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[マッチレビュー] 明治安田生命J1リーグ 第25節 ジュビロ磐田 vs サンフレッチェ広島 @ヤマハスタジアム

はじめに

こんにちは、SAKASHUです。今回は、2018/08/31に行われた、J1第25節のジュビロ磐田vsサンフレッチェ広島を振り返っていきます。

スターティングメンバー

ホームのジュビロ磐田は、前節のセレッソ大阪戦から4人を変更しました。変更は以下の通りです。

LSB 秋山陽介 → 宮崎智彦
CMF 田口泰士 → 針谷岳晃
RMF 松本昌也 → 荒木大吾
OMF 山田大記 → 大久保嘉人

山田は試合前の練習には姿を現していましたがトラブルがあり、急遽大久保がスタメンに、上原力也がベンチ入りしました。

一方、アウェイのサンフレッチェ広島は、前節の大分トリニータ戦から1人を変更しました。

CF ドウグラス・ヴィエイラ → レアンドロ・ペレイラ

Dヴィエイラの怪我により、Lペレイラが移籍後初スタメンとなりました。

キックオフ:リスクを冒さない広島

広島のキックオフは、CBの荒木からCFのLペレイラに目がけてロングボール、という形でスタートしました。その後も、磐田のDFの裏を狙った、もしくはLペレイラを目がけたロングボールが複数回見られました。パスを繋いでいくというよりは、まずはリスクを冒さずにロングボールで、磐田の様子を見ようというスタンスでした。

序盤戦:磐田と広島のボール保持・被保持の配置

磐田のボール保持の配置は4-4-2。広島のボール被保持の配置は5-4-1。この試合、磐田のボール保持の配置にはある特徴がありました。

サイドの荒木とアダイウトンが、広島のWBの2人をピン止めしていました。ピン止めの特徴は、次の通りです。

新たな守備の基準点を準備することで、特定のエリアや選手に時間とスペースを与えることと、相手のプレッシングのルールを乱すことが、ピン止めの特徴です。

「アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます」 87ページ らいかーると著 2019年 小学館新書

このピン止めにより、磐田には主に以下のメリットがありました。
1. CBのファビオと大南がフリーでボールを持つこと、前へボールを運ぶことができる。また状況に応じて、SBもフリーになる。
2. 上図の赤い円のようなスペースを生み出し、使うことができる
3. 広島の両WBのカウンターの際の攻撃参加を遅らせる
  (敵陣への押し込み)
4. 1対1の状況を作り出せる
5. シャドーの東と森島のプレスの選択肢(SHかSBのどちらに行くのか)を増やし、迷わせることができる

特に1と2は前半で多くみられました。これによって生み出された攻撃が前半7分のシーンです。

ボールを受けたファビオがドリブルで敵陣に入っていきます。サイドに張ってピン止めしていたアダイウトンが赤色のスペースに入ります。そのため、マークしていたハイネルがアダイウトンについていきます。スライドしてきた稲垣と宮崎にマークをしていた東は、そのスペースを使われないように絞ります。それにより宮崎がフリーになり、それを確認したファビオは浮き球でパスを出します。野上が追いつき、カットされてしまいましたが、相手の裏を使う、考えられた攻撃で、個人的には良かったと思います。

また、この日J1初スタメンとなった針谷は、基本はLペレイラの横に位置していました。ただ、状況に応じて、CBの近くに来たり、横に移動したりなどせわしなく動き、ボールを幾度も受けてはパスを出していました。

「広島WBに対するピン止め」と「針谷の動き」によって、広島のプレスをある程度無効化し、ボールを保持および前進をしやすくなっていました。

一方、広島のボール保持の配置は3-4-3。磐田のボール被保持の配置は4-4-2。広島のボール保持にも特徴がありました。

それは、東と森島が上図の赤色のスペースにいたこと、ハイネルと柏がサイドにそこそこ高い位置で張っていたこと、川辺が磐田の選手の間で顔を覗かせていたことです。それにより、磐田にプレスをすることを躊躇させる、守備の選択肢を増やすことができていました。

