落ちこぼれ東大生が院試に落ちた話(中編)

本記事は、2019年夏実施の院試に落ちた私がその後どう動いて、今どうなっているかという超個人的な自分語りの中編です。
記事が大きいので分割されています。前編をまだ読まれていない方は先にそちらをご覧ください。前編の状況を知らないと多分この記事わけがわからないです。

前回までのあらすじ

いっけなーい!遅刻遅刻! 私、落ちこぼれ東大生。学校が好きすぎる工学部生!だけど院試でやらかしちゃって不合格!みんな発表された自分の指導教官で盛り上がるなか、休学しようと思ったら教授と面談することになっちゃった!一体私、これからどうなっちゃうの〜!?

教授面談(合格発表直後)

自分でいうのもなんですが、教授の居室に乗り込んだときは結構いい笑顔してたと思います。

教授「結果どうだったの?」
私 「休学します。なのでその許可をくだs」
教授「まあ待て」
私 「なぜですか」
教授「これまでもこういうことあったんだけどね、学科幹事としてそういう重大な決断をする前にはあなたに全ての選択肢を知ってもらった上でよく吟味してほしいんだよね」

実際はこんな言い回しじゃなかったかもしれない。
同様に、以下記述する面談で行った会話は、細かい言葉や言い回しなどは私視点での脚色が入っています。会話の大筋はもちろん事実に基づいて書くつもりです。

何はともあれここで休学にプロフェッサー・ストップが入りました。
うん立場はわかる。立場はわかりますがもう大体の選択肢は吟味ずみなのよね。

教授「冬にも院試が行われることは知ってますか」
私 「知ってます」
教授「冬に受けられる研究室の中にうちの学科の研究室もいくつかあるんですよ」
私 「それも知ってます」
教授「そこを受けるというのはどうですか」
私 「嫌です

こちとら冬院試がハイリスク・ローリターンなのはとっくの昔に考察済みです。
目的なしの院進学はしないこと、行きたい研究室は1つでそう簡単に受からない、先輩のアドバイスもあると説明します。

教授「そこまでいうほど狭き門じゃないと思うけどねえ。一人の言葉を鵜呑みにしないほうがいいんじゃないですか」

何を根拠にそういう無責任なことが言えるのか私は今でも不思議です
考えられるものとしては、公表されていないだけで冬院試を受ける内部生には下駄を履かせてもらえるので本当に狭き門ではないということぐらいでしょうが、まず間違いなくそんなことはないし、仮にそれが事実であったとしても正式に公表されていないことにすがるのは、反故にされるリスクを考慮するとどう考えても愚行でしょう。
こちらは夏院試落ちるような人間です、私の実力では受かりませんと返答。

教授「そんなことはないでしょう。私の研究室にも夏落ちて冬の試験でうちに来て、書いた修論で賞をとった人もいるんですよ」

生存バイアスって言葉知ってますか?って言葉が喉まで出かかりましたがかろうじてのみ込みました。
とにかく冬院試を受けるつもりはこれっぽっちもないと主張。さあ次は何だ。

教授「とにかく卒論は今年書いたほうがいいんじゃないですか」
私 「嫌です。そしたら大学卒業しちゃうじゃないですか」
教授「残っている講義の単位を取らずに留年するという手段もありますよ」
私 「卒論以外の単位は残念ながら(強調)全て履修済みなのでそれは無理です」
教授「ああ…確かに残念だね」

教授もこんな文脈で残念って言葉使うと思ってなかったでしょうね。

教授「では今年卒論を書いて卒業して、来年(20年)の4月からどこかの研究室の研究生になるというのはどうですか。例えば卒論書いた研究室とかで。」

ここで「研究生」という新ワードが飛び出してきました。
研究生という身分の存在、確かに知ってはいました。知ってはいたんですがそのあまりのメリットのなさに候補に挙げることすらせず真っ先に切った選択肢なんですよね。

研究生とは、修士または博士の試験を受けて正式に学生になるまでの間、受け入れ予定の研究室の教授のもとで準備をする学生のことです。
外国人留学生が試験の前にいち早く来日するための「外国人研究生」や、修士・博士をすでに持っている人がなる「大学院研究生」などいろいろ種類がありますが、今回のケースの場合は以下の「工学部研究生」というものを指すのだと思います。

これがまあ身分としては使い物にならなさNo.1のもので、

・入学料と授業料がかかる
入学料が約9万円、授業料が年額約35万円かかります。
高えよおい。代わりに休学すればその間の費用0円だぞ(国立っていいよね)。

・講義の単位取得ができない
正規の学生じゃないので、講義に出たところで単位が認定されません。大学院進学後に認められるとかもおそらくないです。不毛すぎる。

・学割が効かない
これも正規の学生じゃないからです。少なくともJRでは学割乗車券や通学定期券の発売対象になりません。ちなみに休学すればこれらは問題なく使えます。

というトリプルコンボです。これは流石にないということで前編での考察には挙げませんでした。

私 「嫌です。メリットが何一つないじゃないですか」
教授「研究生という身分はきちんと認められているものなので履歴書にかけるんですよ。休学という形をとると履歴に傷が付くんだから、こちらのほうが遥かにいい選択肢だと思います」

