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TIVANT


「ノサキさん、ノサキさん、例のオンナの素性がやっと判明しました」
「何? 本当か!」
 公安のノサキは思わず立ち上がり部下の差し出した書類を奪い取った。
「こ、これは……」
 ノサキはその書類に書かれた文面を目にすると険しい顔付きで虚空を見詰めた。
「ノサキさん、ノサキさん、どうかしましたか? 顔が超恐い、超恐い」
 助手のトラムがスマホの音声変換を使って可愛い声でそう問い掛けた。
「あのオンナはティバンだったんだ」
「なんですか? ティバンとは?」

 ティバンとはな、日本語で言うと『テッパン』、要するにお好み焼き屋さんだ。いや、単にそれだけじゃない、その業界では伝説にもなっている凄腕の鉄板師だ。それを『テッパン』または『TIVANT』と呼ぶ。

 ノサキの説明に皆は驚いた。
「そ、それじゃ、マリーとかメリーとか言う名で街角に立っていたのは?」
「実は超絶美味なる最高のお好み焼き、またはたこ焼きなどの粉もんを高値で食わせる闇組織で、あそこの郵便局前は噂を聞いて訪れる客との待ち合わせ場所だったんだ」
「そ、そんな……」
「そうだ、あのキャリーケースの中身はおそらく食材や鉄板とかだったに違いない」
 公安(公共職業安定所つまりはハローワーク)のノサキはそこまで言って、はたと気が付いた。


 それで "引っくり返す” のが得意だったんだ。



 つづくかも……


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