見出し画像

守り木 精霊の記憶 壱

見下ろせば冷たき土。
見上げれば冷たき空。
風もまだ冷たし。

蕾が脹らみ始めたな。

毎年可憐な花を咲かせてくれるこの枝は、先の大雪で悲しくも折れてしまいおった。

今年はもう花を付けぬであろう。

あちらの枝は折れたあれより太くしっかりしておったから、見よ。沢山の蕾を付けておる。此方の枝も。

早く暖かくなってくれぬものかのう。

こうも寒いとなかなか顔を出してはくれぬよ。

そういえば毎年この時期は人間の小娘が我を見に来ると言うに、今年はまだ来ぬのう。

何でも学校というところで他の人間どもに苛められ、行ってもすぐに帰ってくるという。

無駄な時を惰性で過ごしているという、なんとも愚かしいおなご。

鬱陶しいとは思っておっても、こうも姿を見ぬともしやと思うのう。

人間という生き物は何でも己を殺す生き物だと、遠い昔に教えてくれた者がおったからな。

まぁあのおなごならやりかねぬわ。

いつもいつも泣いてばかりで。

あぁ、思い出すと腹立たし。可愛い花達を見る目に涙を溜めて、いや、あれは今の言葉でマジ泣きとか言う。

一体我が何をしたと言うのか。

せめて花達を見る時は笑ってくれよと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?