」を通して、コーチと選手の両方、特に選手を進歩させる。
3. 選手は、プレー、トレーニング、自分自身について、新しい知識をコンスタントに習得する。
4. 社会的相互作用が存在する現在の状況では、自分の社会的イメージの形成。個人をサポートすることが非常に重要である。
5. 適切なテクノロジーや研究を、個人を観察するために、選手が実践中に知識を得ることをサポートするために使う。つまり、「新しいパラダイム」の提案は、個人を観察することを優先し、その提案は、アスリートのニーズから生まれる。


次回は、いよいよ「構造化トレーニング」とは何か、ついて説明します。


参考文献

Seirul-lo, F. La preparación física en deportes de equipo -Entrenamiento Estructurado-. Valencia Junio 2002.




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