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冬来りなば春遠からじ

冬来(きた)りなば春遠からじ

どこかで聞き覚えのある、諺のようにも聞こえるこのフレーズ。

実はこれは、イギリスのロマン派詩人、パーシー・シェリーの詩「西風に寄せるオード(Ode to the West Wind)」の最末尾を和訳したもので、原詩には

If Winter comes, can Spring be far behind ?

とあります。「冬が来るなら、春が遥か遠いなんてあり得えようか?」と、原詩では終うのですが、和訳では「春遠からじ(春は遠くない)」といったきり。

疑問符はどこへ、と思い、調べてみて分かったのは、これは「春が遥か遠いなんてことがあり得えようか?」に対して「いや、そんなことはない」という反語的な表現なんですね。

つまり「冬が来るなら、春が遥か遠いなんてことはない。冬のあとにはかならず春がくるんだ」という期待をこめて「冬来りなば春遠からじ」と表現しているのです。

ここにきて、シェイクスピアの『マクベス』に「明けない夜はない」と訳された台詞が思い出されますが、それとシェリーの詩とは似て非なり。

あらためて、シェリーの詩が、日本人の琴線に触れる名詩として知られるようになったのも、こうして触れることが出来るのも、先人が選びぬいた美しい日本語の、名訳のおかげと思うと、本当にありがたくって身に染みます。

寒に入って半ば過ぎ、いまが一年でもっとも色の少なく、見上げても裸木ばかりで、こちらも寒さは身に沁むばかり。

いっそうに侘びしさ寂しさも一入ですが、次の日曜日は立春、と気づいて、ふっとこの一文を思い出したのでした。冬来りなば春遠からじ。今日もいちりんあなたにどうぞ。

ネコヤナギ 花言葉「思いのまま」

春はもうすぐ


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