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春が行く

一つづつ花の夜明けの花みづき
加藤楸邨

その歌にもあったように、まるで空を押し上げるように花を咲かせるのは花水木(はなみづき)。明治の頃、かつての東京市長がワシントンに桜を贈った返礼として、アメリカから日本に贈られた、日米親善の歴史を物語る花として知られます。きっとそうした背景から、この花の花言葉も付けられたのでしょう。

時期は長くないですが、ずっと眺めていられる惹きこまれる花木です。初夏の香りをまとった陽光をもとめて咲く花は眩しく、また秋の紅葉もなかなかに美しく、この花が街路樹であるのを見るたびに、その町に住む人の日常をうらやましく思うほどです。

それにしても、この花に触れるということは、春が過ぎるということ。つい先日に「春が来た」と感じていたばかりなのに、桜の満開を絶頂に「春が行く」と気持ちが切り替わり、いまや身近ではツツジが満開になり、気温もすでに夏となり、ハナミズキにその布告を受けたのです。なんと季節の移流の早いことでしょう。

こうして人の気持ちも余所にして、花はさっさと交代していき、そのたびに、もうすこし呑気に過ごせないものかしら、春の行方をさまたげる何かいい方法はないものかしらと、ざわざわと忙しいのも、人ばかり。

と名残り惜しんでいるうちも、みやる向こうの川面は目映く、もうくっきりと夏がさざめいていました。よい週末になりますように。今日もいちりんあなたにどうぞ。

ハナミヅキ 花言葉「想いを受け取ってください」

君と好きな人が 100年続きますように

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