おそらく研究生になる唯一のメリットはこれだと思います。
ですが、見る人が見れば院試落ちの回避策というのはバレますし、こちとら21卒の就活決めた時点で履歴に傷なんて織り込み済みなんですよ。

教授「一旦研究生になるということは学士を持っている状態なので、来年の夏院試に受かったらそこで秋入学ができます。その場合ロスが半年で済みますよ」
私 「何で私が院に進学する前提なんですか。そもそも卒論を今年書くということは就活できないじゃないですか」
教授「えっ私さん就活するの」

おい、そこからか。
まあ確かに就活の話は今日一度も口にしていないけれど、学部就職という選択肢が頭の片隅にも存在していないとは思わなかった。こればっかりはこの大学この学部の環境が悪いというのもあるけど。(学部就職を検討可能な時期には研究室に配属されていないか、配属されてすぐで自分の研究適正がわかっていないことが大半)

私 「仮に私が来年夏院試を受けるとしても、もう一回落ちることを考えたらセーフティーネットとして企業の内定は絶対確保します。なので来年(20年)3月開始の就活は確定です」
教授「別に研究生になっておいて就活するのだっていいでしょう。というか研究生になっておいたほうが履歴に傷がつかないんだから、わざわざ休学する必要はないんじゃないですか」

うん、この教授絶対就活の仕組みわかってない。
本採用開始前にインターンがあってそれが選考に有利にはたらくとか研究生なんてそれほど知名度高くないから大して使えねえとかそもそも既卒が不利になる可能性が高いからできれば避けなきゃいけないとかそういうの何にもわかってねえ!

これは私の推測なんですが、おそらく教授のいう就活って「学部or院での研究の成果を引っさげて、研究職としてこの学科でよくある企業に(ほぼ選考なしで)就職する」っていうアレなんだと思います。
「この学科でよくある」というところはともかく、研究室配属前で研究とはなんたるかがわかってないのに研究職として求職するつもりは私にはカケラもありませんでした。

教授「待ってて、ちょっと専攻長呼んでくるわ」

ここで突然の面接官追加
私が夏院試で受けた専攻の長(学科の教授でもあるので面識もある)の居室が同じフロアにありました。おそらくいろんな意見を参考にして欲しくて呼びにいってくれたのだと思います。
ありがたいんですけどおそらくバックグラウンドは似てるんだから学科幹事の教授と同じような考え方・意見じゃねーの?と思いました。口には出しませんが。

教授 「かくかくしかじかで休学するかどうかって話になってるんだけど、どう思う?」
専攻長「いや絶対休学しないほうがいいでしょ」

考える間もなく即答された。

ここから先はもう「完全に専攻長に学科幹事の教授と同じことを言われる+就活の事情を話して卒論に時間を割きたくないという話をしても就活の背景知識が共有できてないから話が噛み合わない+休学はとにかく履歴の傷だからダメゼッタイ」のトリプルコンボをループしているだけでした。
15時の合格発表後すぐにはじめて、学科事務室が閉まる17時までかれこれ2時間くらいこんなの続けてました。もうこれ就活の面接のほうが遥かにマシでしょ。

ちなみにこのループの間に教授が、「あなたは自分から連絡してきた珍しいタイプの人間だけど、これから何人か呼び出してこういう話をしないといけない」とか言っていた記憶があります。なのでもしかしたらこの場がセッティングされたのは「休学を私が言い出したから」ではなく、「院試に落ちた内部生は全員呼び出して進路相談」という枠だった可能性もあります。今となっては真偽はわかりませんしまあどうでもいいことですが。

面接始める前は「絶対休学!今日届出す!そんで期間中インターンして21卒就活する!」と固めていったのにも関わらず、2時間も教授二人に囲まれてあなたの考えは間違ってる考え直せだの休学は履歴の傷だの散々詰められてるとだんだん冷静な判断ができなくなってくるというか、終わったときには「卒論書けばESのガクチカ(学生時代に頑張ったこと)に卒論って答えられるしサークルの追いコンにも行けるしあれーでもそしたらインターンってどうなるんだというか授業期間中にいけるインターンってあるのそもそも研究生なるって本当に大丈夫??」くらいには判断力を狂わされていました。圧迫面接って恐ろしいね!

