さいごの手紙


ほんとのさいごに、


きみとの思い出を。


きみといられなくなってからどれくらいたつだろう。

いつまでもきみはぼくの頭の中からいなくならないんだ。


きみとぼくは、毎日一緒にいて、

楽しいことも、

辛いことも、

分け合ってきた。

どこに行くのも一緒で、いつでもそばにはきみがいた。


きみと出会ったころのことは、ぼんやりとしか思い出せないけど、

きらきら輝くきみがぼくの目を引いたんだ。

出会ったその日から、磁石みたいに惹かれあったぼくたちは毎日同じ時を過ごしたよね。

みんな、きみのこと

「やめといたほうがいいよ」


って悪く言った。


きみのことけむたがって、嫌がる人もいた。


ぼくにはそんな風に思えなかった。

だって、きみはだれよりもかがやいていたから。


親だって止めたけど、そんなのぼくにとっては関係なかった。

だって、ただ、きみと一緒にいることが、ぼくの幸せだったんだ。

きみといることが、僕を落ち着かせてくれた。

辛いときにも、どんなときにもそばにいてくれたのはきみだけだった。


一緒に聞いた音楽、一緒に見た映画、

いまでも耳に、目に入るたびきみのことを思い出すよ。

こんなときに、きみと一緒にいたんだなって。

こんなときに、きみと一緒にいれたらって。


何度も別れようって切り出して、

そのたび仲直りして。

一緒にいなかった時間がもっと君の大切さを教えてくれた。

きみの香りは今でもぼくの中でありありと存在してる。

街中でふっと感じるきみと同じ香り。

恋しくて仕方なくなる。

指先が今も君を求めるんだ。

仕事の途中、一人のご飯のあと、ふっと君のことを思い出す。



別れを切り出したのは、今度もぼくからだった。


倦怠期っていうのかな。

もうきみがいなくても大丈夫、一人でやっていける、って、

ぼくは勘違いをした。


きみとの思い出があるものは全部捨ててしまった。


みんなにも、きみと別れたことを告げた。

ぼくはどこかうれしいような誇らしいような、前向きに新しい一歩を踏み出した、

そんな気持ちだったんだ。


でもね一日たち、一週間たち、時がすぎていくにつれて

きみのことを忘れていく自分と、

それでも抗おうと、きみと一緒にいたい、と思う自分が、

ずっとケンカをしてるんだ。


きみがいないことで、胸がざわざわする。

不安で不安で仕方なくなる。

ふっとしたことできみに頼りたくなる弱いぼくがいる。


夢の中でさえ、きみに手を伸ばそうとするけど、

たとえいまきみがいても、

ぼくにはどうすることもできない。


だって全部捨てちゃったから。

きみを思いださせるものすべて。


見ると、辛くなってしまうから。


全部、捨ててしまったんだ。


でもね、

今日、仕事から帰る途中ふっと目をあげた先にきみがいたんだ。


なんだか前よりも輝いてる気がした。


夜の暗闇の中で、きみの周りだけがあかるくて、


なかでもきみは飛びぬけて輝いてた。

ぼくは、きみに触れようと手を伸ばしかけたけど、


きっともっと辛くなることがわかったから、


ぼくは伸ばした手をひっこめて、


肩を落として、目をそらして、そそくさと駅へと急いだ。


ねえ、ぼくは今でも、やっぱりきみのことが‐‐‐。


今日もぼくは夜の空を眺めてきみの名前を思い出します。


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