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スペイン式フットボール分析学4:W杯2018ロシア 日本代表対セネガル代表(前半) 〜ボール出し分析〜

W杯グループステージ グループH、日本代表の「ボール出し」を分析する。ここまで、日本代表とセネガル代表は第1戦を共に勝った後の2戦目である。

分析項目:

組織的攻撃:
1. ボール出し:ゾーン1(Salida de balón)
2. 前進:ゾーン2(Progresar)。前進とはパスかコンドゥクシオン(スペースへ運ぶドリブル)を使って自陣からハーフラインを超えて相手コートに入ること。
3. ダイレクトプレー(Juego directo)
4. セットオフェンス:ゾーン3 (Finalizaciones)
守備から攻撃への切り替え:
5. カウンターアタック(Contraataque)
6. 攻撃の再構築(Iniciar organización ofensiva)
組織的守備:
7. ボール出しへの守備ゾーン3:D. Salida de balón
8. 前進への守備(ゾーン2):D. Progresar
9. ダイレクトプレーへの守備:D. Juego directo
10. セットオフェンスへの守備ゾーン1:D. Finalizaciones
攻撃から守備への切り替え:
11. プレッシング:カウンタープレッシング含む:Pressing
12. 後退: Replegar
13. プレッシングと後退:Pressing y Replegar
セットプレー:スローイン攻守、フリーキック攻守(ゾーン1、ゾーン2、ゾーン3)、コーナーキック攻守





試合当日のエカテリンブルクの気温は20:00キックオフの頃は24度、湿度45%、気温は試合開始後から徐々に2~3℃下がる見込みと予想されていた。

システムは日本代表が4−2−3ー1、セネガル代表が4−1−4ー1(4−3−3)である。

日本代表のキックオフで試合が始まるとセネガル代表は、前線からの素早いチェックで、日本代表の「ボール出し」をさせない。ダイレクトプレー(Juego directo)を選択する日本代表。

セネガル代表はゾーン3の高い位置からのプレッシングと、右WG:I.サール、右MF:P.ヌディアエ、右SB:M.ワゲを起点とした右サイドからの攻撃でシュートチャンスを作る。セネガル代表に試合の主導権を握られた序盤戦である。

※ボール出し(Salida de balón):自陣低い位置(ゾーン1)からハーフライン手前のミドルゾーン(ゾーン2)まで、パスかコンドゥクシオン(スペースへ運ぶドリブル)を使ってボールを運ぶこと。
※ダイレクトプレー(Juego directo): GKやDFラインのプレーヤーから中盤に参加するプレーヤーを経由しないで直接FWラインのプレーヤーや相手ディフェンスラインの背後に高いロングパスをするプレー。


組織的攻撃:
1. ボール出し:ゾーン1(Salida de balón)

ゴールキックからの「ボール出し」:前半は一度もなかった。セネガル代表がゾーン3の高い位置からFWとMFラインの6人でプレッシングをかけてくるので、ゴールキックの場合は全て「ダイレクトプレー」であった。ワールドカップという大舞台であるので、ボールを失うリスクを回避したのだと考える。ただ、一度はゴールキックからの「ボール出し」にトライしても良かったのではないだろうか。

私の分析では、前半の日本代表の「ボール出し」は4回あった。「ボール出し」の基本的な配置は両CBの間にダブルボランチの1人のどちらか、長谷部か柴崎がDFラインに落ちるラ・ボルピアーナ(La volpiana)の動きをして3バックを形成し、「3−3−3−1」のような配置になる。対するセネガル代表の「ボール出しへのディフェンス」は、右MFヌディアエがトップの位置に入り2トップに、1ボランチのエンディアエがMFラインに入り4−4−2のゾーンディフェンスになる。この図では、1ボランチのエンディアエと左MFゲイェの2人のうち1人が柴崎をマークし、もう1人がトップ下の香川への縦パスのコースを切るようにしている。このエンディアエとゲイェのうち1人が柴崎をマークすることで、日本の「ボール出し」を防ぐ。次に香川への縦パスのコースを防ぐことで、セネガルのDFラインで4対4の数的同数になることを防いでいる。右WGのサールは左SBの長友を左WGサネは右SB酒井宏を監視している。

図1:日本代表の「ボールだし」3−3−3ー1システム 対 セネガル代表の「ボール出しへのディフェンス」4−4−2のゾーンディフェンス。

一見この図では、日本代表の「ボール出し」は難しいように感じるかもしれない。しかし、日本代表の両SB(右:酒井宏、左:長友)がワイドに開き高い位置を保つことで、セネガル代表の両WG(左:サネ、右:サール)がこの2人に引きつけられる。日本代表のDFライン3枚とセネガル代表の2トップで3対2の数的優位な状況であるので、「ボール出し」が可能となる。

対するセネガル代表はそれほど強くプレッシャーをかけて来ることはなく、3バックでサイドチェンジをするだけで、簡単にセネガル代表はゾーン2まで「後退」していた。そうであればGKによる「ゴールキックからのボール出し」を実行しても良かったのではないかと考える。

なぜなら、ゴールキックからの「ダイレクトプレー」を選択しても、セネガル代表にハイボールで勝てる見込みがないからだ。セネガル代表の平均身長は183、7㎝(32カ国中10位)、日本代表の平均身長は178、1㎝(32カ国中31位)である。日本代表はW杯2ヶ月前に就任した西野監督に、GKによる「ゴールキックからのボール出し」を準備する時間がなかったのかもしれない。

そのような理由で、リスクをおかさない陣地挽回のためのゴールキックだったのかもしれない。「ダイレクトプレー」ついては後ほど考察する。



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