教授面談後(合格発表日17時・事務室閉まってる)

面談が終わったときに学科幹事の教授に今後の具体的な動きを言い渡されました。

・事務室が今日はもう閉まる時間なので休学届の提出は一旦先送り
・休学はせずに卒論配属に参加することを強く勧めるが、私がどうしても休学したいというのなら教授陣がそれを止める手段はない
・休学するのならば研究室に配属することはできないので、もしそうなる場合はもう一度学科幹事の教授のところに来て一言その旨を報告すること
・休学せずに研究室配属に参加するというのであれば、このまま何もせずに当日卒論配属決めの場に行けばOK

というわけで、当初の「合格発表日にそのまま休学届を出して帰宅」という予定を完全に崩されました。ナンテコッタイ
さらに、事務室に「面談終わったらまた戻ってきます」って伝えて出てきているんだけどなあ……間に合わなかったかあ……とガックリしながら学科の建物を出たら、そこで今まで対応してくれていた事務の方にバッタリ遭遇しました。ナイスタイミング。
私が事前に伝えておいたこともあり、届を取りに行ってくれていたらしく余計にごめんなさいってなりました。

事務さんに「教授に休学止められました…」と伝えたら「あー、だろうねえ」と。でも流石にここまで話が長引くのは想定外だったでしょうし本当すみません。
その場で立ち話になってしまいましたが、事務の方にも事の次第を伝えて、今後の動きを練りました。

・休学届は出そうと思えばもう私の意思で提出可能だよ
・届を出したいのであれば、卒論配属作業が行われるまでに事務室に来てくれればOK、いつでもいいように用意しておくし事務に来る前の事前連絡はいらないよ
・休学しないのであればそのまま卒論配属の場に行ってね

動きに関しては教授と話が一致していました。ここで話が食い違っていたらさらに面倒なことになるのは予想できるのでよかったです。
それはそうと休学についてはもう私が判断できるそうです。やったね。

やっぱり卒論配属までには休学の判断は必要でした。まあ各研究室ごとの定員とかずれるでしょうしそりゃそうだ。
この話をしているのが合格発表日の17時で、学部生の卒論配属作業が行われるのがその翌々日の予定でした。したがって、出すなら翌日事務室が閉まる17時までです。休学届提出のタイムリミットはここから24時間後となりました。

今後の論点

長くなったので今後の判断の要点をまとめておきます。

・休学する場合のメリット
休学するとなれば19年秋〜20年春が丸々空くことになります。その場合インターンに行ったり資格を取ったりと21卒戦線を戦うための準備をしっかりとすることができます。
また、その間は学部生という扱いになるので、学割だの東大キャリアサポート室などの学生が使える権利をフルで使うことができます。また、院進学を完全に切って学部で出る方向で腹をくくってしまえば、学科に来ている推薦を使ってある程度楽に就職を決めることも可能でしょう。
あと休学すればかかるお金は0円です。家計に優しいやったね!

・休学する場合のデメリット
休学するということは書類上「大学に5年いる」という扱いになってしまうので、もしかしたらどこかで就職に不利になる可能性があります。正直私はこれに関しては懐疑的でしたが流石に教授二人にダメと言われたら不安になりました……
あとは卒論を書かないということで一つ楽しみが減ります。これに関しては後述。

・休学しない場合のメリット
休学しないのであれば卒論を書くことになります。卒論執筆という理系として当たり前の経験を積めるので就活のガクチカに使えそうですね。「あなたは大学で何を専攻していたんですか?」系の質問にも困らずに済みます。これに関しては学科が悪くて、「うちの学科はこんなことやってます」と一言で説明できるような文言が存在しなく、研究内容が言えるならそれに越したことはないんですよね……
また、予定通り4年で卒業するということなので、21卒で活動している中に途中で20卒でもいいよ〜と言ってくれるようないいところが万万万が一あった場合は履歴に空白期間を作らずに済みます。

また、私のサークルの追いコン(4年生引退セレモニー)では、追い出される4年生が毎年自分が4年間やってたことの発表をスライド使ってみんなの目の前でやって、後輩たちがそれを聞いて素人質問飛ばし(て4年生を戦々恐々とさせ)たり自分の進路の参考にするという恒例儀式があったんですね。正直ずっと憧れだったんですよね発表側に回るの。それができるんだったら日程が21卒の合同説明会ラッシュの3月であったとしても這ってでも行く。それに予定通りの卒業ならサークルの同期と安田講堂で卒業式出たり袴着て学園祭の会場前の階段で写真撮ったりもできるじゃないか!
面談を通して判断が揺れ始めた根本の原因といっても過言ではないです。

・休学しない場合のデメリット
卒論を書くために研究室に所属するため、ある程度予定を拘束されます。これから研究室配属のため、秋は卒論のテーマ決めから始める必要があり、配属から2ヶ月で中間発表→そこから2ヶ月で提出→すぐに発表という怒涛のスケジュールとなり、それと就活を並行することとなります。間違いなくインターンには行けません。卒論関係のタスクの全てが終わる20年3月の採用広報解禁からのスタートになるでしょう。就活が3月からなんて言葉バカ正直に信じちゃいないのでこれは結構痛いです。
また、20年4月から研究生という扱いになります。決して安くないお金もかかりますし学割も使えない不安定な身分です。しかも名目上「修士に進学するまでの間、ラボに置いてもらって研究する」ための身分なので、就活するならば受け入れ先の教授にきちんと理解を求めることが必須でしょう。そんなことできるの?

次回予告

休学にまさかのプロフェッサーストップがかかり、面談で判断能力も狂わされた。休学届提出締切が24時間後に迫る中、私の選択やいかに。
次回、完結編。乞うご期待。

※続きを更新しました。


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