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凩(こがらし)

夏の終わりはだらだらと未練がましいのに、秋はいきなり終う。あんなに人を待たせておいてほんと素気無い、もう少し人に気が遣えないものかと思います。

さてそうして今年も冬の使者、木枯らし一番が吹きました。「木枯らし」と書きますが「凩」とも。凩は日本の国字です。

似た字に「凧」「凪」がありますね。凧は「巾(布)をはらむ風」、凪は「風が止む」。つまり「凩」は「木に几(風)」「木を(枯らす)風」ということなんでしょう。

凩が吹くといよいよ秋の終わりを実感し、そして逝く秋のという歌のはじめを思い出します。

逝く秋の大和の国の薬師寺の塔の上のひと片の雲 佐佐木信綱

秋を惜しむ気持ち、別れの思いを味わう花は何だろう、と考えました。幸田文は「ききょうの紫」といっていた。ききょうの深い紫の、点々に咲くのに夕日がさしたのを、か弱いものへのいたわりと眺めた、と書いていました。

私はこの花に、文ほどの惜別を抱くことはないけれど、秋にみたほかの花の紫を思い出させたのは、この桔梗でした。

ただ逝く秋への寂寥感よりも、きらきらとした記憶が思い出されるのは、あの秋をいっしょに眺めた人のおかげでしょう。

さあ冬へ。今日もいちりんあなたにどうぞ。

キキョウ 花言葉「変わらぬ愛」

秋の暮のいちりん



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