汗ひくとこ
久しぶりにゆかりのある土地に帰ってきた時。どんな時に何を思うか。なにが引き金となってどんな景色がフラッシュバックするか。
大学時代過ごした京都で、家から歩いて数分のところにあった、ランチが美味しいカフェに行ってみた。
行き道だけでテンションが上がる。このお店も変わらずやってんねやな、ここはもしかしてお店変わった?私の記憶違い?全ての景色が懐かしく、新しい。
そうやって辿り着いた、何度も通ったカフェ。
お店の変わらない外観にも、コロナを経て入口に掛けられた衛生対策のお願いの手書きの紙も、もちろんお店の人の顔も、京町家をぶち抜き改装した広々空間も、壁に所狭しと並べられた映画のポスターも、すべてが懐かしい。心の中で喜びの拍手が鳴り止まない。
なにより、このお店はお店の方の体調不良で3年ほど休業されていたので、やっと再開されたことへの喜びもひとしおだ。
色んなもの、そしてそれに結びついた大学生の時の記憶で胸がいっぱいになったころ、料理を待っているとだんだん歩いた時に吹き出した汗がひいてきた。
ひいた瞬間、「あ、帰ってきた。ここに私は確かにおったんや」と感じた。
通ってた頃も、着いた頃には汗をかいていた。そしてちょっと涼しめの店内で、一息ついて入れてくれた氷水を飲んでいたら自然と汗がひいていく。ひいてきたくらいで、落ち着いて周りを見渡せるようになる。
汗がひいたときに当時の記憶がいっぺんに蘇ってきた。今の夫と2人で何回も通ったとか、よく家に数日泊まり込む友達もよく連れてきたとか、遠くから来た父も、幼馴染もここに連れてきた。あの時は楽しくて、大好きなお店をみんなに紹介できるのが一番な喜びだった。
汗がひくとこまでが夏の、このお店の記憶だったんだな、というのが数年越しに得た気づき。
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