映画『マネー・ショート』レビュー

100年に1度規模の金融市場の破綻によって莫大な利益を得た稀有な人々の群像劇。

トレーダーのマークがユダヤ教徒という設定が事実に基づいているのかは不明だが、この作品が単なるシンデレラストーリーではなく、正義について考察するための欠かせない要素になっている。
タルムードを勉強していた少年は、神の言葉に内在する矛盾に突き当たる。それは、物語の最後で、非現実的な利益を確定するときに自ら体験することになる。

また、債務不履行が急増しているニュースが流れ出しても債券は値上がりし格付けに変化がないことを抗議するため格付機関へと出向くが、その担当者に、CDSを買い漁って住宅市場にショートポジションを張っている側であることを見抜かれ、いくら持っているのかと逆に問い詰められる。あなたは偽善者だとひとこと言い放たれ押し黙るしかない。
マネーゲームの参加者である以上結局はポジション・トークだろうと。参加しているゲームのルールを自分に有利になるように変えたいだけだろうということ。

そして暴落によって利益を得ることは、散々罵ってきた金融市場の詐欺的システムによって利益を得てきた「敵」と同じだったことを受け入れることになるので、その敗北感は、マネーゲームによって得た莫大な利益では埋め合わせることができないという結末。

マネー・ショート華麗なる大逆転

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