スペイン式フットボール分析学8:FIFAW杯2018ロシア 日本代表分析 対ベルギー戦 〜失点の原因〜

西野日本代表の失点の原因分析:

西野さんが監督になってからの親善試合3試合とワールドカップ4試合の失点の原因を分析する。


西野日本代表総失点数:13点(親善試合3試合:6失点、ワールドカップ4試合:7失点)
失点:セットプレーから11失点。ファイナルゾーンの守備による失点:2失点(ワールドカップ:セネガル戦)
親善試合3試合:6失点全てがセットプレーから生まれている。
ワールドカップ4試合:7失点中5点がセットプレーから生まれている。


セットプレーからの失点原因:

直接FKに対しての守備:2失点(親善試合:ガーナ戦、ワールドカップ:コロンビア戦)

ゴールキックに対しての守備:1失点(PKを取られたきっかけとなるプレー。親善試合:ガーナ戦)

スローインに対しての守備(ゾーン1):2失点 ロングスローから(親善試合:パラグアイ戦、ワールドカップ:ベルギー戦)

コーナーキックに対しての守備:1失点(ベルギー戦:ショートコーナーから)

直接FKからパスか、セカンドボールに対しての守備:2失点(親善試合:パラグアイ戦:セカンドボール、ワールドカップ:ポーランド戦:直接FKからのパス)

PKによる失点:1失点(親善試合:スイス戦)

自チームのコーナーキック:攻撃から守備への切り替え:2失点(親善試合:スイス戦、ワールドカップ:ベルギー戦3点目)

尚、ベルギー戦の2失点目については、ベルギーにコーナーキックを与えた原因を分析する必要がある。日本の左コーナーからのショートコーナー。ベルギーにボールをカットされてカウンターアタックをされ、昌子がなんとかデ・ブルイネの強烈なシュートをブロックした。その後のコーナーキックからベルギーにショートコーナーをされて、後半途中出場したフェライニにヘディングシュートを決められている。


現在のサッカーは5つの局面で成り立っている:

組織的攻撃、守備から攻撃への切り替え、組織的守備、攻撃から守備への切り替え、セットプレー

セットプレーの項目:

スローイン攻撃(ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3):攻撃から守備への切り替え スローイン守備(ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3):守備から攻撃への切り替え
FK攻撃(ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3):攻撃から守備への切り替え    FK守備(ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3):守備から攻撃への切り替え
コーナーキック攻撃:攻撃から守備への切り替え               コーナーキック守備:守備から攻撃への切り替え
ゴールキック攻撃:攻撃から守備への切り替え                ゴールキック守備:守備から攻撃への切り替え
PK攻撃:攻撃から守備への切り替え                    PK守備:守備から攻撃への切り替え             

セットプレーには攻守の切り替えが存在する。セットプレーのトレーニングをするときは、できるだけ試合の状況を設定して行うことが大切だ。

おそらく日本代表は、セットプレーのトレーニングをしていると思うが、「試合の状況を設定した攻守の切り替えのある状況」でトレーニングをしたかは疑問である。試合の状況を設定して、ボールを失ったときにどのようなプレーをするか、逆にボールを取り戻した時、「カウンターアタック」を狙うのか、「攻撃の再構築」をするのかまで、トップレベルのチームはトレーニングをしなければならないだろう。

しかも、今回のワールドカップを見てわかるとおり、セットプレーからの得点が多く、重要度が増している。

そのような「試合の状況を設定したセットプレーのトレーニング」を日本代表がしていたのであれば、親善試合3試合を分析して、6失点全てがセットプレーからだという認識があれば、ワールドカップでのセットプレーからの失点は減っているか、まぬがれていなければならない。しかし、実際は4試合7失点中5点がセットプレーからであった。

しかも、親善試合と同じようなパターンで失点しているのだ。


ベルギー戦に限って言えば、3失点ともすべてセットプレーからであった:

1失点目:

1失点目はゾーン1からのロングスローの守備からである。GK川島がボールをパンチングし、それをクリアをミスしたところから、フェントンゲンにヘディングループシュートを決められている。

このロングスローの守備はパラグアイ戦の失点の教訓が活かされていない。

2失点目:

日本の左コーナーからのショートコーナーをカットされて、ベルギーにカウンターアタックをゆるし、デ・ブライネの強烈なシュートを昌子がなんとかブロックした。失点にはならなかったが、親善試合スイス戦のカウンターアタックからの失点の教訓が活かされていない。

そして、ベルギーの左コーナーキックからのショートコーナーで後半途中から入ったフェライニにヘディングシュート決められている。


3失点目:

日本の左コーナーをGKクルトワにキャッチされた後の素早い「カウンターアタック」からの失点である。2失点目のきっかけとなる左コーナーキックの教訓と親善試合のスイス戦の日本のコーナーキックから「カウンターアタック」をされて失点をした2つの教訓が3失点目に活かされていない。

これは選手一人一人の責任はもちろんあるが、チームとして、セットプレーの攻守、攻守の切り替えを「試合の状況を設定した」中でトレーニングをしたのかどうか。

私には、西野日本代表のワールドカップ4試合と親善試合3試合を分析した限りでは、特にセットプレーの攻撃から守備への切り替えが非常に遅かったと考えている。スイス戦とベルギー戦は同じような失点の仕方である。トレーニングはしたのかもしれないが、実際の試合には活かされていないように感じる。

ハリル監督から、西野監督に変わって時間がなかったのかもしれないが、日本の弱点であった「セットプレーと攻守の切り替え」をワールドカップ前までに改善、いや、最悪、ベルギー戦までに改善できていれば、2−0で勝つことも可能であっただろうし、2対2で延長に行くことも可能であったと思う。

反対に、コロンビア、ポーランド、ベルギーは日本の弱点をしっかりとついてきている。セネガル戦もセットプレーから失点こそしなかったものの失点してもおかしくない場面もあった。高いレベルになればなるほど、ディティールが勝敗を分ける。

西野監督の采配には触れないが、今回のワールドカップは攻撃面で良い場面があったが、守備面、特にセットプレーと攻守の切り替えにおいて弱点を露呈し、それを改善することができなかったことが惜しまれる。




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