坂月さかな

空の海から

万年筆をポケットに忍ばせて歩いていた。蝉の鳴き声が反響する中、照りつける日差しは腕を焼くように熱く、ポケットの中で触れる万年筆の金属部分が指に冷たく感じられた。澄んだ濃い青空の下、見知らぬ田舎街を歩くのは良い気分だった。すっかり筆が滞ってしまった小説も、日が沈んで涼しくなる頃には良い展開が思いつくに違いない。そう自分に言い聞かせながら、下り坂になっている石畳の小路を航はゆっくりと踏みしめた。誰かが

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