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若者とエネルギーと政治

街やネット上で選挙関連の話が盛り上がっている。

若者が投票すべき理由のまとめ記事や投票特典を出す企業の広告でSNSも、池袋のサイネージも、選挙一色だった。

「選挙の日ってウチじゃなぜか投票行って外食するんだ」なんて歌ったアイドルに刺激を受けた世代が今やアラサー。
大学時代にはSEALDsという同年代の学生集団が政治主張をしていた世代である。

なんちゃって卒論で文学部を卒業させてもらったが、わたしの関心事項の一つには「日本を中心とした戦争と社会、および人の思想と文化形成」がある。
学生時代はおまつり運営やコミュニティカフェでのちょっとしたアルバイトの傍ら、日本の戦前のプロレタリア運動、戦時中の従軍画家とその後、銃後で生活をした画家の後世の評価が社会情勢によってどう変わるかなどを好き勝手調べて妄想していた。(学術的に未成熟のため「妄想」と記載)

そんな偏った前知識も持ちつつ、先日読んだ漫画が非常に刺さったので紹介したい。

レッド 1969~1972 / 山本直樹

レッド 1969~1972

学生運動ののち、集団リンチでの殺人、そしてかの有名な「あさま山荘事件」を引き起こした連合赤軍について数々の証言をもとに描いた作品である。
表紙の番号は彼らが亡くなる順番。作中でもずっと記載されており、混とんとした情勢の中を俯瞰的に整理してくれる読者の道しるべとなる。

NHKで漫画家の作業風景に密着する番組で著者を取材しており、この作品を知った。複数の証言から糸をつむぐようにして生まれた、自然でリアリティのある描写。著者の力量に思わずため息が出た。

彼らは過激だ。社会を変えるためには誰の死をもいとわないほど熱中する。
リーダー格のメンバーの生年月日を見ると、1944、1945年生まれ。彼らは焼け野原となった敗戦国日本をベースに育つ。社会全体が混とんとし、軍国主義のアイデンティティを失くした状態で彼らは国家と、自身のアイデンティティと理想を模索していくのである。

社会の不安定さは、時として若者の不安とエネルギーになる。
江戸時代のええじゃないかだって、近代国家のデモクラシーだって、大正~昭和初期のプロレタリアの世界だってシュルレアリスムだって。
連合赤軍の当事者たちは70歳前後だが、彼らはどの時代にだって存在しうる。団塊の世代へのイメージもあるが、起点は戦争なのだ。

そして、今の時代の我々は、どこを起点として主義主張を訴えているのだろうか。はたまた、何が起因となって訴えることを拒むのだろうか。

選挙に行って意思表示をしようなんて周囲に訴えるほど、道徳的で良心的な人間ではないが、若者と、そのエネルギーと政治への姿勢というのはどの時代を切りとって見ても飽きることがない。


令和の時代がこれからつくられていく。

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