この配置により、次のような攻撃ができました(前半5分)。

① 佐々木に荒木がプレスをかける
② サイドに張っていた柏にパス
③ 小川が柏へプレス
④ 森島がスルスルとサイドに移動。針谷もつられて動く
⑤ 稲垣が例のスペースへ移動し、柏からボールを受ける
⑥ 森島が裏へ抜ける時点で、大南と針谷の間(チャンネル)にスルーパス。

そのあと森島はクロスをあげ、シュートチャンスや2次攻撃が生まれました。移動により使えるスペースを生み出し、チャンスを作る。磐田の人への意識が強い守備と、3-4-3と4-4-2の噛み合わせのミスマッチングを使った、完璧な崩しでした。

この崩しは何度も行われていたため、再現性のある攻撃だったと思います。

前半24分~:広島のボール被保持の配置の変化

磐田のビルドアップに少し手を焼いていた広島。というのも、先ほど説明したように、WBがピン止めされていたことにより、磐田の両CBにフリーでボールを持たせていたためです。そのため、広島がボールを持てるのは、主に磐田の選手たちがミスした後のポジトラ時、もしくはセットプレーやスローインからのマイボールのときになっていました。幸い、アダイウトンがボールロストマンと化していたため、アダイウトンに2人3人で奪いに行けば大体取れる状態でした。

しかし、このままじゃ持たれるとしんどい。ということで、広島は前からのプレスの際に配置を変えてきました。

ペレイラがCBにプレスに行くと、全体が上図のようにスライドし、疑似的な4-4-2の配置にしました。これにより、配置によるミスマッチ、数的不利をなくし、CBにプレスをかけられるようになりました。

磐田の両CBは特段足元が上手いわけではないので、この配置変更は効果的でした。ただ、対処されたら、対処し返す。針谷がCBの間に降りてきました。

これにより、最終ラインで3対2の数的優位を作成。広島が前から来てもボールを後ろで保持できるようになりました。

両チームとも、ボール保持・被保持の配置のミスマッチを活かした攻撃が幾度となく見られました。特に、広島の攻撃において、磐田のCBとSBの間をついた攻撃が複数回見られ、得点の可能性を感じました。逆に磐田は、荒木のシュートがポストに当たったりもしましたが、どのシュートもサイドからのシュートや遠目からのシュートとなっており、ゴールの可能性はほとんど感じられませんでした。

両チームとも決定機という決定機はあまりなく、前半は0-0で終了しました。ちなみに、終了間際、怪我の森島に代わり青山が入りました。

後半開始~:広島の攻撃が実った先制ゴール

後半も前からプレスをかける磐田。それをいなす広島という後半の立ち上がりでした。そんな中、後半2分、試合が動きます。

宮崎がアダイウトンへパスを出そうとしますが、青山がインターセプト。すぐにペレイラに当てます。それと同時に川辺は宮崎とファビオの間を抜け、ペレイラは川辺にボールを出します。川辺はペナルティエリア角に入ると、中に入ってきた東にパス。東はエリア前で磐田のDF陣を引き付け、やってきたペレイラにラストパス。ペレイラが落ち着いてゴールへ流し込み、広島が先制します。

宮崎のパスミスからでしたが、広島が前半からやってきていた攻撃の形が身を結んだ結果となりました。一方、磐田は絶対に与えてはいけない失点となり、これが徐々に重く圧し掛かってきました。

あと、ペレイラについていたはずの針谷が、どうして離れてしまったのか。認知できていなかったのか、味方に任せたのか。少し気になりました。

その後は、広島がパスを磐田陣地で回し、磐田が追いかけるという展開になりました。前半からそこそこ飛ばしていた磐田は、だんだんと前からのプレッシングがはまらなくなり、逆に広島はプレスにより空いたスペースを活用していきました。そのため、磐田はボールを保持させてもらえなくなりました。

