【読書記録】100分で名著 ルソー エミール 自分のために生き、みんなのために生きる

100分で名著 ルソー エミール 自分のために生き、みんなのために生きる


著者 西研
出版 NHK出版

ルソーが書いた『エミール』の解説本です。
人間が自由で平等な民主的な世界で、自分のため、みんなのためを両立できる人間を育てるために必要な教育論、人間論を書いた本です。
ルソーは『社会契約論』とセットで、新しい視点を多くの人々に提供し、それがフランス革命へと繋がっていく。

ルソーは
『文明が発達した相互依存的な社会のなかでは、人は自分を、名誉、権力、富、名声のような社会的評価でもって測るようになり、そしてまわりの評価にひきずりまわされる。それでは自由といえない。そうではなくて、自分の必要や幸福を自ら判断して、自分の生き方についての価値基準をしっかりと自分の中にもっている人間こそが真の自由な人間だ』と述べています。

現代人はインターネットやスマホの影響で、より強く社会的評価を気にするようになりました。他人からの評価基準が常に優先される。そんな世の中で、真に自由な人間は育たないとルソーは述べています。

エミールは長編で、成長に沿って第一編〜第五編まであり、めちゃくちゃざっくり説明すると
15歳までは徹底的に自分のために生きる人間を育てて、15歳以降に他者へ対する思いやりや社会性を育むと述べられています。

もう少しだけ詳細を伝えますと

乳幼児期:
・感情、感覚、欲求を親に承認、応答されることで、それらを主体的に自覚できるようになる。(快・不快のみから、より区別して自覚できる)母の笑顔=嬉しい、オシッコ=気持ち悪い、お腹すいた=おっぱい、的な

児童期、少年前期:口がきけるようになる〜12歳くらいまで
・体験中心。大人は介入せず痛い思いをして学ぶ。感覚や運動を訓練する時期。(依存が担保された安心環境の中で伸び伸びと遊ぶ)

少年後期:12歳〜15歳
・『研究の時期』好奇心を重視し、生活、観察の中で好奇心からくる問い→解を知る。この連鎖をつくる→主体的に学ぶ人間を育てる
・『有用性(これを知ると将来役立つ)』を知り、自分にとって何が価値あるものなのかを選択する力
・『社会の相互依存(分業や交換)助け合いの関係』を知る。社会関係の初歩を学ぶ時期

思春期・青年期(第四編) 15歳〜20歳
・思いやりや共感力を育てる。自分のためだけでなく、みんなのために役立つ人間になる。
・自己愛から他人への愛へ。自分によくしてくれる人に気に入られたい→共感しようとする→愛。
・愛の源は「人の弱さ」
・あわれみ(共感はどこから?)→三つの格率(共感の条件)→あわれみ(共感)には、自分はそうではないという快が発生する→余裕がある、自分には力があると感じる→社会への善い行い→結果評価されて嬉しい→自己愛↑
・善い行いをして生きるための神の信仰→人は根本的に善良。因果応報もきっとあるよ。自分も幸福で他人の幸福に寄与。
・「宗教的な寛容になろう!」→禁書になる理由

青年期最後の時期(第五編) 20歳以降
・良い女性像について
・欲望に自分を支配されることなく良心によって自分を支配するべき
・徳とは、勇気と力。欲望に支配されずに良心に従うこと。

【最後に】
エミールに副題をつけるなら
『話合える人間の育て方』だと思う。
現代の、子をもつ親、保育、教育、療育者の皆様。思い返してみて下さい。

『話し合える人間を育てる』という視点で子育てをしていますか?
これは今こそ、考えるべき教育の在り方だなと感じました。

大変勉強になりました。ありがとうございます。


【この本から学べる子育てポイント】

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