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朧(おぼろ)

雨いつか上り雲間の朧月 稲畑汀子

一昨日は晩まで長々と雨降りでしたが、昨晩は、のこった雲の切れ間から、月が空をあかるく照らしているのを見つけ、こないだの満月が見れなかった残念を、挽回した気持ちになりました。

春にみる、遠い景色をぼんやりさせる現象を通常「霞(かすみ)」といいますが、夜のそれは「朧(おぼろ)」といい、浮かぶ月が「朧月(おぼろづき)」です。

同じ窓から眺めても、朝の霞んだ空と夜の朧げな空では、言葉のとおりに違いあり、月が昇っていてもいなくとも、薄絹に包まれたような雰囲気は、春夜ならでは柔らかさあり、いいものだなあと感じ入りるこの頃です。

あらためて触れますと、「霞(かすみ)」や「朧(おぼろ)」は、文学上の言葉であり、気象用語にはありません。気象の上では「霧(きり)」「靄(もや)」と表します。

また文学では、霧といえば「秋」であり、霞といえば「春」であり、朧といえば「春の夜」と使い分けます。このような日本語の豊かさに浸るのも、文学に触れる楽しみのひとつです。

さて現実は、夜もあければ年度末。しみじみとした感慨をもつ間もなく、時は兎のように跳んでいきます。二月は逃げ、三月は去るといいますが、ほんとそのとおり。自分の中で駆け抜ける時間が、年々早くなるのを感じるのは、私だけでしょうか。

この忙しさと愉しさが、背中合わせと思えることがまだ幸い。とはいえ、相応に「疲れ」は溜まっていくから悩ましい。

「忙しいと疲れたは、自慢にならん」は、吉田茂翁だったかな。心します。今日もいちりんあなたにどうぞ。

ハナモモ 花言葉「気立ての良さ」

ものみな薄絹につつまれて

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