後半9分に、広島のパスミスの流れからムサエフがペナルティエリア前でフリーでシュートを打ちましたが、枠を大きくはずれてしまい、同点の機会を逃します。

後半10分にもアダイウトンのクロスから、ルキアンがバックヘッドでゴールを狙いましたが、惜しくも枠外に。少ないチャンスを磐田は決めることができません。

後半10分~:ゲームを支配する広島と左サイドが機能不全と化した磐田

前半は4-4-2でコンパクトに守れていた磐田ですが、後半の失点後、疲れからか、段々とDFとMFの間が空いてきます。そのスペースを見逃してはくれない広島。後半10分には、そのスペースに柏がパスを通し、ペレイラへ。東は大南とファビオの間へ。ペレイラが東にダイレクトで落とし、東はカミンスキーと1対1に。ただ、戻ってきた小川がなんとか防ぎました。

このように、広島はボールを保持しながら、相手の弱点やスペースを的確についてくるサッカーをしてきました。

磐田はルキアンを目がけた縦パスからのチャンスの構築を図っていましたが、広島DF陣の対応により、枠内シュートに持ち込むこともできなくなってきました。

また、このときぐらいから、左サイドのアダイウトンのプレーが悪目立ちをしてきました。2人3人と相手がいるのに無理やり突破しようとしてボールロストしたり、中へ絞りすぎてしまい味方とレーンが被ってしまう、などがあり、左サイドからの攻撃は完全に機能不全となりました。

後半20分~試合終了:広島のトドメの2点目 磐田は万事休す

後半25分、針谷の浮いたパスを受けた小川がトラップミス。見逃さなかった柏がプレスをかけボールを拾い、ペナルティエリアの外からシュート。カミンスキーは突然の出来事で準備が遅れてしまい、ボールを触ることができません。低弾道で打たれたボールはゴールに吸い込まれ、広島が追加点をあげました。

小川はそのエリアでは絶対にやってはいけないミスでした。柏の方をちらっと見ていたので、柏の存在には気づいていたと思います。だからこそ、防げた失点でした。

これが、ゲームを支配されていた磐田にとって致命的な失点に、逆に広島にとっては勝利を大きく手繰り寄せる得点になりました。

結局この後も、広島はゲームプランを着実に遂行し、磐田は後手に回るという展開に。磐田は特に大きなチャンスもなく、そのまま試合終了。0-2で広島が勝利し、無敗記録を11に伸ばしました。一方の磐田はこれで2連敗。15位との勝ち点差が10、16位との差が9となり、残り9試合での残留は非常に厳しいものとなりました。

試合の感想

広島、滅茶苦茶強かったです。試合中の修正、相手の構造や配置の弱点を突く攻撃、プランの遂行能力の高さ、選手個々のスキル、完璧なゲームクローズ、どれも磐田とは比べ物になりませんでした。私のなかで、城福さんの評価がまた上がりました。これからも強くなると思います。

磐田は、前半ごまかしながらうまく戦えていましたが、広島に同じところを殴られ続けて失点し、そのあとはクロス爆撃で相手の裏が取れない昔の磐田に戻ってしまいました。フベロ監督は、チャンスを作るところ、守備の形までは仕込めていましたが、さすがに就任2週間では得点の形を作るのは時間的に厳しく、できなかったと僕は思っています。失点するまではなんとかもっていたので、次の川崎戦ではそれが90分もつこと、そしてなにより得点にも期待したいです。

ハイライトなど

追記(2019/09/05 お礼など)

町田ゼルビアに関するブログを書いていらっしゃるTanaLifeさんに、Twitterで取り上げてもらいました。

おかげさまで、読者の増加、Twitterとnoteでのフォロワー数の増加がありました。この場を借りてお礼いたします。お礼の印に、TanaLifeさんのブログのリンクもはらせていただきます。

また、わたしが「サッカーの分析ブログを書き始めようかな」というツイートをしたときに、リプライをくださったpolestarさんが、自身のブログのページである「Jリーグ各クラブの戦術ブログ・レビュー【まとめ】(J1)」にわたしの記事のリンクを載せてくださいました。こちらもこの場を借りてお礼いたします。

今回の記事では、らいかーるとさんが書かれた「アナリシス・アイ」を参考にして書きました。キックオフに着目するのが私の中で一番の驚きでした。新書本のサイズで、説明のための図が豊富にあり、読みやすいと個人的に感じましたので、おすすめです。

これからも主にジュビロ磐田の試合についての分析記事をあげていこうと思います。何卒よろしくお願いします<(_ _)>。